IGMP スヌーピングおよび MVR に関する情報
この章では、ローカル インターネット グループ管理プロトコル(IGMP)スヌーピングのアプリケーションであるマルチキャスト VLAN レジストレーション(MVR)など、スイッチに IGMP スヌーピングを設定する方法について説明します。また、IGMP フィルタリングを使用したマルチキャスト グループ メンバーシップの制御と、IGMP スロットリング アクションの設定手順についても説明します。
(注) IP Version 6(IPv6)トラフィックでは、Multicast Listener Discovery(MLD)スヌーピングが IPv4 トラフィックに対する IGMP スヌーピングと同じ機能を実行します。MLD スヌーピングの詳細については、「IPv6 MLD スヌーピングの設定」を参照してください。
(注) IGMP スヌーピング、MVR などの機能を使用して IP マルチキャスト グループ アドレスを管理することもできますし、スタティック IP アドレスを使用することもできます。
IGMP スヌーピング
レイヤ 2 スイッチは IGMP スヌーピングを使用して、レイヤ 2 インターフェイスを動的に設定し、マルチキャスト トラフィックが IP マルチキャスト デバイスと対応付けられたインターフェイスにだけ転送されるようにすることによって、マルチキャスト トラフィックのフラッディングを制限できます。名称が示すとおり、IGMP スヌーピングの場合は、LAN スイッチでホストとルータ間の IGMP 伝送をスヌーピングし、マルチキャスト グループとメンバ ポートを追跡する必要があります。特定のマルチキャスト グループについて、ホストから IGMP レポートを受信したスイッチは、ホストのポート番号を転送テーブル エントリに追加します。ホストから IGMP Leave Group メッセージを受信した場合は、テーブル エントリからホスト ポートを削除します。マルチキャスト クライアントから IGMP メンバーシップ レポートを受信しなかった場合にも、スイッチはエントリを定期的に削除します。
(注) IP マルチキャストおよび IGMP の詳細については、RFC 1112 および RFC 2236 を参照してください。
マルチキャスト ルータは、すべての VLAN に一般クエリーを定期的に送信します。このマルチキャスト トラフィックに関心のあるホストはすべて Join 要求を送信し、転送テーブルのエントリに追加されます。スイッチは、IGMP Join 要求の送信元となる各グループの IGMP スヌーピング IP マルチキャスト転送テーブルで、VLAN ごとに 1 つずつエントリを作成します。
スイッチは、MAC アドレスに基づくグループではなく、IP マルチキャスト グループに基づくブリッジングをサポートしています。マルチキャスト MAC アドレスに基づくグループの場合、設定されている IP アドレスを設定済みの MAC アドレス(エイリアス)または予約済みのマルチキャスト MAC アドレス(224.0.0.xxx の範囲内)に変換すると、コマンドがエラーになります。スイッチでは IP マルチキャスト グループを使用するので、アドレス エイリアスの問題は発生しません。
IGMP スヌーピングによって、IP マルチキャスト グループは動的に学習されます。ただし、 ip igmp snooping vlan vlan-id static ip_address interface interface-id グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用すると、マルチキャスト グループを静的に設定できます。グループ メンバーシップをマルチキャスト グループ アドレスに静的に指定すると、その設定値は IGMP スヌーピングによる自動操作より優先されます。マルチキャスト グループ メンバーシップのリストは、ユーザが定義した設定値および IGMP スヌーピングによって学習された設定値の両方で構成できます。
マルチキャスト トラフィックはルーティングする必要がないのでマルチキャスト インターフェイスを使用せずに、サブネットの IGMP スヌーピングをサポートするよう IGMP スヌーピング クエリーを設定できます。IGMP スヌーピング クエリアの詳細については、「IGMP スヌーピング クエリアの設定」を参照してください。
ポート スパニングツリー、ポート グループ、または VLAN ID が変更された場合、VLAN 上のこのポートから IGMP スヌーピングで学習されたマルチキャスト グループは削除されます。
IGMP 即時脱退をイネーブルに設定すると、スイッチはポート上で IGMP バージョン 2 の Leave メッセージを検出した場合、ただちにそのポートを削除します。即時脱退機能を使用するのは、VLAN の各ポート上にレシーバが 1 つだけ存在する場合に限定してください。
IGMP のバージョン
スイッチは、IGMP バージョン 1、IGMP バージョン 2、および IGMP バージョン 3 をサポートしています。これら 3 つのバージョンは、スイッチ上でそれぞれ相互運用できます。たとえば、IGMPv2 スイッチ上で IGMP スヌーピングがイネーブルの場合、このスイッチが IGMPv3 レポートをホストから受信すると、この IGMPv3 レポートをマルチキャスト ルータへ転送できます。
(注) スイッチは、宛先マルチキャスト MAC アドレスのみに基づいて IGMPv3 スヌーピングをサポートしています。送信元 MAC アドレスやプロキシ レポートに基づいてスヌーピングをサポートすることはありません。
IGMPv3 スイッチは、Basic IGMPv3 Snooping Support(BISS)をサポートしています。BISS は、IGMPv1 および IGMPv2 スイッチでのスヌーピング機能と、IGMPv3 メンバーシップ レポート メッセージをサポートしています。ネットワークに IGMPv3 ホストがある場合、BISS によりマルチキャスト トラフィックのフラッディングは抑制されます。トラフィックは、IGMPv2 または IGMPv1 ホストの IGMP スヌーピング機能の場合とほぼ同じポート セットに抑制されます。
(注) IGMP フィルタリングまたは MVR が実行されているスイッチは、IGMPv3 Join および Leave メッセージをサポートしていません。
IGMPv3 スイッチは、Source Specific Multicast(SSM)機能を実行しているデバイスとメッセージの送受信を行うことができます。
マルチキャスト グループへの加入
スイッチに接続したホストが IP マルチキャスト グループに加入し、なおかつそのホストが IGMP バージョン 2 クライアントの場合、ホストは加入する IP マルチキャスト グループを指定した非送信請求 IGMP Join メッセージを送信します。別の方法として、ルータから一般クエリーを受信したスイッチは、そのクエリーを VLAN 内のすべてのポートに転送します。IGMP バージョン 1 またはバージョン 2 のホストがマルチキャスト グループに加入する場合、ホストはスイッチに Join メッセージを送信することによって応答します。スイッチの CPU は、そのグループのマルチキャスト転送テーブル エントリがまだ存在していないのであれば、エントリを作成します。CPU はさらに、Join メッセージを受信したインターフェイスを転送テーブル エントリに追加します。そのインターフェイスと対応付けられたホストが、そのマルチキャスト グループ用のマルチキャスト トラフィックを受信します。図 28-1を参照してください。
図 28-1 最初の IGMP Join メッセージ
ルータ A がスイッチに一般クエリーを送り、スイッチはそのクエリーをポート 2 ~ 5、つまり同一 VLAN のすべてのメンバに転送します。ホスト 1 はマルチキャスト グループ 224.1.2.3 に加入するために、グループに IGMP メンバーシップ レポート(IGMP Join メッセージ)をマルチキャストします。スイッチの CPU は IGMP レポートの情報を使用して、転送テーブルのエントリを設定します( 表 28-1 を参照)。転送テーブルにはホスト 1 およびルータに接続しているポート番号が含まれます。
表 28-1 IGMP スヌーピング転送テーブル
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224.1.2.3 |
IGMP |
1、2 |
スイッチのハードウェアは、マルチキャスト グループの他のパケットと IGMP 情報パケットを区別できます。テーブルの情報は、224.1.2.3 マルチキャスト IP アドレス宛ての、IGMP パケットではないフレームを、ルータおよびグループに加入したホストに対して送信するように、スイッチング エンジンに指示します。
別のホスト(たとえば、ホスト 4)が、同じグループ用に非送信請求 IGMP Join メッセージを送信する場合(図 28-2 を参照)、CPU がそのメッセージを受け取り、ホスト 4 のポート番号を転送テーブルに追加します( 表 28-2 を参照)。転送テーブルによって、CPU だけに IGMP メッセージが転送されるので、スイッチ上の他のポートにメッセージがフラッディングされることはありません。認識されているマルチキャスト トラフィックは、CPU 宛てではなくグループ宛てに転送されます。
図 28-2 2 番めのホストのマルチキャスト グループへの加入
表 28-2 更新された IGMP スヌーピング転送テーブル
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224.1.2.3 |
IGMP |
1, 2, 5 |
マルチキャスト グループからの脱退
ルータはマルチキャスト一般クエリーを定期的に送信し、スイッチはそれらのクエリーを VLAN のすべてのポートを通じて転送します。関心のあるホストがクエリーに応答します。VLAN 内の少なくとも 1 つのホストがマルチキャスト トラフィックを受信しなければならない場合、ルータは VLAN に引き続き、マルチキャスト トラフィックを転送します。スイッチは、その IGMP スヌーピングによって維持された IP マルチキャスト グループの転送テーブルで指定されたホストに対してだけ、マルチキャスト グループ トラフィックを転送します。
ホストがマルチキャスト グループから脱退する場合、何も通知せずに脱退することも、Leave メッセージを送信することもできます。ホストから Leave メッセージを受信したスイッチは、グループ固有のクエリーを送信して、そのインターフェイスに接続された他のデバイスが所定のマルチキャスト グループのトラフィックに関与しているかどうかを学習します。スイッチはさらに、転送テーブルでその MAC グループの情報を更新し、そのグループのマルチキャスト トラフィックの受信に関心のあるホストだけが、転送テーブルに指定されるようにします。ルータが VLAN からレポートを受信しなかった場合、その VLAN 用のグループは IGMP キャッシュから削除されます。
即時脱退
即時脱退機能をサポートするのは、IGMP バージョン 2 が稼働しているホストだけです。
スイッチは IGMP スヌーピングの即時脱退を使用して、先にスイッチからインターフェイスにグループ固有のクエリーを送信しなくても、Leave メッセージを送信するインターフェイスを転送テーブルから削除できるようにします。VLAN インターフェイスは、最初の Leave メッセージで指定されたマルチキャスト グループのマルチキャスト ツリーからプルーニングされます。即時脱退によって、複数のマルチキャスト グループが同時に使用されている場合でも、スイッチド ネットワークのすべてのホストに最適な帯域幅管理が保証されます。
(注) 即時脱退機能を使用するのは、各ポートに接続されているホストが 1 つだけの VLAN に限定してください。1 つのポートに複数のホストが接続されている VLAN で即時脱退機能をイネーブルにすると、一部のホストが誤って切断される可能性があります。
IGMP 即時脱退をイネーブルに設定すると、スイッチはポート上で IGMP バージョン 2 の Leave メッセージを検出した場合、ただちにそのポートを削除します。即時脱退機能を使用するのは、VLAN の各ポート上にレシーバが 1 つだけ存在する場合に限定してください。
IGMP 脱退タイマーの設定
まだ指定のマルチキャスト グループに関心があるかどうかを確認するために、グループ固有のクエリーを送信した後のスイッチの待機時間を設定できます。IGMP 脱退応答時間は、100 ~ 5000 ミリ秒の間で設定できます。デフォルトの脱退時間は 1000 ミリ秒です。タイマーはグローバルにまたは VLAN 単位で設定できますが、 VLAN に脱退時間を設定すると、グローバルに設定した脱退時間は上書きされます。
ネットワークで実際の脱退にかかる待ち時間は、通常、設定した脱退時間どおりになります。ただし、脱退時間は、リアルタイムの CPU の負荷の状態、およびネットワークの遅延状態、インターフェイスから送信されたトラフィック量によって、設定された時間を前後する ことがあります 。
(注) IGMP の脱退時間の設定は、IGMP バージョン 2 が稼働しているホストでのみサポートされます。
IGMP レポート抑制
(注) IGMP レポート抑制は、マルチキャスト クエリーに IGMPv1 レポートと IGMPv2 レポートがある場合にだけサポートされます。この機能は、クエリーに IGMPv3 レポートが含まれている場合はサポートされません。
スイッチは、IGMP レポート抑制を使用して、1 つのマルチキャスト ルータ クエリーごとに IGMP レポートを 1 つだけマルチキャスト デバイスに転送します。IGMP ルータ抑制がイネーブル(デフォルト)である場合、スイッチは最初の IGMP レポートをグループのすべてのポートからすべてのマルチキャスト ルータに送信します。スイッチは、グループの残りの IGMP レポートをマルチキャスト ルータに送信しません。この機能により、マルチキャスト デバイスにレポートが重複して送信されることを防ぎます。
マルチキャスト ルータ クエリーに IGMPv1 および IGMPv2 レポートに対する要求だけが含まれている場合、スイッチは最初の IGMPv1 レポートまたは IGMPv2 レポートだけを、グループのすべてのホストからすべてのマルチキャスト ルータに送信します。
マルチキャスト ルータ クエリーに IGMPv3 レポートの要求も含まれる場合は、スイッチはグループのすべての IGMPv1、IGMPv2、および IGMPv3 レポートをマルチキャスト デバイスに転送します。
IGMP レポート抑制をディセーブルにすると、すべての IGMP レポートはマルチキャスト ルータに転送されます。設定手順については、「IGMP レポート抑制のディセーブル化」を参照してください。
IGMP スヌーピングのデフォルト設定
表 28-3 に、IGMP スヌーピングのデフォルト設定を示します。
表 28-3 IGMP スヌーピングのデフォルト設定
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IGMP スヌーピング |
グローバルおよび VLAN 単位でイネーブル |
マルチキャスト ルータ |
未設定 |
マルチキャスト ルータの学習(スヌーピング)方式 |
PIM-DVMRP |
IGMP スヌーピング即時脱退 |
ディセーブル |
スタティック グループ |
未設定 |
TCN フラッド クエリー カウント |
2 |
TCN クエリー送信要求 |
ディセーブル |
IGMP スヌーピング クエリア |
ディセーブル |
IGMP レポート抑制 |
イネーブル |
スヌーピング方式
マルチキャスト対応のルータ ポートは、レイヤ 2 マルチキャスト エントリごとに転送テーブルに追加されます。スイッチは、次のいずれかの方法でポートを学習します。
• IGMP クエリー、Protocol Independent Multicast(PIM)パケット、および Distance Vector Multicast Routing Protocol(DVMRP)パケットのスヌーピング
• 他のルータからの Cisco Group Management Protocol(CGMP)パケットの待ち受け
• ip igmp snooping mrouter グローバル コンフィギュレーション コマンドによるマルチキャスト ルータ ポートへの静的な接続
IGMP クエリーおよび PIM パケットと DVMRP パケットのスヌーピング、または CGMP self-join パケットまたは proxy-join パケットのいずれかの待ち受けを行うように、スイッチを設定できます。デフォルトでは、スイッチはすべての VLAN 上の PIM パケットと DVMRP パケットをスヌーピングします。CGMP パケットだけでマルチキャスト ルータ ポートを学習するには、 ip igmp snooping vlan vlan-id mrouter learn cgmp グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。このコマンドを入力すると、ルータは CGMP self-join パケットおよび CGMP proxy-join パケットだけを待ち受け、その他の CGMP パケットは待ち受けません。PIM パケットと DVMRP パケットだけでマルチキャスト ルータ ポートを学習するには、 ip igmp snooping vlan vlan-id mrouter learn pim-dvmrp グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。
(注) 学習方法として CGMP を使用する場合で、なおかつ VLAN に CGMP プロキシ対応のマルチキャスト ルータがない場合は、ip cgmp router-only コマンドを入力し、ルータに動的にアクセスする必要があります。
TCN イベント後のマルチキャスト フラッディング時間
ip igmp snooping tcn flood query count グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用して、トポロジ変更通知(TCN)イベント後にフラッディングするマルチキャスト トラフィックの時間を制御できます。このコマンドは、TCN イベント後にフラッディングするマルチキャスト データのトラフィックに対し、一般クエリー数を設定します。クライアントが場所を変更することで同ポートの受信者がブロックされた後、現在転送中の場合、またはポートが Leave メッセージを送信せずにダウンした場合などが、TCN イベントに該当します。
ip igmp snooping tcn flood query count コマンドを使用して TCN フラッド クエリー カウントを 1 に設定した場合、1 つの一般的クエリーの受信後にフラッディングが停止します。カウントを 7 に設定した場合、一般クエリーを 7 つ受信するまでフラッディングが続きます。グループは、TCN イベント中に受信した一般的クエリーに基づいて学習されます。
TCN のフラッディング モード
トポロジの変更が発生した場合、スパニングツリーのルートは特別な IGMP Leave メッセージ(グローバル Leave メッセージ)をグループ マルチキャスト アドレス 0.0.0.0. に送信します。ただし、 ip igmp snooping tcn query solicit グローバル コンフィギュレーション コマンドをイネーブルにしている場合、スイッチはスパニングツリーのルートであるかどうかにかかわらず、グローバル Leave メッセージを送信します。ルータはこの特別な Leave メッセージを受信した場合、即座に一般クエリーを送信して、TCN 中のフラッディング モードからできるだけ早く回復するようにします。スイッチがスパニングツリーのルートであれば、このコンフィギュレーション コマンドに関係なく、Leave メッセージが常に送信されます。デフォルトでは、クエリー送信要求はディセーブルに設定されています。
TCN イベント中のマルチキャスト フラッディング
スイッチは TCN を受信すると、一般クエリーを 2 つ受信するまで、すべてのポートに対してマルチキャスト トラフィックをフラッディングします。異なるマルチキャスト グループのホストに接続しているポートが複数ある場合、リンク範囲を超えてスイッチによるフラッディングが行われ、パケット損失が発生する可能性があります。その場合、 ip igmp snooping tcn flood インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、この状態を制御できます。
IGMP スヌーピング クエリアの注意事項
• VLAN をグローバル コンフィギュレーション モードに設定してください。
• IP アドレスおよび VLAN インターフェイスを設定してください。IGMP スヌーピング クエリアは、イネーブルの場合この IP アドレスをクエリーの送信元アドレスとして使用します。
• VLAN インターフェイス上で IP アドレスが設定されていない場合、IGMP スヌーピング クエリアは IGMP クエリア用に設定されたグローバル IP アドレスを使用しようとします。グローバル IP アドレスが指定されていない場合、IGMP クエリアは VLAN スイッチ仮想インターフェイス(SVI)IP アドレス(存在する場合)を使用しようとします。SVI IP アドレスが存在しない場合、スイッチはスイッチ上で設定された利用可能な最初の IP アドレスを使用します。利用可能な最初の IP アドレスは、 show ip interface 特権 EXEC コマンドの出力に表示されます。IGMP スヌーピング クエリアはスイッチ上で利用可能な IP アドレスを検出できない場合、IGMP 一般クエリーを生成しません。
• IGMP スヌーピング クエリアは IGMP バージョン 1 および 2 をサポートします。
• 管理上イネーブルである場合、IGMP スヌーピング クエリアはネットワークにマルチキャスト ルータの存在を検出すると、非クエリア ステートになります。
• 管理上イネーブルである場合、IGMP スヌーピング クエリアは操作上、次の状況でディセーブル ステートになります。
– IGMP スヌーピングが VLAN でディセーブルの場合
– PIM が、VLAN に対応する SVI でイネーブルの場合
IGMP レポート抑制
IGMP レポート抑制はデフォルトでイネーブルです。IGMP レポート抑制がイネーブルの場合、スイッチは、マルチキャスト ルータ クエリーごとに IGMP レポートを 1 つだけ転送します。IGMP レポート抑制がディセーブルの場合、すべての IGMP レポートがマルチキャスト ルータに転送されます。
マルチキャスト VLAN レジストレーション
(注) この機能を使用するには、スイッチが LAN Base イメージを実行している必要があります。
MVR は、イーサネット リング ベースのサービス プロバイダー ネットワークにおいて、マルチキャスト トラフィックを大規模展開する用途(サービス プロバイダー ネットワークによる複数のテレビ チャネルのブロードキャストなど)を想定して開発されました。MVR によってポート上の加入者は、ネットワークワイドなマルチキャスト VLAN 上のマルチキャスト ストリームに加入し、脱退できます。加入者は別個の VLAN 上にありながら、ネットワークで単一マルチキャスト VLAN を共有できます。MVR によって、マルチキャスト VLAN でマルチキャスト ストリームを連続送信する能力が得られますが、ストリームと加入者の VLAN は、帯域幅およびセキュリティ上の理由で分離されます。
MVR では、加入者ポートが IGMP Join および Leave メッセージを送信することによって、マルチキャスト ストリームへの加入および脱退(Join および Leave)を行うことが前提です。これらのメッセージは、イーサネットで接続され、IGMP バージョン 2 に準拠しているホストから発信できます。MVR は IGMP スヌーピングの基本メカニズムで動作しますが、この 2 つの機能はそれぞれ単独で動作します。それぞれ他方の機能の動作に影響を与えずに、イネーブルまたはディセーブルにできます。ただし、IGMP スヌーピングと MVR が両方ともイネーブルの場合、MVR は MVR 環境で設定されたマルチキャスト グループが送信した Join および Leave メッセージだけに反応します。他のマルチキャスト グループから送信された Join および Leave メッセージはすべて、IGMP スヌーピングが管理します。
スイッチの CPU は、MVR IP マルチキャストストリームとそれに対応するスイッチ転送テーブル内の IP マルチキャスト グループを識別し、IGMP メッセージを代行受信し、転送テーブルを変更して、マルチキャスト ストリームの受信側としての加入者を追加または削除します。受信側が送信元と異なる VLAN 上に存在している場合でも同じです。この転送動作により、異なる VLAN の間でトラフィックを選択して伝送できます。
スイッチの MVR 動作は、互換モードまたはダイナミック モードに設定できます。
• 互換モードの場合、MVR ホストが受信したマルチキャスト データはすべての MVR データ ポートに転送されます。MVR データ ポートの MVR ホスト メンバーシップは無関係です。マルチキャスト データは、IGMP レポートまたは静的な MVR 設定のどちらかによって、MVR ホストが加入しているレシーバ ポートだけに転送されます。MVR ホストから受信した IGMP レポートが、スイッチに設定された MVR データ ポートから転送されることはありません。
• ダイナミック モードの場合、スイッチ上の MVR ホストが受信したマルチキャスト データは、IGMP レポートまたは静的な MVR 設定のどちらかによって、MVR ホストが加入している MVR データおよびクライアント ポートから転送されます。それ以外のポートからは転送されません。MVR ホストから受信した IGMP レポートも、スイッチのすべての MVR データ ポートから転送されます。したがって、互換モードでスイッチを稼働させた場合と異なり、MVR データ ポート リンクで不要な帯域幅を使用しなくてすみます。
MVR に関与するのはレイヤ 2 ポートだけです。ポートを MVR 受信ポートとして設定する必要があります。各スイッチでサポートされる MVR マルチキャスト VLAN は、1 つだけです。
マルチキャスト TV アプリケーションでの MVR
マルチキャスト TV アプリケーションでは、PC またはセットトップ ボックスを装備したテレビでマルチキャスト ストリームを受信できます。1 つの加入者ポートに複数のセットトップ ボックスまたは PC を接続できます。加入者ポートは、MVR 受信ポートとして設定されたスイッチ ポートです。図 28-3 に構成例を示します。Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP)によって、セットトップ ボックスまたは PC に IP アドレスが割り当てられます。加入者がチャネルを選択すると、適切なマルチキャストに加入するために、セットトップ ボックスまたは PC からスイッチ A に IGMP レポートが送信されます。IGMP レポートが、設定されている IP マルチキャスト グループ アドレスの 1 つと一致すると、スイッチの CPU がハードウェア アドレス テーブルを変更して、指定のマルチキャスト ストリームをマルチキャスト VLAN から受信したときの転送先として、レシーバ ポートと VLAN を追加します。マルチキャスト VLAN との間でマルチキャスト データを送受信するアップリンク ポートを、MVR 送信元ポートと呼びます。
図 28-3 MVR の例
加入者がチャネルを切り替えた場合、またはテレビのスイッチを切った場合には、セットトップ ボックスからマルチキャスト ストリームに対する IGMP Leave メッセージが送信されます。スイッチの CPU は、レシーバ ポートの VLAN 経由で MAC ベースの一般クエリーを送信します。VLAN に、このグループに加入している別のセットトップ ボックスがある場合、そのセットトップ ボックスはクエリーに指定された最大応答時間内に応答しなければなりません。応答を受信しなかった場合、CPU はこのグループの転送先としての受信ポートを除外します。
即時脱退機能を使用しない場合、レシーバ ポートの加入者から IGMP Leave メッセージを受信したスイッチは、そのポートに IGMP クエリーを送信し、IGMP グループ メンバーシップ レポートを待ちます。設定された時間内にレポートを受信しなかった場合は、受信ポートがマルチキャスト グループ メンバーシップから削除されます。即時脱退機能がイネーブルの場合、IGMP Leave を受信したレシーバ ポートから IGMP クエリーが送信されません。Leave メッセージの受信後ただちに、受信ポートがマルチキャスト グループ メンバーシップから削除されるので、脱退遅延時間が短縮されます。即時脱退機能は、1 つの受信デバイスが接続された受信ポートでのみイネーブルにしてください。
MVR を使用すると、各 VLAN の加入者に対してテレビ チャネルのマルチキャスト トラフィックを重複して送信する必要がなくなります。すべてのチャネル用のマルチキャスト トラフィックは、マルチキャスト VLAN 上でのみ、VLAN トランクに 1 回だけ送信されます。IGMP Leave および Join メッセージは、加入者ポートが割り当てられている VLAN で送信されます。これらのメッセージは、レイヤ 3 デバイス上のマルチキャスト VLAN のマルチキャスト トラフィック ストリームに対して動的に登録されます。スイッチ B アクセス レイヤ スイッチ(スイッチ A)は、2 つの VLAN 間でのトラフィック伝送を選択的に許可し、マルチキャスト VLAN から別の VLAN 上の加入者ポートにトラフィックが転送されるように転送動作を変更します。
IGMP レポートは、マルチキャスト データと同じ IP マルチキャスト グループ アドレスに送信されます。スイッチ A の CPU は、レシーバ ポートから送られたすべての IGMP Join および Leave メッセージを取り込み、MVR モードに基づいて、送信元(アップリンク)ポートのマルチキャスト VLAN に転送しなければなりません。
デフォルトの MVR 設定
表 28-4 デフォルトの MVR 設定
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MVR |
グローバルおよびインターフェイス単位でディセーブル |
マルチキャスト アドレス |
未設定 |
クエリーの応答時間 |
0.5 秒 |
マルチキャスト VLAN |
VLAN 1 |
モード |
互換性 |
インターフェイスのデフォルト(ポート単位) |
受信ポートでも送信元ポートでもない |
即時脱退 |
すべてのポートでディセーブル |
MVR 設定時の注意事項および制限事項
• 受信ポートはアクセス ポートでなければなりません。トランク ポートにはできません。スイッチのレシーバ ポートは異なる VLAN に属していてもかまいませんが、マルチキャスト VLAN に属することはできません。
• スイッチ上で設定できるマルチキャスト エントリ(MVR グループ アドレス)の最大数(受信できるテレビ チャネルの最大数)は 256 です。
• 送信元 VLAN で受信され、レシーバ ポートから脱退する MVR マルチキャスト データは、スイッチで存続可能時間(TTL)が 1 だけ少なくなります。
• スイッチ上の MVR は、MAC マルチキャスト アドレスではなく IP マルチキャスト アドレスを使用するので、スイッチ上でエイリアスの IP マルチキャスト アドレスを使用できます。ただし、スイッチが Catalyst 3550 または Catalyst 3500 XL スイッチと連携動作している場合は、それらの間でエイリアスとして使用される IP アドレスや予約済みの IP マルチキャスト アドレス(224.0.0.xxx 範囲内)を設定する必要はありません。
• プライベート VLAN ポートに MVR を設定しないでください。
• スイッチ上でマルチキャスト ルーティングがイネーブルの場合、MVR はサポートされません。MVR がイネーブルの場合に、マルチキャスト ルーティングおよびマルチキャスト ルーティング プロトコルをイネーブルにすると、MVR がディセーブルになり、警告メッセージが表示されます。マルチキャスト ルーティングおよびマルチキャスト ルーティング プロトコルがイネーブルの場合に、MVR をイネーブルにしようとすると、MVR をイネーブルにする操作が取り消され、エラー メッセージが表示されます。
• MVR はスイッチで IGMP スヌーピングと共存できます。
• MVR 受信ポートで受信した MVR データは、MVR 送信元ポートに転送されません。
• MVR は IGMPv3 メッセージをサポートしていません。
IGMP フィルタリングおよび IGMP スロットリング
都市部や Multiple-Dwelling Unit(MDU)などの環境では、スイッチ ポート上のユーザが属する一連のマルチキャスト グループを制御する必要があります。この機能を使用することにより、IP/TV などのマルチキャスト サービスの配信を、特定タイプの契約またはサービス計画に基づいて制御できます。また、マルチキャスト グループの数を、スイッチ ポート上でユーザが所属できる数に制限することもできます。
IGMP フィルタリング機能を使用すると、IP マルチキャスト プロファイルを設定し、それらを各スイッチ ポートに関連付けて、ポート単位でマルチキャスト加入をフィルタリングできます。IGMP プロファイルにはマルチキャスト グループを 1 つまたは複数格納して、グループへのアクセスを許可するか拒否するかを指定できます。マルチキャスト グループへのアクセスを拒否する IGMP プロファイルがスイッチ ポートに適用されると、IP マルチキャスト トラフィックのストリームを要求する IGMP Join レポートが廃棄され、ポートはそのグループからの IP マルチキャスト トラフィックを受信できなくなります。マルチキャスト グループへのアクセスがフィルタリング アクションで許可されている場合は、ポートからの IGMP レポートが転送されて、通常の処理が行われます。レイヤ 2 インターフェイスが加入できる IGMP グループの最大数も設定できます。
IGMP フィルタリングで制御されるのは、グループ固有のクエリーおよびメンバーシップ レポート(Join および Leave レポートを含む)だけです。一般 IGMP クエリーは制御されません。IGMP フィルタリングは、IP マルチキャスト トラフィックの転送を指示する機能とは無関係です。フィルタリング機能は、マルチキャスト トラフィックの転送に CGMP が使用されているか、または MVR が使用されているかに関係なく、同じように動作します。
IGMP フィルタリングが適用されるのは、IP マルチキャスト グループ アドレスを動的に学習する場合だけです。静的な設定には適用されません。
IGMP スロットリング機能を使用すると、レイヤ 2 インターフェイスが加入できる IGMP グループの最大数を設定できます。IGMP グループの最大数が設定され、IGMP スヌーピング転送テーブルに最大数のエントリが登録されていて、インターフェイスで IGMP Join レポートを受信する場合、インターフェイスを設定することにより、IGMP レポートを廃棄するか、あるいは受信した IGMP レポートでランダムに選択されたマルチキャスト エントリを上書きします。
(注) IGMP フィルタリングが実行されているスイッチは、IGMPv3 Join および Leave メッセージをサポートしていません。
IGMP フィルタリングおよび IGMP スロットリングのデフォルト設定
表 28-5 に、IGMP フィルタリングのデフォルト設定を示します。
表 28-5 IGMP フィルタリングのデフォルト設定
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IGMP フィルタ |
適用されない |
IGMP グループの最大数 |
最大数は設定されない |
IGMP プロファイル |
未設定 |
IGMP プロファイル アクション |
範囲で示されたアドレスを拒否 |
転送テーブルに登録されているグループが最大数に達していると、デフォルトの IGMP スロットリング アクションは IGMP レポートを拒否します。
IGMP プロファイル
IGMP プロファイルを設定するには、 ip igmp profile グローバル コンフィギュレーション コマンドおよびプロファイル番号を使用して、IGMP プロファイルを作成し、IGMP プロファイル コンフィギュレーション モードを開始します。ポートから送信される IGMP Join 要求をフィルタリングするために使用される IGMP プロファイルのパラメータは、このモードから指定できます。IGMP プロファイル コンフィギュレーション モードでは、次のコマンドを使用することでプロファイルを作成できます。
• deny :一致するアドレスを拒否します。デフォルトで設定されています。
• exit :IGMP プロファイル コンフィギュレーション モードを終了します。
• no :コマンドを否定するか、または設定をデフォルトに戻します。
• permit :一致するアドレスを許可します。
• range :プロファイルに対する IP アドレスの範囲を指定します。単一の IP アドレス、または開始アドレスと終了アドレスで指定された IP アドレス範囲を入力できます。
デフォルトでは、スイッチには IGMP プロファイルが設定されていません。プロファイルが設定されており、 permit および deny キーワードがいずれも指定されていない場合、デフォルトでは、IP アドレス範囲へのアクセスが拒否されます。
IGMP プロファイルの定義に従ってアクセスを制御するには、 ip igmp filter インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して、プロファイルを該当するインターフェイスに適用します。IGMP プロファイルを適用できるのは、レイヤ 2 アクセス ポートだけです。ルーテッド ポートや SVI には適用できません。EtherChannel ポート グループに所属するポートに、プロファイルを適用することはできません。1 つのプロファイルを複数のインターフェイスに適用できますが、1 つのインターフェイスに適用できるプロファイルは 1 つだけです。
IGMP スロットリング アクション
レイヤ 2 インターフェイスが加入できる IGMP グループの最大数を設定した後、 ip igmp max-groups action replace インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用して受信した IGMP レポートの新しいグループで、既存のグループを上書きします。IGMP Join レポートを廃棄するデフォルトの設定に戻すには、このコマンドの no 形式を使用します。
IGMP スロットリング アクションを設定する場合には、次の注意事項に従ってください。
• この制限事項は、レイヤ 2 ポートにだけ適用されます。このコマンドは、論理 EtherChannel インターフェイスでは使用できますが、EtherChannel ポート グループに属するポートでは使用できません。
• グループの最大数に関する制限がデフォルト(制限なし)に設定されている場合、 ip igmp max-groups action { deny | replace } コマンドを入力しても効果はありません。
• インターフェイスによりマルチキャスト エントリが転送テーブルに追加されてから、スロットリング アクションを設定し、グループの最大数の制限を設定すると、転送テーブルのエントリは、スロットリング アクションに応じて期限切れになるか削除されます。
– スロットリング アクションを deny に設定すると、すでに転送テーブルに登録されていたエントリは、削除されることはありませんが期限切れになります。エントリが期限切れになり、最大数のエントリが転送テーブルに登録されていると、スイッチは、インターフェイスで受信した次の IGMP レポートを廃棄します。
– スロットリング アクションを replace に設定すると、すでに転送テーブルに登録されていたエントリは削除されます。転送テーブルのエントリが最大数まで達したら、スイッチはランダムに選択したエントリを受信した IGMP レポートで上書きします。
スイッチが転送テーブルのエントリを削除しないようにするには、インターフェイスにより転送テーブルにエントリが追加される前に、IGMP スロットリング アクションを設定します。