オンプレミス導入環境での Cisco Collaboration 12.0 向けプリファード アーキ テクチャ
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの資料
Cisco サービス統合型ルータとアグリゲーション サービス ルータ
Cisco Unified Survivable Remote Site Telephony
Cisco Meeting Server スペースを使用した常設会議
Cisco Prime Collaboration Deployment
Cisco Prime Collaboration Provisioning
Cisco Unified Contact Center Express
Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard
シスコ プリファード アーキテクチャは、特定の市場セグメント向けに、組織での一般的な使用例に基づいた、テスト済みの推奨導入モデルを提供します。このモデルは、シスコ コラボレーション ポートフォリオの全製品のうち、ターゲットの市場セグメントと定義した使用例に最も適した製品で構成されます。これらはすぐに使える規範的な導入モデルで、組織とそのビジネス ニーズの変化に対応できる拡張性を備えています。規範的なアプローチであるため、複数のシステム レベルのコンポーネントの統合が容易であり、組織のビジネス ニーズに最適な導入モデルを選択できます。
本書では、シスコ コラボレーション システム リリース(CSR)12.0 のオンプレミス導入を対象としたプリファード アーキテクチャの概要を説明します。本書は、プリセールス協議および意思決定時に次の用途で参考となるように意図されています。
本資料は、次のような方法で設計および販売のプロセスをシンプルにします。
このガイドで説明するシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャは、次の 2 つの市場セグメントを主な対象としています。
このガイドは、読者の皆様がシスコの音声、ビデオ、コラボレーション製品に関する一般的な知識があり、それらの製品の導入方法の基本を理解していることを前提としています。このアーキテクチャの構成、導入、実装の詳細については、次の「シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの資料」に一覧されているシスコ検証済みデザイン(CVD)ガイドを参照してください。
図 1 に、このプリファード アーキテクチャ(PA)に関して用意されているさまざまなドキュメントが示されています。
オンプレミス導入環境でのシスコ コラボレーション 12.0 向けプリファード アーキテクチャ (本書)
Preferred Architecture for Cisco Collaboration 12.0 Enterprise On-Premises Deployments
Unified Communications Using Cisco Business Edition 6000
Video Conferencing and Recording Using Cisco Business Edition 6000
Collaboration Edge Using Cisco Business Edition 6000
上記のドキュメントの最新バージョンは https://www.cisco.com/go/pa から入手できます。
このプリファード アーキテクチャに関する上記のドキュメントの他に、シスコ ソリューション リファレンス ネットワーク デザイン(SRND)ガイドには、プリファード アーキテクチャの対象外となる要件をお持ちのお客様がセールス チームと協力してコラボレーション導入ソリューションを設計する際に役立つガイドラインと推奨事項が記載されています。SRND ガイドは https://www.cisco.com/go/ucsrnd から入手できます。
近年さまざまなコラボレーション ツールが市場に導入され、企業の境界を超えたコラボレーションが可能になっています。従業員がオフィス外でもコラボレーション ツールを利用できるようにすることは、もはや特別なことではなく、現在の市場に則したビジネスの必須条件になっています。今日のユーザは、多様なポータブル デバイスやモバイル デバイスからコラボレーション ツールにすぐにアクセスできる環境を求めています。この同じツールの利用をお客様やパートナーにまで拡大すれば、関係の強化にも役立ちます。
組織がコラボレーション アプリケーションから得ているビジネスの付加価値は、従業員の生産性向上とお客様との関係強化です。つい最近まで、コラボレーション アプリケーションは相互運用性が乏しく、導入と使用も容易ではありませんでした。しかしその後、コラボレーション分野は著しい進歩を遂げ、導入も簡素化され、相互運用性が向上し、全体的なユーザ エクスペリエンスが改善されています。さらに個人レベルでも、普段の生活の中で多様なスマートフォン、ソーシャル メディア、コラボレーション アプリケーションの利用が進みました。
今日の組織は、従業員にすばやく受け入れられ、最大の価値を生み出すことのできるコラボレーション アプリケーションを提供したいと考えています。そのような新しいコラボレーション ツールは、組織の全体的なビジネス プロセスを改善し、従業員の生産性を向上させると同時に、ビジネス パートナーやお客様との新しい革新的なコミュニケーションを実現します。現在のコラボレーション ソリューションでは、ビデオ、音声、そして Web による参加者を一元的な会議環境に統合することが可能になっています。
企業はビジネス プロセスを合理化し、従業員の生産性を向上させ、パートナーや顧客との関係を強化することを求めています。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャ(PA)は、組織が生産性と関係性の向上をただちに実現するための機能を提供します。さらに、次に挙げるテクノロジーの使用例では、組織が新しい先進的なビジネス プロセスを策定し、以下の領域でさらに多くの価値を生み出す機会を提供します。
シスコのコラボレーション テクノロジー の詳細と使用例については、 Cisco.com [英語] をご覧ください。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャは、幅広いお客様を対象に、エンドツーエンドのコラボレーション ソリューションを提供します。このアーキテクチャでは、重要なアプリケーションの高可用性が確保されています。アーキテクチャ全体で一貫したユーザ エクスペリエンスが提供されるため、ユーザが容易にコラボレーションを実践できます。さらにこのアーキテクチャでは、次の主要なサービスを通じて、対象をモバイル ワーカー、パートナー、お客様に広げた高度なコラボレーション サービスをサポートします。
シスコのエンドポイントは適応性が高く、IP ネットワークをサポートしているため、このアーキテクチャを導入すれば、組織が現行データ ネットワークを使用して音声通話とビデオ通話の両方に対応できます。プリファード アーキテクチャでは、全体的アプローチで帯域幅を管理するために、エンドツーエンドのサービス品質(QoS)アーキテクチャ、コール アドミッション制御、ビデオ レート アダプテーション、復元力メカニズムを導入し、マネージドおよびアンマネージド ネットワークでパーベイシブ ビデオを展開する際に最高のユーザ エクスペリエンスを実現できるようになっています。
シスコ コラボレーション オンプレミス向け PA(図 2、図 3 を参照)はエンタープライズ展開と中規模展開の両方において、高可用性とセキュアな一元管理を実現します。これらのサービスはリモート オフィスやモバイル ワーカーに簡単に拡張でき、本社との通信が切断された場合でも、重要なサービスに対する可用性が失われません。また、このように一元化されたサービスにより、企業のコラボレーション展開の管理も簡素化されます。
図 2 エンタープライズ展開でのシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャ
図 3 中規模展開でのシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャ
表 1 に、このアーキテクチャで使用されている製品を示します。製品の分類と役割定義がしやすいように製品をモジュールに分けて記載しています。このガイドの内容も、これらのモジュールに沿って整理されています。
ユーザ数が 1,000 を超える組織を対象とした Cisco Business Edition 7000(BE 7000)は、エンタープライズ展開でのシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの基盤です。Cisco BE7000 は Cisco Unified Computing System(UCS)をベースに構築されており、インストール済みの仮想化ハイパーバイザと、アプリケーション インストール ファイルにより、すぐに使用できるようになっています。Cisco BE7000 ソリューションでは、優れた音声、ビデオ、メッセージング、インスタント メッセージとプレゼンス、そしてコンタクト センター機能が、1 つの統合プラットフォームで提供されます。Cisco BE7000 の詳細については、 データ シート [英語] をご覧ください。
ユーザ数 1,000 以下の組織を対象に設計されたシステムをパッケージ化した Cisco Business Edition(BE)6000M および 6000H は、中規模展開でのシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの基盤となります。Cisco BE6000M および BE6000H は Cisco Unified Computing System(UCS)をベースに構築されており、インストール済みの仮想化ハイパーバイザと、アプリケーション インストール ファイルにより、すぐに使用できるようになっています。Cisco BE6000M または BE6000H ソリューションでは、優れた音声、ビデオ、メッセージング、インスタント メッセージとプレゼンス、そしてコンタクト センター機能が、1 つの統合プラットフォームで提供されます。これらの理由から、中規模展開でのシスコ コラボレーション オンプレミス向け PA には BE6000M と BE6000H が理想的なプラットフォームとなります。Cisco BE6000M および BE6000H の詳細については、 データ シート [英語] をご覧ください。
このシスコ コラボレーション オンプレミス向け PA では、複数の Cisco Unified Computing System(UCS)サーバに次のアプリケーションを導入することで、ハードウェアとソフトウェアの冗長性を実現します。
重要なビジネス アプリケーションの可用性を最大限に引き出すため、必ず冗長コンポーネントと冗長構成を導入することをお勧めします。また、Cisco Meeting Server を専用サーバに導入することをお勧めします。
シスコ コラボレーション オンプレミス向け PA は、すべての Cisco Unified Communications アプリケーションのクラスタリング メカニズムを基盤とすることで、導入されているすべてのアプリケーションに高可用性をもたらします。
クラスタリングによって、導入済みアプリケーションの管理と設定が複製され、それらのアプリケーションのインスタンスがバックアップされます。アプリケーションのインスタンスで障害が発生しても、シスコ ユニファイド コミュニケーション サービス(エンドポイント登録、コール処理、メッセージング、企業間コミュニケーション、その他多数)はアプリケーションの残りのインスタンスで引き続き動作します。このフェールオーバー プロセスはユーザからは見えません。シスコ コラボレーション オンプレミス向け PA ではクラスタリングに加えて、冗長の電源装置、ネットワーク接続、ディスク アレイによって高可用性が確保されています。
エンシスコ コラボレーション オンプレミス向け PA のエンドポイントとインフラストラクチャ コンポーネントの個々のライセンスの詳細については、このドキュメントの対象外であるため取り上げません。Cisco Unified Communications のライセンスの詳細については、 https://tools.cisco.com/SWIFT/LicensingUI/Home [英語] のライセンス管理ポータルをご覧ください。ライセンス管理ポータルには、ライセンス管理をサポートする説明やツールが用意されています。
Cisco サービス統合型ルータ(ISR)とアグリゲーション サービス ルータ(ASR)によりは、ワイドエリア ネットワーク(WAN)とシスコ ユニファイド コミュニケーション サービスが 1 つのプラットフォームで提供されます。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでは、Cisco ISR と ASR によって次の機能が得られます(図 4)。
Cisco ISR および ASR には、ワイヤレス コントローラなどのアドオン モジュールをサポートする追加スロットがあります。Cisco ISR および ASR の多様なモデルを使用して展開することで、各種の機能がサポートされ、拡張と追加サービスの導入が可能です。Cisco ISR および ASR はモジュール型設計であるため、本社、リモート オフィス、ブランチ オフィスに展開できます。これらのルータの詳細については、 Cisco ISR および Cisco ASR のデータ シート [英語] をご覧ください。
シスコ コラボレーションのエンドポイントは、幅広い特徴と機能、ユーザ エクスペリエンスを提供します。シスコのエンドポイントは、単一回線で低価格の電話やソフト クライアントから、3 画面の Cisco TelePresence エンドポイントに至るまで広範に用意されているので、ユーザのニーズに合わせたエンドポイントを柔軟に組み合わせて導入できます(図 5)。さらにこれらのエンドポイントでは、ユーザが次の通信サービスにアクセスできます。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでは、Cisco Unified Communications Manager(Unified CM)がコール制御サーバとなります。Cisco IP Phone、Jabber クライアント、TelePresence ビデオ エンドポイントは、SIP を使用して Cisco Unified CM に直接登録します。Unified CM クラスタのフェールオーバー メカニズムにより、エンドポイント登録の冗長性が得られます。WAN 障害が発生して、リモート ロケーションにあるエンドポイントが Unified CM に登録できない場合、これらのエンドポイントはローカル コールと PSTN コールに SRST 機能を使用します。ただし、ボイスメールやプレゼンスなど一部のサービスは使用できない可能性があります。
この設計に最適な機能を備えた、以下の表に記載するエンドポイントを使用することを推奨します。この他にも、シスコでは組織のビジネス ニーズに応じて使用できる、さまざまな特徴と機能を備えた多様なエンドポイントを用意しています。
Cisco DX70 および DX801 |
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コール制御は、あらゆるコミュニケーション展開の中核的な要素です。コール制御により、エンドポイント登録、コール処理、コール アドミッション制御が行われます。コール制御の設計に関する考慮事項としては、ダイヤル プラン、エンドポイント アドレッシング方式、発呼者の表示、コール アドミッション制御、コーデック選択、PSTN 接続、一般的なトランキング要件など、さまざまな要素があります。
Cisco Unified Communications Manager(Cisco CM)は、すべてのシスコ コラボレーションの展開に共通のコール制御プラットフォームを提供します(図 6)。通信インフラストラクチャで高可用性を備えた共通のコール制御コンポーネントを用意することは、あらゆるデバイスと通信のタイプに対して一貫したサービスを提供し、導入環境全体で統一されたダイヤル プランと一定の機能セットを保持するうえで不可欠の要素です。
Cisco Unified CM の展開に IM and Presence サービスを追加することで、インスタント メッセージ、ネットワークベースのプレゼンス、サードパーティ製チャット サーバのフェデレーションが可能になり、インスタント メッセージ、プレゼンス、音声およびビデオなどのコミュニケーションで Cisco Jabber を使用できるようになります。
表 6 に、このアーキテクチャでのコール制御コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでのコール制御については、次の推奨事項があります。
Cisco Unified CM と IM and Presence では、クラスタリング(複数のノードをグループ化して 1 つの論理エンティティとして機能させること)がサポートされています。パブリッシャ ノードにクラスタの構成データベースが格納され、そのデータベースがコール処理サブスクライバ ノードと TFTP ノードに複製されます。
クラスタリングにより、エンドポイントおよび Cisco Unified CM サービスに、着信コールを受信して処理するなどの機能の自動冗長性メカニズムが備わります。1:1 の冗長性を確保するには、コール処理サブスクライバと TFTP ノードをペアで展開します。(図 7)コール処理サブスクライバがエンドポイント登録およびコール処理機能を提供し、TFTP ノードがエンドポイントで設定とファームウェアの更新を行います。
すべての TFTP ノードとサブスクライバ ノードは、パブリッシャ ノードから定期的に構成データベースの更新を受け取ります。これらのデータベース更新により、すべてのサブスクライバ ノードが一貫した状態で動作するようになります。
すべてのサブスクライバ間にコール処理サービスのロード バランシングを行い、フェールオーバー応答時間を短縮するには、コール処理サブスクライバの各ペアをアクティブ/アクティブ冗長構成で展開します。
IM and Presence に関しては、少なくとも 1 つの IM and Presence パブリッシャと 1 つのサブスクライバという展開にすることをお勧めします。IM and Presence パブリッシャは専用ノードではありません。パブリッシャとサブスクライバは相互に冗長性を提供します。(図 7)。
エンタープライズ展開でより多くのユーザに対応するには、必要な数の IM and Presence サブスクライバまたは Unified CM コール処理ノードのペアを追加します。
(注) クラスタリングによるスケーラビリティの確保は、Cisco Business Edition 6000(BE6000)に基づく中規模展開には当てはまりません。BE6000 クラスタにノードを追加しても、クラスタのキャパシティは増加しません。
Cisco Unified CM からシスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャ内のすべてのコンポーネント(サードパーティ製システムなどの外部エンティティを含む)と通信するには、SIP トランクを使用します。SIP トランクには次のような利点があります。
Cisco Survivable Remote Site Telephony(SRST)は、WAN 障害中に音声サービスを継続する必要があるリモート サイトで不可欠な機能です。SRST は、リモート サイトに WAN および PSTN 接続を提供する Cisco ISR 上で実行されます。次のような場合は、Cisco ISR 上で SRST を展開します。
WAN 障害が発生した場合に外部の音声サービスが中断されるのを防ぐには、リモート サイトにローカル PSTN 接続を導入します。SRST が必要となるのは、リモート サイトの WAN の信頼性が、そのサイトで音声サービスの可用性に必要とされるサービス レベルに適合しない場合のみです。
SRST およびローカル PSTN のアクセスが可能なサイトで WAN 障害が発生した場合でも、次のサービスを引き続き利用できます。
(注) SRST は Cisco DX、IX、MX、SX シリーズ エンドポイントでは利用できません。SRST がサポートされているエンドポイントの詳細については、表 5 をご覧ください。
コール制御システムを適切に展開するには、構造化され適切に設計されたダイヤル プランが不可欠です。ダイヤル プランを設計する際は、次の重要な要素を考慮してください。
ダイヤリング手順は、エンド ユーザがさまざまなタイプの接続先に対してどのようなダイヤリングを行うかを示します。ダイヤリング手順は、まず数字ダイヤリング(例:914085550123)か英数字ダイヤリング(例:bob@ent-pa.com)かで分類されます。一般的に、接続先のタイプが異なれば、それに応じたダイヤリング手順がサポートされていなければなりません。コール ピックアップやボイスメールなどのサービスなど、必要に応じてさらにダイヤリング手順を定義します。また、ダイヤル プランを再設計しなくても必要に応じてユーザやサイトを追加できるように、さらなる拡張を考慮すべきです。一部のダイヤル手順(特に PSTN ダイヤル手順など)では、その国固有の要件やすでに確立されているダイヤル手順に従う必要があります。ダイヤリング手順を特定することは、企業のダイヤル プランで 2 つのダイヤリング手順が重複しないようにする場合に特に重要です。
企業向けコール制御によって登録された各エンドポイントは、固有の数列アドレスが必要です。Cisco Unified CM 内のエンドポイント アドレスは、エンドポイントの回線にプロビジョニングされた電話番号に相当します。先頭にエンドポイント アドレスとして「+」が付いた完全修飾 PSTN 番号(E.164 番号)を使用します。この形式は一般的に +E.164 形式と呼ばれます。+E.164 エンドポイント アドレスを使用すると、次のような利点があります。
ダイヤル プランのルーティングにより、ユーザは定義されたダイヤリング手順を使用して正しい接続先に到達できます。
プライマリ数列ルーティングは +E.164 番号に基づいています。PSTN などその他のトランスポート ネットワークへの外部ルートでも、+E.164 スキームが使用されます。+E.164 のエンドポイント アドレスを使用すれば、設定を追加することなく +E.164 オンネット ダイヤリングが可能になります。サイト内およびサイト間の短縮ダイヤルなど、その他すべての数値ダイヤリング手順は、ダイヤル プランに適切な変換パターンを追加し、実装されているダイヤリング手順から +E.164 グローバル ルーティング アドレス形式にマッピングすることで、オーバーレイとして実装されます。これによりユーザは、ユーザ設定に応じて異なるダイヤリング手順を使用しても、同じエンドポイントに到達できるようになります。
エンドポイントに到達するための代替手段として英数字からなる URI は、数列アドレスの別表記(エイリアス)です。URI ダイヤリングと URI ルーティングには次のような利点があります。
ユーザが連絡先を検索してディレクトリからダイヤルできるようにするには、Cisco Unified CM と組織の LDAP ディレクトリを統合します。Unified CM ではローカルのユーザ連絡先を作成できますが、Cisco Jabber を使用する場合は LDAP ディレクトリの統合が必要になります。これによってディレクトリ管理が一元化されるため、ユーザは自分の LDAP ディレクトリ クレデンシャルを使用して Cisco Unified CM および Cisco Jabber の認証を受けられるようになります。
Cisco Unified CM は LDAP ディレクトリからユーザおよび連絡先情報を取り込み、変更があった場合にはユーザのパラメータ(名、姓、ユーザ名、電話番号、SIP URI)を同期します。IM and Presence Service は Cisco Unified CM からユーザおよび連絡先情報を取り込みます。
サービス クラスでは、どのユーザがどのサービスにアクセスできるかを定義します。たとえばロビーの電話は緊急通話と市内通話に限定し、経営幹部用の電話は無制限に通話可能にするなどです。ダイヤル プランの複雑さは、サービス クラスをどれだけ細分化するかによって異なります。
サービス クラスを定義するには、Cisco Unified CM でパーティションとコーリング サーチ スペースを設定します。ダイヤル プランに含まれるサービス クラスの数は、クラスの粒度と複雑性によって異なります。サービス クラス、および企業のダイヤル プラン設計の詳細については、 シスコ コラボレーション SRND [英語] をご覧ください。
次のいずれかの要件がある場合は、複数の Cisco Unified CM クラスタの展開を検討してください。
マルチクラスタ展開では、SIP トランクを介して個々の Unified CM クラスタすべてを相互接続します。個々のクラスタ間のセッション トラバーサルを防ぐには、フルメッシュの SIP トランクを展開します。4 つ以上のクラスタを使用する場合、Cisco Unified CM Session Management Edition を展開してダイヤル プランとトランキングを一元化し、フルメッシュの SIP トランク トポロジが複雑になることを防ぎます。
マルチクラスタ展開では Global Dial Plan Replication(GDPR)を使用して、クラスタ間のダイヤル プラン情報を複製します。GDPR は、1 つのディレクトリ番号に対して、1 つの +E.164 番号、1 つの Enterprise Significant Number(ESN)、および最大 5 つの英数字 URI をアドバタイズできます。ESN はディレクトリ番号に相当する、サイト内の短縮ダイヤルです。GDPR を通じてアドバタイズされ、学習された情報により、次のようなダイヤル手順での決定論的なクラスタ内ルーティングが可能になります。
3 人以上のユーザが音声およびビデオ テクノロジーを使用してリアルタイムに通信できる機能は、コラボレーションの中核となる要素です。シスコのリッチ メディア会議は、ポイントツーポイント コールのための既存のインフラストラクチャを活用して、一貫性のある音声およびビデオ エクスペリエンスを実現します(図 8)。
表 7 に、このアーキテクチャでの会議コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでの音声およびビデオ会議に関して、次の推奨事項があります。
音声およびビデオのインスタント会議には、メディア リソースとして Cisco Meeting Server をオンプレミスで使用します。Cisco Unified CM は、インスタント会議ブリッジ内部で Cisco Meeting Server と相互作用するための HTTPS インターフェイスと SIP トランク インターフェイスを備えています。HTTPS は会議を制御するために使用される一方、SIP トランクはコール シグナリングに使用されます。これらの会議ブリッジは、Unified CM 内でメディア リソース グループ リスト(MRGL)とメディア リソース グループ(MRG)に割り当てられます。Unified CM では MRGL と MRG を使用して、会議ブリッジ、保留音ソース、アナンシエータ、トランスコーダ、メディア ターミネーション ポイント(MTP)などのメディア リソースの優先順位付けと割り当てを行います。
エンドポイントが適切な MRGL にアクセスできる場合は、これらのリソースを要求することができます。発信元のエンドポイントのローカルにあるリソースは、リモート リソースよりも優先されます(図 9)。
図 9 メディア リソース グループ リスト(MRGL)の例
常設会議は Cisco Meeting Server スペースを使用して導入されます。Meeting Server スペースは誰でも参加できる仮想の永続的会議室であり、ビデオ、音声、コンテンツ共有がサポートされます。Web 管理インターフェイスで設定される Microsoft Active Directory から Cisco Meeting Server にユーザがインポートされると、Meeting Server スペースが自動的に作成されます。各スペースには少数の属性(ユーザ名、スペース名など)が割り当てられ、ビデオ アドレス URI または数値のエイリアスを使ってこれらにアクセスできます。管理者はフィールド マッピング式を使用してこれらの属性を設定します。スペースが作成された後、管理者はデフォルトのレイアウトやユーザごとのゲスト アクセス コードを指定することで、スペースをさらにカスタマイズできます。スペース所有者は Cisco Meeting アプリケーションにログインしてチーム用スペースを作成し、他のメンバーにコラボレーションへの参加を招待できます。
スケジュール済み会議に対して、スケジュールされない会議の場合と同じように Cisco Meeting Server を使って会議リソースを提供します。SIP トランクを介して Cisco Unified CM に Cisco Meeting Server を統合し、Cisco TelePresence Management Suite を使ってそれを管理します。
Cisco TelePresence Management Suite(TMS)は Microsoft Windows サーバ上で稼働し、Microsoft SQL データベースを使ってユーザ、制御対象デバイス、スケジュール済み会議に関する情報を保管します。ユーザ プロファイルが Microsoft Active Directory からインポートされます。また、権限モデルを使用して、さまざまなコンポーネントや構成済みのシステムに対するアクセスを制御できます。Microsoft Exchange を統合するには、Cisco TMSXE を備えた Cisco TMS を導入しします。
各組織では 1 つの TMS を展開します。統合システム ナビゲータ フォルダ構造を活用して、すべてのエンドポイントとインフラストラクチャ デバイスを編成します。多国籍企業やグローバル企業でも 1 つの TMS を展開するだけなので、ビデオ接続が容易になります。
TMS および TMS でサポートされる拡張機能の冗長性は、シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの他のコンポーネントとは異なります。TMS とそのコンポーネントは、クラスタリングではなくアクティブ/パッシブ モデルで動作します。TMS の 1 つのインスタンスは、ネットワーク ロード バランサー、TMS をホストする 2 つのサーバ、TMSXE アプリケーションをホストする 2 つのサーバ、そして SQL データベースで構成されます(図 10)。インスタンスのライセンスは SQL データベースで保持されるため、各ノードの個別のライセンスは不要です。各アプリケーションでは常に 1 つのサーバだけがアクティブであり、パッシブ(非アクティブ)なノードの Web ページやサービスはロックされ、その他すべての着信トラフィックが拒否されます。サーバはすべて同じドメインのメンバーである必要があります。
Microsoft SQL データベースを TMS サーバとは別個に展開します。SQL のインスタンスは組織内の他のアプリケーションによって共有されることがあるので、Microsoft の推奨事項に従って高可用性を確保する必要があります。
組織が複数の Cisco Meeting Server クラスタの実装(図 11)を選択する理由としては、次が挙げられます。
ただし、複数の Cisco Unified CM が展開されている場合は、単一の Cisco Meeting Server クラスタを導入して、Unified CM クラスタごとに 1 つの専用コール ブリッジ グループを使用することを推奨します。グループ内のコール ブリッジを、対応する Unified CM クラスタと同じデータ センターに導入する必要があります。単一の Cisco Meeting Server クラスタを使用することで、どの Unified CM クラスタからダイヤルするかに関わらず、ユーザが同じビデオ アドレスを使用して同じ会議にアクセスできるようになります。
中規模展開ですでに Cisco サービス統合型ルータ(ISR)を使用している場合、ハードウェアに追加投資せずに極めて基本的な音声のみの会議を可能にするには、ご使用の ISR を会議ブリッジとして展開できます(図 12)。
表 8 に、このアーキテクチャでの音声会議コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
インスタントおよび常設の音声会議には、専用のパケット音声デジタル信号プロセッサ モジュール(PVDM)リソースを割り当てた Cisco ISR を音声会議ブリッジとして使用します。Cisco ISR には、音声会議、音声インターフェイス(T1、E1、FXO、FXS)、およびオーディオ変換をサポートするための PVDM が必要です。
Cisco ISR を使用して音声ゲートウェイ、SRST、会議、WAN 接続などの多様な機能に対応し、これらの音声サービスを単一のプラットフォームに統合することで、個別のコンポーネントの場合よりも大幅にコストを節約できます。導入環境の柔軟性を向上させるために、PVDM をさまざまな密度で使用して、複雑さが異なる広範なコーデックをサポートできます。
常設音声会議は、Cisco Unified CM のミートミー機能に依存します。この機能を使用するには、一連のディレクトリ番号(DN)を常設音声会議の専用として割り当てる必要があります。ユーザが音声エンドポイント上のミートミー ソフトキーを押して所定の範囲内の DN をダイヤルすると、この機能が起動します。それ以降、他のユーザは所定の番号を直接ダイヤルして会議に参加できます。これらの DN へのアクセスが制御されるようにダイヤル プランを設定してください。常設音声会議は、インスタント音声会議と同じ Cisco ISR PVDM リソースでホストされます。
インスタント音声会議のリソースは Cisco Unified CM に登録されて、メディア リソース グループ(MRG)とメディア リソース グループ リスト(MRGL)により制御されます。エンドポイントは、割り当てられているデバイス プールが適切な MRGL にアクセスできる場合、これらのリソースを呼び出します。会議を開始するエンドポイントから見てローカルな会議リソースを他のリソースよりも優先的に選択するよう、MRGL を設定することをお勧めします。
図 13 メディア リソース グループ リスト(MRGL)の例
インターネットを活用して組織を接続するビジネス ニーズが、ここ数年で大幅に増えています。多くの組織にとって、このような接続が日常業務で基本的な要件になっています。さらに、モバイル ワーカーとリモート サイトを相互に、また本社と安全に接続することは、組織のビジネス目標達成に不可欠な要素でもあります。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャではこれらのニーズを満たすために、図 14 に示すコラボレーション エッジ アーキテクチャを使用します。
表 9 に、このアーキテクチャでのコラボレーション エッジ コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャには、次のコラボレーション エッジ ソリューションをお勧めします。
Cisco Expressway は、モバイル/リモート Cisco Jabber および TelePresence ビデオ エンドポイント向けにセキュアなファイアウォールと NAT トラバーサルを可能にし(図 15)、セキュアな企業間コミュニケーションを実現します(図 16)。Cisco Expressway は、Expressway-C と Expressway-E の 2 つのアプリケーションで構成されています。
Cisco Expressway-C をネットワーク内部で展開します。Expressway-E は、Expressway-E の個別のネットワーク ポートを組織のネットワークと緩衝地帯(DMZ)に接続することで、DMZ で展開します。
シスコでは、仮想化された Expressway-E を DMZ でフルにサポートしています。ただし、企業のセキュリティ要件に基づいて、専用のサーバを展開することもできます。
図 15 Expressway-C および Expressway-E によるファイアウォールを介したエンドポイント登録のためのトラバーサル
図 16 Expressway-C および Expressway-E によるファイアウォールを介した企業間コールのためのトラバーサル
Expressway-C は、組織内の信頼ネットワーク内に配置します。Expressway-C の展開によって次のような効果が得られます。
信頼できない外部ネットワークから Expressway-E に直接アクセスできるため、これを DMZ に配置してセキュリティを確保する必要があります。このサーバが送受信するコミュニケーションは、組織のファイアウォール ポリシーによって制御されます。Expressway-E の展開によって次のような効果が得られます。
固定電話と携帯電話では市内通話と国際電話用に PSTN を使用するので、組織の IP テレフォニー ネットワークから PSTN に外部接続できる必要があります(図 17)。
本社の PSTN ゲートウェイとして、時分割多重(TDM)モジュールを備えた Cisco ISR または ASR を使用します。この構成では、組織の PSTN コールの着信および発信に関するメディア インターワーキングをゲートウェイで実装できます。
リモート サイトでは、音声モジュールを使用してローカル PSTN 接続用の Cisco ISR を導入します。Cisco ISR の詳細については、 データ シート [英語] をご覧ください。
複数の ISR または ASR を展開することで、冗長性が確保されます。Cisco Unified CM には、最も近いルータにトラフィックをルーティングする機能があります。
音声コール用に SIP トランクを使用してサービス プロバイダーに接続する場合は、本社に導入された Cisco ISR で Cisco Unified Border Element(CUBE)機能を有効にして、緩衝地帯(DMZ)に CUBE を導入します。Cisco Unified CM はダイヤル プランに基づき、SIP トランクを通じてゲートウェイ、CUBE、または Cisco Expressway にコールをルーティングします。ダイヤル プランに関する推奨事項については、「コール制御」をご覧ください。
どのようなコラボレーション導入の場合も、ボイス メッセージングは基本的な要件であり、必要不可欠なサービスと見なされます。Cisco Unity Connection を使用すると、ユーザが自分のメール ボックス、Web ブラウザ、Cisco Jabber クライアント、Cisco Unified IP Phone、あるいは TelePresence エンドポイントのどこからでもボイス メッセージにアクセスして管理できます。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャには、コラボレーション ソリューションでのボイス メッセージングを可能にするための Cisco Unity Connection が含まれています(図 18)。
表 10 に、このアーキテクチャでのボイス メッセージング コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
Cisco Unity Connection では、アクティブ/アクティブ モードでクラスタ構成がサポートされ、高可用性と冗長性が確保されています。図 19 に示されているように、Unity Connection クラスタは最大 2 つのノードからなります。一方のノードはパブリッシャ、もう一方のノードはサブスクライバです(#1)。Unity Connection のいずれかのノードに障害が発生した場合は、Unity Connection クラスタ内の他のアクティブ ノードがすべてのコールと HTTP リクエストを処理します。Unity Connection クラスタ内の各サーバには、クラスタのすべてのコールを処理するのに十分な数のボイス メッセージ ポートが必要です。
図 19 に示されている Cisco Unified CM と Unity Connection の統合では、SIP に依存して通信が行われます(#1)。さらに、ハードウェアおよびソフトウェア エンドポイントでは、VoIP 通信または REST ベースの HTTPS 通信によってボイス メッセージング サービスにアクセスできます(#2)。ボイスメール パイロット番号は、ユーザが自分のボイスメッセージにアクセスする場合に使用するディレクトリ番号を指定するものです。Unified CM では、ユーザが電話機上の [メッセージ(Messages)] ボタンを押すと、ボイス メッセージ番号が自動的にダイヤルされます(VoIP)。ビジュアル ボイスメールでは、ユーザが IP Phone または Jabber クライアント上のグラフィカル インターフェイスからボイスメールにアクセスできます(HTTPS)。ユーザはメッセージのリストを表示し、リスト内のメッセージを再生できます。また、メッセージの作成、返信、転送、削除が可能です。それぞれのボイスメール メッセージには、メッセージの日付と時刻、緊急度、メッセージの長さなどのデータが表示されます。
要約すると、Cisco Unity Connection を次のように導入することを推奨します。
Cisco Unity Connection の詳細については、 製品マニュアル をご覧ください。
コラボレーション システム環境において、システム管理とソフトウェア ライセンシングは重要な機能です。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでは、あらゆるコラボレーション ソリューションの基本的な要件かつ基盤と見なされている次の Cisco コア管理アプリケーションを使用します(図 20)。
表 11 に、このアーキテクチャでのアプリケーション コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
Cisco Prime Collaboration Deployment は、Cisco コラボレーション アプリケーションの設定とインストールに必要となる主要な手順の多くを自動化することによって、管理者を支援します。
Cisco Prime Collaboration Deployment は、シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャに含まれる次のアプリケーションをサポートします。
Cisco Prime Collaboration Deployment には、次のアーキテクチャが推奨されます(図 21 を参照)。
図 21 Cisco Prime Collaboration Deployment のアーキテクチャ
Cisco Prime Collaboration Provisioning は、IP テレフォニー、ビデオ、ボイスメール、ユニファイド メッセージングが統合された環境のプロビジョニング ニーズに対処できるように管理者を支援する、スケーラブルな Web ベースのソリューションです。Cisco Prime Collaboration Provisioning は、管理者によるユーザとデバイスのプロビジョニングを支援することによって、迅速な導入を可能にします。初期設定とプロビジョニングが完了した後は、Cisco Prime Collaboration Provisioning によって簡単に移動、追加、変更できるとともに、新しい機能の設定と導入も容易になります。直感的なユーザ インターフェイスには、さまざまなユーザとユーザのサービスが 1 つの統合ビューに表示されます。
Cisco Prime Collaboration Provisioning は次の 2 つのバージョンで用意されています。
中規模展開には、For midmarket deployments, we recommend Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard をお勧めします(「Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard」を参照)。エンタープライズ展開には、次の 2 つのセクションで説明するように、シングルクラスタ展開の場合は Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard、マルチクラスタ展開の場合は Cisco Prime Collaboration Provisioning Advanced をお勧めします。
Cisco Prime Collaboration では、ハイ アベイラビリティ(HA)が VMware vSphere HA 機能によりサポートされています。HA を構成するために Cisco Prime Collaboration ライセンスを追加する必要はありません。Prime Collaboration Provisioning が常駐するホストで障害が発生した場合の稼働時間を延ばすために、HA を構成することを強く推奨します。中小規模の展開では、Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard 用の仮想マシンが 1 つ必要になるだけです。大規模展開および非常に大規模な展開では、Cisco Prime Collaboration Provisioning Advanced のデータベースとアプリケーションをそれぞれ別個の仮想マシンに構成する必要があります。
図 22 に、サイト別のプロビジョニングを行うためにユーザとコンポーネントをグループ化する例を示します。また、図 22 には、Cisco Prime Collaboration Provisioning Advanced を LDAP に統合する場合に推奨される展開も示されています。この場合、組織内のすべてのユーザが LDAP から Cisco Prime Collaboration Provisioning に取り込まれます。このアーキテクチャでは、Cisco Unified CM 内でユーザの同期と認証を分離することができます。このセットアップではさらに、管理者が自動サービス プロビジョニングを利用することもできます。これは、新しい従業員が LDAP サービスに追加されたときに一連のサービスをプロビジョニングし、従業員が LDAP サーバから削除されると、それらのサービスをプロビジョニング解除する機能です。
図 22 Cisco Prime Collaboration Provisioning Advanced のアーキテクチャ
システムを最初から構成して稼働状態にするにはかなりの時間と作業が必要になるため、定期的に外部 FTP サーバにバックアップして、周期的に VM スナップショットを取得することを強く推奨します。こうすることで、各ユーザのログと発注履歴を保持できるだけでなく、壊滅的な障害が発生した場合でもデータを復元できます。
Cisco Prime Collaboration Provisioning には次の機能と利点があります。
Cisco Smart Software Manager は、企業全体にわたるソフトウェア ランセンスを簡単かつ柔軟に管理できる、インターネットベースの Web ポータルです。Cisco Smart Software Manager はライセンスとソフトウェアのアクティベーションおよびサポートされる製品全体にわたるラインセンスの調整を簡素化します。さらに、ユーザと権限付与に関するエンタープライズレベルのレポートを提供します。Cisco Smart Software Manager は、複数クラスタを使用した導入環境もサポートします。
Cisco Smart Software Manager は、シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャに含まれる次のアプリケーションをサポートします。
Web ベースの Cisco Smart Software Manager とオンプレミスの Unified CM および Unity Connection クラスタ パブリッシャ ノードとの間では、直接通信またはプロキシ通信を行うことを推奨します。それには、組織のファイアウォール経由で Unified CM および Unity Connection パブリッシャ ノードから Web ベース Cisco Smart Software Manager サービスへのアウトバウンド HTTPS 通信を行う必要があります。組織で直接的なアウトバウンド Web 通信が可能でない場合は、クラスタ パブリッシャ ノードを組織内の標準の HTTP/HTTPS プロキシ サーバにリダイレクトしてファイアウォール トラバーサルを可能にし、Web ベースの Cisco Smart Software サービスにアクセスできるようにしてください。
今日のほぼすべての環境と同様に、コラボレーション導入環境もまたセキュリティで保護することが重要です。コラボレーション導入環境は、サービス拒否攻撃、不正アクセス、第三者による IP 電話などの不正利用、傍受などの脅威にさらされます。このような脅威に対して、コラボレーション導入環境を保護することが重要です。多重のセキュリティ対策を講じるために、ネットワークをさまざまなレベル(物理的アクセス、ネットワーク インフラストラクチャ、コラボレーション アプリケーション、コラボレーション エンドポイント)で保護してください(図 23)。
単にこのセクションの推奨事項に従うだけで、まったく安全な環境が保証されるわけでも、ネットワーク上のすべての侵入攻撃を完全に阻止できるわけでもありません。適切なセキュリティを達成するには、適切なセキュリティ ポリシーを確立し、そのセキュリティ ポリシーを適用する必要があります。また、ハッカーおよびセキュリティ コミュニティでの最新の動向を常に把握し、信頼性の高いシステム管理プラクティスにより、すべてのシステムを保守およびモニタする必要があります。
図 23 企業のコラボレーション向けプリファード アーキテクチャを構成するすべてのコンポーネントのセキュリティ保護
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャに推奨される一般的なセキュリティ対策は次のとおりです。
第三者による IP 電話などの不正利用を防ぐには、Cisco Unified CM 上のさまざまなメカニズムを使用できます。パーティションとコーリング サーチ スペース(CSS)を設定することで、着信可能なディレクトリ番号やコールを発信するデバイス/回線のセグメント化とアクセス制御が可能になります。ベスト プラクティスとして、パーティションとコーリング サーチ スペースに基づき、可能な限り制限の厳しいサービス クラスを適用してください(たとえば PSTN からの着信コールに対する PSTN ルートへのアクセス拒否)。この他に使用できるメカニズムとしては、時間帯ルーティング、[オフネット間転送のブロック(Block OffNet to OffNet Transfer)] サービス パラメータ、強制認証コード(FAC)、ルート フィルタなどがあります。
Cisco Expressway-E では、不正利用を防ぐために呼処理言語(CPL)ルールを使用します。
Cisco Unified Border Element では、第三者による IP 電話などの不正利用に対する保護メカニズムを設定します。たとえば、IP 信頼リストと明示的着信/発信ダイヤル ピアを設定します。
証明書の管理を簡素化するために、証明機関(CA)によって署名された証明書を使用します。デフォルトで、サーバ証明書は自己署名されます。自己署名証明書に基づいてサービスの信頼性を確立するには、サービスへのセキュア接続を必要とするすべてのエンティティの信頼ストアに、その自己署名証明書をインポートしなければなりません。証明書がインポートされない場合、通信が失敗するか、たとえば Jabber の場合にように証明書に関する警告メッセージが表示される可能性があります。通信の参加者が少なければ証明書のインポートを処理できますが、通信相手が多くなると、それが困難になります。このため、証明機関(CA)によって署名されたいくつかの証明書を使用して、その CA に信頼を拡張することをお勧めします。この推奨事項は、IM and Presence Service と Cisco Unity Connection で使用する Cisco Unified CM の Tomcat 証明書や、IM and Presence の XMPP 証明書などでは特に重要です。
Cisco Expressway-E サーバには、パブリック CA によって署名された証明書を使用します。
可能な場合には常にマルチサーバ証明を使用してください(特に Cisco Unified CM および Unified CM IM and Presence の Tomcat 証明書の場合)。マルチサーバ証明書を使用すると、クラスタ内の複数サーバ間で特定の 1 つのサービスに関する単一の証明書を割り当てることで、管理者は証明書の管理をさらに簡素化できます。
エンドポイントで使用できる証明書のタイプには、一般に、製造元でインストールされる証明書(MIC、Manufactured-Installed Certificate)とローカルで固有の証明書(LSC、Local Significant Certificate)の 2 つがあります。エンドポイント証明書はシグナリングとメディアの暗号化に使用されます。また、必要に応じて TFTP 電話機コンフィギュレーション ファイルの暗号化にも使用されます。MIC 証明書ではなく LSC 証明書を使用することをお勧めします。
SIP トランクは Cisco Unified CM を他のサーバ(Cisco Unity Connection、IM and Presence、Cisco Meeting Server、Cisco Unified Border Element、企業間(B2B)コラボレーション エッジ、音声ゲートウェイなど)に接続します。
アプリケーションのすべての接続には、HTTP ではなく HTTPS を使用します。たとえば、Extension Mobility では HTTPS を使用してください。
Cisco Unified CM マルチクラスタ展開では、次の項目にも暗号化を有効にします。
機密性の高い音声およびビデオ コミュニケーションを保護するために、エンドポイントでのシグナリングとメディアの暗号化を有効にします。これは特に、ネットワークの信頼性と安全性が完全ではない場合に重要です。そのためには、Cisco Unified CM で混合モードが有効になっている必要があります。混合モードでは、どのエンドポイントでシグナリングとメディアの暗号化を使用し、どのエンドポイントで使用しないかを選択して設定できます。
以上のセキュリティに関する推奨事項に従うことには、次の利点があります。
帯域幅管理とは、コラボレーション ソリューション内の音声およびビデオ エンドポイント、クライアント、およびアプリケーションのすべてで、エンドツーエンドの最高のユーザ エクスペリエンスを実現することです。シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでは帯域幅管理に対する全体的アプローチとして、エンドツーエンドのサービス品質(QoS)アーキテクチャ、コール アドミッション制御、ビデオ レート アダプテーション、復元力メカニズムを導入し、マネージドおよびアンマネージド ネットワークでパーベイシブ ビデオを展開する際に最高のユーザ エクスペリエンスを実現できるようにします。
インタラクティブ アプリケーション(特に音声、ビデオ、およびイマーシブ アプリケーション)の増加に伴い、最近では多くの場合、ネットワークでのリアルタイム サービスが求められます。これらのリソースは限られているため、効率的かつ効果的に管理する必要があります。優先リソースのフロー数に制限がない場合は、これらのリソースがオーバーサブスクライブされるため、すべてのリアルタイム トラフィック フローの品質が低下し、最終的には役に立たなくなります。リアルタイム サービスの要件に対処するために、シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャでは「インテリジェント」メディア手法、QoS、およびアドミッション制御を利用した戦略を提供します。この戦略は、リアルタイム アプリケーションとそれに関連するメディアがアプリケーション用にプロビジョニングされているネットワークと帯域幅をオーバーサブクライブすることを防ぎ、帯域幅リソースの効率的使用を保証します。
図 24 に、シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャで使用される帯域幅管理のアプローチを示します。このアプローチは次のフェーズからなります。
図 24 に示されている帯域幅管理戦略には、次の概念が適用されます。
自動調整ビデオ ネットワークでは、適切なプロビジョニングおよび QoS とともに、インテリジェント メディア手法とレート アダプテーションを利用します。これにより、ネットワーク内のビデオ帯域幅が完全に使用されていない間は、ビデオ エンドポイントが最大のビデオ解像度を使用するようになります。一方、最繁時にはレートに適応するか、ビット レートのスロットリングを行って、より多くのビデオ フローに対応します。
音声のみのコールとビデオ コール音声の両方でオーディオを優先させます。したがって、ネットワーク内ですべての音声が優先されることになるため、ビデオ キューでパケット損失が発生したとしても、オーディオにはその影響が及びません。あらゆるタイプのコラボレーション メディアに含まれる音声を優先すると、重度の輻輳が発生している間にビデオでパケット損失が発生し、その損失に応じて調整される場合でも、オーディオ ストリームにはパケット損失の影響が及ぶことなく、ユーザが中断のないオーディオ エクスペリエンスを続行できます。
状況対応型ビデオでは、あるビデオ エンドポイント グループを戦略的に低いクラスでマーキングします。ネットワークがそれほどビジーではなく、より多くの帯域幅を使用できる間は、それらのビデオ エンドポイントが使用可能な帯域幅を使ってビデオ解像度を最適化できるようにします。逆に、ネットワークの最繁時に輻輳が発生している間は、低クラスのビデオ エンドポイントのビデオ ビット レートが優先クラスのビデオよりも積極的に抑制されます。この状況対応型ビデオの概念をオーディオ優先の概念と組み合わせることで、ビデオ エクスペリエンスが許容可能な状態に維持されると同時に、状況対応型ビデオ コールの音声メディアの品質低下も回避できます。インターネットなどのアンマネージド ネットワークは QoS 対応ではなく、パケット損失に関して何の保証もないことから、この手法が適用されるのは当然、マネージド ネットワークです。とは言え、メディア復元力とレート アダプテーションのメカニズムにより、アンマネージド ネットワークで配信されるメディアでもパケット損失、遅延、ジッターに関して可能な限り良い品質を維持するように試みられます。
– すべてのオーディオ(音声のみのコールとビデオ コールに含まれるすべてのオーディオを含む)を、完全優先転送(Expedited Forwarding)クラス EF としてマーキングします。
– デスクトップおよびルーム システムの重要なすべてのビデオ、相対的優先転送(Assured Forwarding)クラス AF41 としてマーキングします。
– すべての Jabber ビデオ、モバイルおよびリモート アクセス(MRA)ビデオ、エッジ ビデオを、相対的優先転送(Assured Forwarding)クラス AF42 としてマーキングします。
(注) これにより、本質的に状況に対応するビデオ エンドポイントとビデオ コール フローのクラスが作成されます。(詳細については、状況対応型ビデオを参照してください)。カスタマー エッジの機器に適用される制約、または他の理由により AF42 のマーキングおよびスケジューリングが可能でない場合は、すべてのビデオ トラフィックに AF41 を使用することができます。その場合、状況対応型ビデオの利点は最小限に抑えられます。AF41 マーキングだけを使用すると、すべてのビデオ トラフィックが均等にリソースを取得しようとし、自動調整ビデオ ワークの使用状況に基づいて同じようにレートが調整されるためです。
– ソリューション全体にわたり、メディアを発信および終端するすべてのアプリケーションと MCU に QoS を設定します。
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャの中規模展開では、次のアプリケーション(図 25 を参照)によって機能とサービスが追加されます。
表 12 に、このアーキテクチャでのアプリケーション コンポーネントの役割と、提供されるサービスを示します。
Cisco Unified Contact Center Express(Unified CCX)により、組織は内部および外部顧客に強力なエージェント キューイングと自動音声応答(IVR)サービスを提供できます。これらのサービスを使用することで、顧客が販売の問い合わせをしたり製品サポートを受けたりする際に、組織内の適切な従業員に簡単につながることができます。
高可用性のために 2 台の Unified CCX サーバを導入します。一方はアクティブ ノード、もう一方は障害が発生した場合にサービスを提供するスタンバイ ノードとして使用します(図 26)。また、Unified CCX 内のテレフォニーと Resource Manager-Contact Manager(RmCm)の JTAPI インターフェイスに対応するプライマリおよびバックアップ Cisco BE6000 サーバを構成します。
(注) 完全な冗長性が必要でない場合は、1 台のサーバを導入しても特に機能が損なわれることはない可能性があります。
図 26 Cisco Unified Contact Center Express クラスタ
シスコ コラボレーション オンプレミス向けプリファード アーキテクチャを構成する他のコンポーネントと同じく、Unified CCX の導入ではアクティブ ノードとスタンバイ ノードを含む高可用性が必要です。Unified CCX は、組織の LDAP ディレクトリと同期された Unified CM からエンド ユーザの情報をダウンロードします。この最小構成では、外部の発信者が共通の 1 つの番号をダイヤルして組織に接続します。その後は、単純な名前によるダイヤル機能または内線番号によるダイヤル機能を使用できるので、電話オペレータが外部コールを接続する必要はありません。組織の構造とビジネス モデルによっては、Unified CCX を次のワークフロー機能で使用することもできます。
これらの自動化されたコール誘導型ワークフローは、支援を必要とする個人を組織内の適切なリソースに素早く簡単につなげることで、組織に価値をもたらします。
コンタクト センター導入環境では、エージェントおよびスーパーバイザ デスクトップとして Cisco Finesse を使用します。Cisco Finesse は Web 2.0 を使用して実装されるブラウザベースのアプリケーションであり、クライアント側インストールを必要とせず、高度なカスタマイズが可能です。さらに、Cisco Finesse は +E.164 をサポートするので、「コール制御」で説明するダイヤル プラン設計の推奨事項にも従うことになります。
Cisco Unified Contact Center Express の詳細については、最新の データ シート [英語] をご覧ください。
Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard は、一元化されたプロビジョニング インターフェイスとして、組織内のユーザ デバイスとサービスの移動、追加、変更、削除(MACD)といった管理者の日常的アクティビティを簡素化します(図 27)。
図 27 Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard
Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard をプライマリ Cisco BE6000 サーバに導入します。組織ごとに 1 つの Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard インスタンスがサポートされます。
Cisco Prime Collaboration Provisioning Standard には次の利点があります。