QoS について
常に変化するネットワーク環境では、QoS は 1 回限りの構成ではなく、ネットワーク設計の継続的で不可欠な要素であることを考慮する必要があります。
この項では、ASA で使用できる QoS 機能について説明します。
サポートされている QoS 機能
ASA は、次の QoS の機能をサポートしています。
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ポリシング:分類されたフローがネットワーク帯域幅を大量に使用するのを防ぐため、クラスごとの最大使用帯域幅を制限できます。詳細については、「ポリシング」を参照してください。
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プライオリティ キューイング:Voice over IP(VoIP)のような遅延を許されない重要なトラフィックについて、トラフィックを低遅延キューイング(LLQ)に指定することで、常に他のトラフィックより先に送信できます。プライオリティ キューイング を参照してください。
トークン バケットとは
トークン バケットは、フロー内のデータを規制するデバイス(トラフィック ポリサーなど)の管理に使用されます。トークン バケット自体には、廃棄ポリシーまたはプライオリティ ポリシーはありません。むしろ、トークン バケットは、フローによって規制機能が過剰に働く場合に、トークンを廃棄し、送信キューの管理の問題はフローに任せます。
トークン バケットは、転送レートの正式な定義です。トークン バケットには、バースト サイズ、平均レート、時間間隔という 3 つのコンポーネントがあります。平均レートは通常 1 秒間のビット数で表されますが、次のような関係によって、任意の 2 つの値を 3 番目の値から求めることができます。
平均レート = バースト サイズ / 時間間隔
これらの用語の定義は次のとおりです。
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平均レート:認定情報レート(CIR)とも呼ばれ、単位時間に送信または転送できるデータ量の平均値を指定します。
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バースト サイズ:認定バースト(Bc)サイズとも呼ばれ、スケジューリングに関する問題を発生させることなく単位時間内に送信できるトラフィックの量を、バーストあたりのバイト数で指定します。
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時間間隔:測定間隔とも呼ばれ、バーストごとの時間を秒単位で指定します。
トークン バケットのたとえで言えば、トークンは特定のレートでバケットに入れられます。バケット自体には指定された容量があります。バケットがいっぱいになると、新しく到着するトークンは廃棄されます。各トークンは、送信元が一定の数のビットをネットワークに送信するための権限です。パケットを送信するため、規制機能はパケット サイズに等しい数のトークンをバケットから削除する必要があります。
パケットを送信するための十分なトークンがバケットにない場合、パケットは、パケットが廃棄されるか、ダウン状態とマークされるまで待機します。バケットがすでにトークンで満たされている場合、着信トークンはオーバーフローし、以降のパケットには使用できません。したがって、いつでも、送信元がネットワークに送信できる最大のバーストは、バケットのサイズにほぼ比例します。
ポリシング
ポリシングは、設定した最大レート(ビット/秒単位)を超えるトラフィックが発生しないようにして、1 つのトラフィック クラスが全体のリソースを占有しないようにする方法です。トラフィックが最大レートを超えると、ASA は超過した分のトラフィックをドロップします。また、ポリシングでは、許可されるトラフィックの最大単一バーストも設定されます。
プライオリティ キューイング
LLQ プライオリティ キューイングを使用すると、特定のトラフィック フロー(音声やビデオのような遅延の影響を受けやすいトラフィックなど)をその他のトラフィックよりも優先できます。プライオリティ キューイングでは、インターフェイスで LLQ プライオリティ キューが使用されます(インターフェイスのプライオリティ キューの設定を参照してください)。一方、他のトラフィックはすべて「ベストエフォート」キューに入ります。キューは無限大ではないため、いっぱいになってオーバーフローすることがあります。キューがいっぱいになると、以降のパケットはキューに入ることができず、すべてドロップされます。これはテール ドロップと呼ばれます。キューがいっぱいになることを避けるには、キューのバッファ サイズを大きくします。送信キューに入れることのできるパケットの最大数も微調整できます。これらのオプションを使用して、プライオリティ キューイングの遅延と強固さを制御できます。LLQ キュー内のパケットは、常に、ベストエフォート キュー内のパケットよりも前に送信されます。
QoS 機能の相互作用のしくみ
ASA で必要な場合は、個々の QoS 機能を単独で設定できます。ただし、普通は、たとえば一部のトラフィックを優先させて、他のトラフィックによって帯域幅の問題が発生しないようにするために、複数の QoS 機能を ASA に設定します。次のことを設定できます。
プライオリティ キューイング(特定のトラフィックについて)+ ポリシング(その他のトラフィックについて)
同じトラフィックのセットに対して、プライオリティ キューイングとポリシングを両方設定することはできません。
DSCP(DiffServ)の保存
DSCP(DiffServ)のマーキングは、ASA を通過するすべてのトラフィックで維持されます。ASA は、分類されたトラフィックをローカルにマーク/再マークすることはありません。たとえば、すべてのパケットの完全優先転送(EF)DSCP ビットを受け取り、「プライオリティ」処理が必要かどうかを判断し、ASA にそれらのパケットを LLQ に入れさせることができます。