VTP の設定に関する情報
VTP
VLAN Trunking Protocol((VTP) は、レイヤ 2 のメッセージ プロトコルであり、ネットワーク全体にわたって VLAN の追加、削除、名前の変更を管理することにより、VLAN 設定の整合性を維持します。VTP により、VLAN 名の重複、誤った VLAN タイプの指定、セキュリティ違反など、さまざまな問題を引き起こしかねない設定の誤りや矛盾が最小限に抑えられます。
VLAN を作成する前に、ネットワークで VTP を使用するかどうかを決定する必要があります。VTP を使用すると、1 台または複数のスイッチ上で中央集約的に設定変更を行い、その変更を自動的にネットワーク上の他のスイッチに伝達できます。VTP を使用しない場合、VLAN 情報を他のスイッチに送信することはできません。
VTP は、1 台のスイッチで行われた更新が VTP を介してドメイン内の他のスイッチに送信される環境で動作するように設計されています。VLAN データベースに対する複数の更新が同一ドメイン内のスイッチ上で同時に発生する環境の場合、VTP は適していません。VLAN データベースの不整合が生じます。
スイッチは 1005 の VLAN をサポートしますが、設定済み機能の個数によって、スイッチ ハードウェアの使用が左右されます。VTP が新しい VLAN をスイッチに通知し、スイッチが使用可能な最大限のハードウェア リソースをすでに使用している場合、スイッチはハードウェア リソース不足を伝えるメッセージを送信して、VLAN をシャットダウンします。 show vlan ユーザ EXEC コマンドの出力に、サスペンド ステートの VLAN が示されます。
VTP バージョン 1 およびバージョン 2 は、標準範囲の VLAN(VLAN ID 1 ~ 1005)だけをサポートします。VTP バージョン 3 は、VLAN 範囲全体(VLAN 1 ~ 4096)をサポートします。拡張範囲 VLAN(VLAN 1006 ~ 4096)は、VTP バージョン 3 でだけサポートされます。拡張 VLAN がドメインに設定されている場合は、VTP バージョン 3 から VTP バージョン 2 に変換できません。
VTP ドメイン
VTP ドメイン(別名 VLAN 管理ドメイン)は、1 つのスイッチ、または同じ VTP ドメイン名を共有して同一管理下にある相互接続された複数のスイッチで構成されます。スイッチは、1 つの VTP ドメインにだけ所属できます。そのドメインに対してグローバル VLAN の設定を変更します。
デフォルトの設定では、トランク リンク(複数 VLAN のトラフィックを伝送するリンク)を介してドメインについてのアドバタイズを受信しない限り、またはユーザがドメイン名を設定しない限り、スイッチは VTP 非管理ドメイン ステートです。管理ドメイン名を指定するか学習するまでは、VTP サーバ上で VLAN を作成または変更できません。また、VLAN 情報はネットワークを介して伝播されません。
スイッチがトランク リンクを介して VTP アドバタイズを受信すると、スイッチは管理ドメイン名および VTP コンフィギュレーション リビジョン番号を継承します。その後スイッチは、別のドメイン名または古いコンフィギュレーション リビジョン番号が指定されたアドバタイズについては、すべて無視します。
VTP サーバ上の VLAN 設定を変更すると、その変更は VTP ドメイン内のすべてのスイッチに伝播されます。VTP アドバタイズは、IEEE 802.1Q を含め、すべての IEEE トランク接続に送信されます。VTP は、複数の LAN タイプにわたり、固有の名前と内部インデックスの対応によって VLAN を動的にマッピングします。このマッピングにより、ネットワーク管理者がデバイスを管理するための作業負担が大幅に軽減されます。
VTP トランスペアレント モードでスイッチを設定した場合、VLAN の作成および変更は可能ですが、その変更はドメイン内の他のスイッチには送信されません。また、変更が作用するのは、個々のスイッチに限られます。ただし、スイッチがこのモードのときに設定を変更すると、変更内容がスイッチの実行コンフィギュレーションに保存されます。この変更はスイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルに保存することもできます。
ドメイン名およびパスワードの設定時の注意事項については、「VTP 設定時の注意事項」を参照してください。
VTP モード
表 18-1 VTP モード
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VTP サーバ |
VTP サーバ モードでは、VLAN の作成、変更、削除ができます。また、VTP ドメイン全体に対して他のコンフィギュレーション パラメータ(VTP バージョンなど)を指定できます。VTP サーバは、同一 VTP ドメイン内の他のスイッチに自身の VLAN 設定をアドバタイズし、トランク リンクを介して受信したアドバタイズに基づいて、自身の VLAN 設定を他のスイッチと同期させます。 VTP サーバがデフォルトのモードです。 (注) VTP サーバ モードでは、VLAN 設定は NVRAM に保存されます。スイッチがコンフィギュレーションを NVRAM に書き込んでいる間に障害を検出すると、VTP モードはサーバ モードからクライアント モードに自動的に移行します。この場合、スイッチは NVRAM が動作するまで VTP サーバ モードに戻ることができません。 |
VTP クライアント |
VTP クライアントは VTP サーバと同様に動作し、対応するトランクで VTP アップデートを送受信しますが、VTP クライアント上で VLAN の作成、変更、削除を行うことはできません。VLAN は、ドメインに含まれる、他のサーバ モードのスイッチで設定します。 VTP バージョン 1 および 2 の VTP クライアント モードでは、VLAN 設定は NVRAM に保存されません。VTP バージョン 3 では、VLAN 設定はクライアント モードで NVRAM に保存されます。 |
VTP トランスペアレント |
VTP トランスペアレント スイッチは、VTP に参加しません。VTP トランスペアレント スイッチは自身の VLAN 設定をアドバタイズせず、受信したアドバタイズに基づいて自身の VLAN 設定を同期させることもありません。ただし、VTP バージョン 2 またはバージョン 3 では、トランスペアレント スイッチは、トランク インターフェイスを介して他のスイッチから受信した VTP アドバタイズを転送します。VTP トランスペアレント モードでは、スイッチ上の VLAN を作成、変更、削除できます。 VTP バージョン 1 および 2 では、拡張範囲 VLAN を作成するときはスイッチを VTP トランスペアレント モードにする必要があります。VTP バージョン 3 でも、クライアント モードまたはサーバ モードでの拡張範囲 VLAN の作成をサポートしています。「拡張範囲 VLAN の作成」を参照してください。 スイッチが VTP トランスペアレント モードの場合、VTP および VLAN の設定は NVRAM に保存されますが、他のスイッチにはアドバタイズされません。このモードでは、VTP モードおよびドメイン名はスイッチの実行コンフィギュレーションに保存されます。この情報をスイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルに保存するには、 copy running-config startup-config 特権 EXEC コマンドを使用します。 |
VTP オフ |
VTP オフ モードでのスイッチの機能は、トランクを介して VTP アドバタイズを転送しないことを除くと VTP トランスペアレント スイッチとしての機能と同じです。 |
VTP モードのガイドライン
• VTP バージョン 1 およびバージョン 2 では、拡張範囲 VLAN がスイッチ上に設定されている場合、VTP モードをクライアントまたはサーバに変更できません。エラー メッセージが表示され、設定が許可されません。VTP バージョン 1 およびバージョン 2 は、拡張範囲 VLAN(VLAN 1006 ~ 4096)の設定情報を伝播しません。これらの VLAN を各装置上に手動で設定する必要があります。
(注) VTP バージョン 1 およびバージョン 2 の場合、拡張範囲 VLAN(VLAN ID 1006 ~ 4096)を作成するには、事前に vtp mode transparent グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して、VTP モードをトランスペアレントに設定する必要があります。VTP トランスペアレント モードでスイッチが開始するように、この設定をスタートアップ コンフィギュレーションに保存してください。このようにしないと、スイッチのリセット時に拡張範囲 VLAN 設定が失われ、VTP サーバ モード(デフォルト)で起動します。
• VTP バージョン 3 は拡張範囲 VLAN をサポートします。拡張 VLAN が設定されている場合は、VTP バージョン 3 から VTP バージョン 2 に変換できません。
• スイッチを VTP クライアント モードに設定した場合、VLAN データベース ファイル(vlan.dat)は作成されません。そのままスイッチの電源をオフにすると、VTP 設定はデフォルトにリセットされます。スイッチが再起動された後も VTP 設定を VTP クライアント モードに維持するには、VTP モードを設定する前に、VTP ドメイン名を設定する必要があります。
• スイッチが VTP サーバ モードの場合には、VLAN 設定を変更し、その変更をネットワーク全体に伝播できます。
• スイッチが VTP クライアント モードの場合には、そのスイッチの VLAN 設定を変更できません。クライアント スイッチは、VTP ドメイン内の VTP サーバから VTP アップデート情報を受信し、それに基づいて設定を変更します。
• スイッチを VTP トランスペアレント モードに設定すると、スイッチの VTP はディセーブルになります。VTP トランスペアレント スイッチは VTP アップデートを送信せず、他のスイッチから受信した VTP アップデートにも反応しません。ただし、VTP バージョン 2 を実行する VTP トランスペアレント モードのスイッチは、対応するトランク リンクで、受信した VTP アドバタイズを転送します。
• VTP オフ モードは、VTP アドバタイズが転送されない以外は、VTP トランスペアレント モードと同じです。
注意 すべてのスイッチが VTP クライアント モードで動作している場合は、VTP ドメイン名を設定しないでください。ドメイン名を設定すると、そのドメインの VLAN 設定を変更できなくなります。したがって、少なくとも 1 台のスイッチを VTP サーバとして設定してください。
VTP アドバタイズ
VTP ドメイン内の各スイッチは、専用のマルチキャスト アドレスに対して、それぞれのトランク ポートからグローバル コンフィギュレーション アドバタイズを定期的に送信します。このようなアドバタイズを受信したネイバー スイッチは、必要に応じて各自の VTP および VLAN 設定をアップデートします。
VTP アドバタイズにより、次のグローバル ドメイン情報が配信されます。
• VTP ドメイン名
• VTP 設定のリビジョン番号
• アップデート ID およびアップデート タイムスタンプ
• 各 VLAN の最大伝送単位(MTU)サイズを含む MD5 ダイジェスト VLAN コンフィギュレーション
• フレーム形式
VTP アドバタイズではさらに、設定されている各 VLAN について、次の VLAN 情報が配信されます。
• VLAN ID(ISL および IEEE 802.1Q)
• VLAN 名
• VLAN タイプ
• VLAN ステート
• VLAN タイプ固有のその他の VLAN 設定情報
VTP バージョン 3 では、VTP アドバタイズにはプライマリ サーバ ID、インスタンス番号、および開始インデックスも含まれます。
VTP バージョン 2
ネットワークで VTP を使用する場合、VTP のどのバージョンを使用するかを決定する必要があります。デフォルトでは、バージョン 1 の VTP が動作します。
VTP バージョン 1 でサポートされず、バージョン 2 でサポートされる機能は、次のとおりです。
• トークンリング サポート:VTP バージョン 2 は、トークンリング ブリッジ リレー機能(TrBRF)およびトークンリング コンセントレータ リレー機能(TrCRF)VLAN をサポートします。トークンリング VLAN の詳細については、「標準範囲 VLAN」を参照してください。
• 認識不能な Type-Length-Value(TLV)のサポート:VTP サーバまたは VTP クライアントは、TLV が解析不能であっても、設定の変更を他のトランクに伝播します。認識されなかった TLV は、スイッチが VTP サーバ モードで動作している場合、NVRAM に保存されます。
• バージョン依存型トランスペアレント モード:VTP バージョン 1 の場合、VTP トランスペアレント スイッチが VTP メッセージ中のドメイン名およびバージョンを調べ、バージョンおよびドメイン名が一致する場合に限りメッセージを転送します。VTP バージョン 2 がサポートするドメインは 1 つだけですが、VTP バージョン 2 トランスペアレント スイッチは、ドメイン名が一致した場合のみメッセージを転送します。
• 整合性検査:VTP バージョン 2 の場合、CLI(コマンドライン インターフェイス)、または SNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)を介して新しい情報が入力された場合に限り、VLAN 整合性検査(VLAN 名、値など)を行います。VTP メッセージから新しい情報を取得した場合、または NVRAM から情報を読み込んだ場合には、整合性検査を行いません。受信した VTP メッセージの MD5 ダイジェストが有効であれば、情報を受け入れます。
VTP バージョン 3
VTP バージョン 1 または 2 でサポートされず、バージョン 3 でサポートされる機能は、次のとおりです。
• 拡張認証:認証を hidden または secret として設定できます。設定を hidden にしている場合、パスワード文字列からの秘密キーは VLAN のデータベース ファイルに保存されますが、設定においてプレーン テキストで表示されることはありません。代わりに、パスワードに関連付けられているキーが 16 進表記で実行コンフィギュレーションに保存されます。ドメインにテイクオーバー コマンドを入力するときは、パスワードを再入力する必要があります。キーワード secret を入力する場合、パスワードに秘密キーを直接設定できます。
• 拡張範囲 VLAN(VLAN 1006 ~ 4096)のデータベース伝播をサポートします。VTP バージョン 1 および 2 で伝播する範囲は、VLAN 1 ~ 1005 だけです。拡張 VLAN を設定している場合は、VTP バージョン 3 からバージョン 1 または 2 に変換できません。
(注) VTP プルーニングは引き続き VLAN 1 ~ 1005 にだけ適用され、VLAN 1002 ~ 1005 は予約されたままで変更できません。
• ドメインの任意のデータベースをサポートします。VTP 情報の伝播に加えて、バージョン 3 は Multiple Spanning Tree Protocol(MSTP)データベース情報を伝播できます。VTP プロトコルの個別インスタンスが VTP を使用する各アプリケーションで実行されます。
• VTP プライマリ サーバと VTP セカンダリ サーバ。VTP プライマリ サーバはデータベース情報をアップデートし、システム内のすべてのデバイスによって行われるアップデートを送信します。VTP セカンダリ サーバで実行できるのは、プライマリ サーバから NVRAM に受け取ったアップデート済み VTP コンフィギュレーションのバックアップだけです。
デフォルトでは、すべてのデバイスはセカンダリ サーバとして起動します。 vtp primary 特権 EXEC コマンドを入力してプライマリ サーバを指定することができます。プライマリ サーバのステータスは、管理者がドメインでテイクオーバー メッセージを発行する場合、データベースのアップデート用に必要となるだけです。プライマリ サーバなしで実用 VTP ドメインを持つことができます。プライマリ サーバのステータスは、スイッチにパスワードが設定されている場合でも、装置がリロードしたり、ドメインのパラメータが変更したりすると失われます。
• トランク(ポート)単位で VTP をオンまたはオフにするオプション。[ no ] vtp インタフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用すると、ポート単位で VTP をイネーブルまたはディセーブルにできます。トランク ポート上で VTP をディセーブルにすると、そのポートのすべての VTP インスタンスがディセーブルになります。VTP の設定を、MST データベースには off にする一方で、同じポートの VLAN データベースには on にすることはできません。
グローバルに VTP モードをオフに設定すると、システムのすべてのトランク ポートにこの設定が適用されます。ただし、VTP インスタンス ベースでこのモードのオンまたはオフを指定することはできます。たとえば、VLAN データベースには、スイッチを VTP サーバとして設定する一方で、MST データベースには VTP を off に設定することができます。
VTP バージョンの注意事項
実装する VTP バージョンを決定する場合は、次の注意事項に従ってください。
• VTP ドメイン内のすべてのスイッチは同じドメイン名を使用する必要がありますが、すべてが同じ VTP バージョンを実行する必要はありません。
• VTP バージョン 2 対応のスイッチ上で VTP バージョン 2 がディセーブルに設定されている場合、VTP バージョン 2 対応スイッチは、VTP バージョン 1 を実行しているスイッチと同じ VTP ドメインで動作できます(デフォルトでは VTP バージョン 2 はディセーブルになっています)。
• VTP バージョン 1 を実行しているものの、VTP バージョン 2 に対応可能なスイッチが VTP バージョン 3 アドバタイズを受信すると、このスイッチは VTP バージョン 2 に自動的に移行します。
• VTP バージョン 3 を実行しているスイッチが VTP バージョン 1 を実行しているスイッチに接続すると、VTP バージョン 1 のスイッチは VTP バージョン 2 に移行し、VTP バージョン 3 のスイッチは、スケールダウンしたバージョンの VTP パケットを送信するため、VTP バージョン 2 スイッチは自身のデータベースをアップデートできます。
• VTP バージョン 3 を実行するスイッチは、拡張 VLAN を持つ場合はバージョン 1 または 2 に移行できません。
• 同一 VTP ドメイン内のすべてのスイッチがバージョン 2 に対応可能な場合を除いて、スイッチ上で VTP バージョン 2 をイネーブルにしないでください。あるスイッチでバージョン 2 をイネーブルにすると、ドメイン内のすべてのバージョン 2 対応スイッチでバージョン 2 がイネーブルになります。バージョン 1 専用のスイッチがドメインに含まれている場合、そのスイッチはバージョン 2 対応スイッチとの間で VTP 情報を交換できません。
• VTP バージョン 1 および 2 のスイッチは VTP バージョン 3 のアドバタイズを転送しないため、これらをネットワーク エッジに配置することを推奨します。
• 使用環境に TrBRF および TrCRF トークンリング ネットワークが含まれている場合に、トークンリング VLAN スイッチング機能を正しく動作させるには、VTP バージョン 2 またはバージョン 3 をイネーブルにする必要があります。トークンリングおよびトークンリング Net を実行する場合は、VTP バージョン 2 をディセーブルにします。
• VTP バージョン 1 およびバージョン 2 は、拡張範囲 VLAN(VLAN 1006 ~ 4096)の設定情報を伝播しません。これらの VLAN は各装置で手動によって設定する必要があります。VTP バージョン 3 は拡張範囲 VLAN をサポートします。拡張 VLAN を設定している場合、VTP バージョン 3 から VTP バージョン 2 に変換できません。
• VTP バージョン 3 装置のトランク ポートが VTP バージョン 2 装置からのメッセージを受信した場合、この装置は、VLAN データベースをスケールダウンし、その特定のトランク上で VTP バージョン 2 フォーマットを使用して送信します。VTP バージョン 3 装置は、最初にそのトランク ポートで VTP バージョン 2 パケットを受信しない限り、VTP バージョン 2 フォーマットのパケットを送信しません。
• VTP バージョン 3 装置が、あるトランク ポートで VTP バージョン 2 装置を検出した場合、両方のネイバーが同一トランク上で共存できるように、VTP バージョン 2 パケットだけでなく VTP バージョン 3 パケットの送信も継続します。
• VTP バージョン 3 装置は、VTP バージョン 2 またはバージョン 1 の装置からの設定情報は受け入れません。
• 2 つの VTP バージョン 3 リージョンは、VTP バージョン 1 リージョンまたはバージョン 2 リージョンでは、トランスペアレント モードでだけ通信できます。
• VTP バージョン 1 にだけ対応する装置は、VTP バージョン 3 装置との相互運用はできません。
• デフォルトで VTP バージョン 2 およびバージョン 3 はディセーブルになっています。
• あるスイッチ上で VTP バージョン 2 をイネーブルにすると、VTP ドメイン内の VTP バージョン 2 に対応可能なすべてのスイッチでバージョン 2 がイネーブルになります。VTP バージョン 3 をイネーブルにするには、各スイッチ上で手動によって設定する必要があります。
• VTP バージョン 1 および 2 では、VTP サーバ モードまたはトランスペアレント モードのスイッチでだけバージョンを設定できます。VTP バージョン 3 を実行するスイッチがクライアント モードの場合、既存の拡張 VLAN や既存のプライベート VLAN がなく、パスワードが非表示に設定されていないときであれば、バージョン 2 に変更できます。
注意 VTP バージョン 3 では、プライマリ サーバとセカンダリ サーバの両方がドメイン内の 1 つのインスタンスに存在できます。
VTP プルーニング
VTP プルーニングを使用すると、トラフィックが宛先デバイスに到達するために使用しなければならないトランク リンクへのフラッディング トラフィックが制限されるので、使用可能なネットワーク帯域幅が増えます。VTP プルーニングを使用しない場合、スイッチは受信側のスイッチで廃棄される可能性があっても、VTP ドメイン内のすべてのトランク リンクに、ブロードキャスト、マルチキャスト、および不明のユニキャスト トラフィックをフラッディングします。VTP プルーニングはデフォルトでディセーブルです。
VTP プルーニングは、プルーニング適格リストに指定された VLAN トランク ポートへの不要なフラッディング トラフィックを阻止します。プルーニング適格リストに指定された VLAN だけが、プルーニングの対象になります。デフォルトでは、スイッチのトランク ポート上で VLAN 2 ~ 1001 がプルーニング適格です。プルーニング不適格として設定した VLAN については、引き続きフラッディングが行われます。VTP プルーニングはすべてのバージョンの VTP でサポートされます。
図 18-1 に、VTP プルーニングを使用しない場合のスイッチド ネットワークを示します。スイッチ A のポート 1 およびスイッチ D のポート 2 は、Red という VLAN に割り当てられています。スイッチ A に接続されたホストからブロードキャストが送信された場合、スイッチ A は、このブロードキャストをフラッディングします。Red VLAN にポートを持たないスイッチ C、E、F も含めて、ネットワーク内のすべてのスイッチがこのブロードキャストを受信します。
図 18-1 VTP プルーニングを使用しない場合のフラッディング トラフィック
図 18-2 に、VTP プルーニングをイネーブルに設定したスイッチド ネットワークを示します。スイッチ A からのブロードキャスト トラフィックは、スイッチ C、E、F には転送されません。図に示されているリンク ポート(スイッチ B のポート 5、およびスイッチ D のポート 4)で、Red VLAN のトラフィックがプルーニングされるからです。
図 18-2 VTP プルーニングによるフラッディング トラフィックの最適化
VTP バージョン 1 および 2 では、VTP サーバで VTP プルーニングをイネーブルにすると、管理ドメイン全体でプルーニングがイネーブルになります。VLAN をプルーニング適格または不適格として設定する場合、影響を受けるのは、そのトランク上の VLAN のプルーニングだけです(VTP ドメイン内のすべてのスイッチに影響するわけではありません)。VTP バージョン 3 では、ドメイン内の各スイッチ上で手動によってプルーニングをイネーブルにする必要があります。
「VTP プルーニングのイネーブル化」を参照してください。VTP プルーニングは、イネーブルにしてから数秒後に有効になります。VTP プルーニング不適格の VLAN からのトラフィックは、プルーニングの対象になりません。VLAN 1 および VLAN 1002 ~ 1005 は常にプルーニング不適格です。これらの VLAN からのトラフィックはプルーニングできません。拡張範囲 VLAN(1005 を超える VLAN ID)もプルーニング不適格です。
VTP プルーニングは VTP トランスペアレント モードでは機能しないように設計されています。ネットワーク内に VTP トランスペアレント モードのスイッチが 1 台または複数存在する場合は、次のいずれかを実行する必要があります。
• ネットワーク全体の VTP プルーニングをオフにします。
• VTP トランスペアレント スイッチのアップストリーム側にあるスイッチのトランク上で、すべての VLAN をプルーニング不適格にすることによって、VTP プルーニングをオフにします。
インターフェイスに VTP プルーニングを設定するには、 switchport trunk pruning vlan インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。VTP プルーニングは、インターフェイスがトランキングを実行している場合に作用します。VLAN プルーニングの適格性は、VTP ドメインで VTP プルーニングがイネーブルであるかどうか、特定の VLAN が存在するかどうか、およびインターフェイスが現在トランキングを実行しているかどうかにかかわらず、設定できます。
VTP のデフォルト設定
表 18-2 VTP のデフォルト設定
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VTP ドメイン名 |
ヌル |
VTP モード(VTP バージョン 1 およびバージョン 2) |
サーバ |
VTP モード(VTP バージョン 3) |
このモードは、VTP バージョン 3 に変換する前のバージョン 1 または 2 のモードと同じです。 |
VTP バージョン |
バージョン 1 |
MST データベース モード |
トランスペアレント |
VTP バージョン 3 のサーバ タイプ |
セカンダリ |
VTP パスワード |
なし。 |
VTP プルーニング |
ディセーブル |
VTP 設定時の注意事項
VTP パスワード、バージョン、VTP ファイル名、最新の VTP 情報を提供するインターフェイス、ドメイン名、およびモードを設定する場合、さらにプルーニングをディセーブルまたはイネーブルに設定する場合には、 vtp グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。使用できるキーワードの詳細については、このリリースに対応するコマンド リファレンスに記載されているコマンドの説明を参照してください。VTP 情報は VTP VLAN データベースに保存されます。VTP モードがトランスペアレントである場合、VTP ドメイン名およびモードはスイッチの実行コンフィギュレーション ファイルにも保存されます。この情報をスイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルに保存するには、 copy running-config startup-config 特権 EXEC コマンドを入力します。スイッチをリセットした場合、VTP モードをトランスペアレントとして保存するには、このコマンドを使用する必要があります。
スイッチのスタートアップ コンフィギュレーション ファイルに VTP 情報を保存して、スイッチを再起動すると、スイッチの設定は次のように選択されます。
• スタートアップ コンフィギュレーションおよび VLAN データベース内の VTP モードがトランスペアレントであり、VLAN データベースとスタートアップ コンフィギュレーション ファイルの VTP ドメイン名が一致する場合は、VLAN データベースが無視され(クリアされ)ます。スタートアップ コンフィギュレーション ファイル内の VTP および VLAN 設定が使用されます。VLAN データベース内の VLAN データベース リビジョン番号は変更されません。
• スタートアップ コンフィギュレーション内の VTP モードまたはドメイン名が VLAN データベースと一致しない場合、最初の 1005 個の VLAN のドメイン名、VTP モード、および VTP 設定には VLAN データベース情報が使用されます。
ドメイン名
VTP を初めて設定するときは、必ずドメイン名を割り当てる必要があります。また、VTP ドメイン内のすべてのスイッチを、同じドメイン名で設定しなければなりません。VTP トランスペアレント モードのスイッチは、他のスイッチと VTP メッセージを交換しません。これらのスイッチについては VTP ドメイン名を設定する必要はありません。
(注) NVRAM および DRAM の記憶域が十分にある場合は、VTP ドメイン内のすべてのスイッチを VTP サーバ モードにする必要があります。
注意 すべてのスイッチが VTP クライアント モードで動作している場合は、VTP ドメインを設定しないでください。ドメインを設定すると、そのドメインの VLAN 設定を変更できなくなります。VTP ドメイン内の少なくとも 1 台のスイッチを VTP サーバ モードに設定してください。
パスワード
VTP ドメインのパスワードは設定できますが、必須ではありません。ドメイン パスワードを設定する場合は、すべてのドメイン スイッチで同じパスワードを共有し、管理ドメイン内のスイッチごとにパスワードを設定する必要があります。パスワードのないスイッチ、またはパスワードが不正なスイッチは、VTP アドバタイズを拒否します。
ドメインに VTP パスワードを設定する場合、VTP 設定なしで起動したスイッチは、正しいパスワードを使用して設定しない限り、VTP アドバタイズを受信しません。設定後、スイッチは同じパスワードおよびドメイン名を使用した VTP アドバタイズを受信します。
VTP 機能を持つ既存のネットワークに新しいスイッチを追加した場合、その新しいスイッチに適切なパスワードを設定して初めて、スイッチはドメイン名を学習します。
注意 VTP ドメイン パスワードを設定したにもかかわらず、ドメイン内の各スイッチに管理ドメイン パスワードを割り当てなかった場合には、管理ドメインが正常に動作しません。
VTP ドメインへの VTP クライアント スイッチの追加
VTP クライアントを VTP ドメインに追加する前に、必ず VTP コンフィギュレーション リビジョン番号が VTP ドメイン内の他のスイッチのコンフィギュレーション リビジョン番号より 小さい ことを確認してください。VTP ドメイン内のスイッチは常に、VTP コンフィギュレーション リビジョン番号が最大のスイッチの VLAN コンフィギュレーションを使用します。VTP バージョン 1 および 2 では、VTP ドメイン内のリビジョン番号よりも大きなリビジョン番号を持つスイッチを追加すると、VTP サーバおよび VTP ドメインからすべての VLAN 情報が消去される場合があります。VTP バージョン 3 では、VLAN 情報が消去されることはありません。