このドキュメントでは、統合サービス デジタル網(ISDN)のトラブルシューティングの方法について説明します。このトラブルシューティングでは、show isdn status コマンドを使用して、ISDN 基本速度インターフェイス(BRI)のレイヤ 1 が ACTIVE、レイヤ 2 の状態が MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED、サービス プロファイル識別子(SPID)が有効であることを確認します。これらの条件がすべて満たされていれば、恐らくこれは ISDN のレイヤ 1 またはレイヤ 2 の問題ではありません。さらにトラブルシューティングを行うには、「debug isdn q931 コマンドを使用した ISDN BRI レイヤ 3 のトラブルシューティング」を参照してください。このドキュメントでは、show isdn status コマンドを使用して問題を切り分ける方法を詳しく説明します。ただし、show isdn status コマンドを使用して、問題がこのドキュメントで説明する症状の 1 つであることが判明している場合は、該当するトラブルシューティングと設定リソースのセクションに直接に進むことができます。
show isdn status コマンドでは、すべての ISDN インターフェイスまたは特定の ISDN インターフェイスのステータスが表示されます。ISDN Basic Rate Interface(BRI)をトラブルシューティングする場合、ルータが電話会社の ISDN 交換機と正しく通信できるかどうかをまず判別する必要があります。これが確認されていると、ダイヤラ インターフェイス、対象トラフィック定義、PPP ネゴシエーション、認証障害など、上位レベルの問題のトラブルシューティングに進むことができます。
注:世界の一部(特にヨーロッパ)では、アクティブなコールがない場合、電話会社のISDNスイッチはレイヤ1または2を非アクティブにすることができます。したがって、アクティブなコールがない場合、show isdn status では、レイヤ 1 とレイヤ 2 がダウンであると表示されます。しかし、コールが発生すると、レイヤ 1 とレイヤ 2 が有効になります。BRI が機能しているかどうかを確認するには、BRI コール テストを実施します。コールが成功した場合は、ISDN をさらにトラブルシューティングする必要はありません。
ルータが電話会社の ISDN 交換機と通信できるようにするための BRI の設定は簡単です。
BRI インターフェイス用にスイッチ タイプを正しく設定する必要があります。電話会社に問い合せ、回線のスイッチ タイプを調べてください。
SPID の設定が必要な場合もあります。DMS-100 または NI-1 スイッチに接続する場合は、たいてい SPID を設定する必要があります。ほとんどの 5ess スイッチでは SPID は不要です。ただし、SPID を設定する必要があるか、どのように設定するかを決定する場合は、必ず電話会社に問い合せてください。SPID のフォーマットについての詳細は、『Known SPID Formats』を参照してください。
注:電話会社からSPIDが不要と通知された場合は、インターフェイスを通常どおりに設定し、isdn spid1およびisdn spid2コマンドをスキップします。
ルータが電話会社の ISDN 交換機への接続を正しく確立できる、BRI インターフェイスのサンプル設定例を次に示します。
interface BRI0 isdn switch-type basic-ni isdn spid1 51255544440101 5554444 isdn spid2 51255544450101 5554445
注:この設定には、ルータがコールを送受信できるようにするために必要なコマンドがすべて含まれているわけではありません。コール受発信のためのルータ設定についての詳細は、『ダイヤラ プロファイルを使用した ISDN DDR の設定』または『DDR ダイヤラ マップによる BRI-to-BRI ダイヤルアップの設定』を参照してください。
このドキュメントの情報は、Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.0 に基づいています。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
ここに示す show isdn status 出力は、正しく機能している BRI 回線の例です。この例では、レイヤ 1 はアクティブで、Terminal Endpoint Identifier(TEI)は正常にネゴシエートされ、ISDN レイヤ 3(エンドツーエンド)は、コールを受発信できる状態です。注意する必要がある項目は、「Show ISDN Status フィールドの説明」の表の対応する各フィールドにリンクされています。
表:Show ISDN Status フィールドの説明maui-nas-01#show isdn status The current ISDN Switchtype = basic-ni1 ISDN BRI0 interface Layer 1 Status: ACTIVE Layer 2 Status: TEI = 109, State = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED TEI = 110, State = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED Spid Status : TEI 109, ces = 1, state = 8(established) spid1 configured, spid1 sent, spid1 valid Endpoint ID Info: epsf = 0, usid = 1, tid = 1 TEI 110, ces = 2, state = 8(established) spid2 configured, spid2 sent, spid2 valid Endpoint ID Info: epsf = 0, usid = 3, tid = 1 Layer 3 Status : 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 Total Allocated ISDN CCBs = 0
フィールド | 説明 |
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スイッチタイプ | |
現在の ISDN スイッチタイプ = basic-ni1 | NI-1 は、このルータ用に設定されたスイッチ タイプです。複数のスイッチ タイプが設定されている場合は、グローバル スイッチ タイプとインターフェイス スイッチ タイプが表示されます。スイッチ タイプはサービス プロバイダーから取得する必要があります。サポートされているスイッチ タイプのリストについては、『ISDN のスイッチ タイプ、コード、および値』を参照してください。 |
レイヤ 1 のステータス | |
アクティブ | レイヤ 1 ステータス:電話会社の ISDN 交換機との物理層の接続を確認します。最も一般的な状態は、ACTIVE または DEACTIVATED です。他にも次のようなレイヤ 1 のステータスがあります。
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レイヤ 2 のステータス | |
TEI= 109,state = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED TEI = 110,state = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED | TEI 番号とマルチフレーム構成の状態に対応した ISDN レイヤ 2 のステータス。有効な TEI 番号の範囲は 64 ~ 126 です。最も頻繁に見るレイヤ 2 の状態は MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED と TEI_ASSIGNED です。state=MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED は、電話会社の ISDN 交換機へのデータ リンク接続が維持されていることを示しています。これは、通常の動作で表示される状態です。他の状態は通常、回線に問題があることを示します。state=TEI_ASSIGNED は、ルータがスイッチへの接続を失ったことを示します。アクティブなコールがないときに、電話会社がレイヤ 1 とレイヤ 2 を無効にしている場合、これは正常です(ヨーロッパでは一般的)。そうでない場合に、レイヤ 2 の問題についてさらに調べるには『トラブルシューティング:BRI レイヤ 2』に進んでください。次のような状態を含む他のすべてのレイヤ 2 の状態の詳細については、ITU Q.921 仕様の Annex B を参照してください。
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SPID ステータス | |
TEI 109, ces = 1, state = 8(established) | TEI 番号と状態。有効なダイナミックTEI割り当て範囲は64 ~ 126です。最も一般的な状態値は次のとおりです。
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spid1 configured, spid1 sent, spid1 valid | これは、動作している BRI の SPID 設定情報です。この例では、SPID は有効です。他にも次のような状態がよく見られます。
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Endpoint ID Info:epsf = 0, usid = 1, tid = 1エンドポイントID情報:epsf = 0, usid = 3, tid = 1 | コールに応答するチャネルを決定するためにルータで使用される、エンドポイント識別情報。着信 debug isdn q931 のメッセージ ENDPOINT ID は、ユーザ サービス ID(usid)と端末 ID(tid)に関連付けることができます。 詳細は、『ハント グループ内の複数の BRI に対する SPID の設定』を参照してください。 |
レイヤ 3 のステータス | |
0 Active Layer 3 Call(s) | アクティブなコールの数。 |
Activated dsl 0 CCBs = 0 | 有効なデジタル信号リンクの数。使用中のコール制御ブロックの数。 |
CCB:callid=27, callref=0, sapi=0, ces=1, B-chan=1 | アクティブなコールに関する情報。この行は、コールが接続されるまでは表示されないます。接続されているコールの場合、使用している発信者 ID 情報、コール基準値、および使用している B チャネルを表示します。 |
Number of active calls = | アクティブなコールの数。BRI の場合、この最大値は 2 です。この行は、コールが接続されるまでは表示されない可能性があります。 |
Number of available B-channels = | 使用されていない B チャネルの数。この行は、コールが接続されるまでは表示されない可能性があります。 |
Total Allocated ISDN CCBs = | 割り当てられた ISDN コール制御ブロックの数。 |
BRI レイヤ 1 と 2 がダウンしている例を次に示します。通常、BRI インターフェイスが閉じられているか、またはケーブル接続が間違っているのが、この原因です。ただし、これを正しくトラブルシューティングするには、『ISDN BRI レイヤ 1 のトラブルシューティング』を参照してください。
superchicken#show isdn status Global ISDN Switchtype = basic-ni ISDN BRI0 interface dsl 0, interface ISDN Switchtype = basic-ni Layer 1 Status: DEACTIVATED !--- Layer 1 is down. Layer 2 Status: Layer 2 NOT Activated !--- Layer 2 is down . Spid Status: TEI Not Assigned, ces = 1, state = 3(await establishment) spid1 configured, spid1 NOT sent, spid1 NOT valid TEI Not Assigned, ces = 2, state = 1(terminal down) spid2 configured, spid2 NOT sent, spid2 NOT valid Layer 3 Status: 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 The Free Channel Mask: 0x80000003 Total Allocated ISDN CCBs = 0 superchicken#
次の例は、BRI のレイヤ 1 がアップしていて、レイヤ 2 がダウンしていることを示しています。この問題の解決方法についての詳細は、『トラブルシューティング:BRI レイヤ 2』を参照してください。
superchicken#show isdn status Global ISDN Switchtype = basic-ni ISDN BRI0 interface dsl 0, interface ISDN Switchtype = basic-ni Layer 1 Status: ACTIVE !--- Layer 1 is up Layer 2 Status: Layer 2 NOT Activated !--- Layer 2 is down Spid Status: TEI Not Assigned, ces = 1, state = 3(await establishment) spid1 configured, spid1 NOT sent, spid1 NOT valid TEI Not Assigned, ces = 2, state = 1(terminal down) spid2 configured, spid2 NOT sent, spid2 NOT valid Layer 3 Status: TWAIT timer active 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 The Free Channel Mask: 0x80000003 Total Allocated ISDN CCBs = 0 superchicken#
次の例は、レイヤ 1 がアップしていて、レイヤ 2 が無効な SPID によりダウンしていることを示しています。SPID を正しく設定すると、このエラーは解決されます。詳細は、『トラブルシューティング:ISDN BRI SPID』を参照してください。
checker#show isdn status Global ISDN Switchtype = basic-ni ISDN BRI0 interface dsl 0, interface ISDN Switchtype = basic-ni !--- Interface switch type Layer 1 Status: ACTIVE !--- Layer 1 is up. Layer 2 Status: Layer 2 NOT Activated !--- Layer 2 is not up. TEI Not Assigned, ces = 1, state = 3(await establishment) spid1 configured, spid1 NOT sent, spid1 NOT valid !--- SPID was configured but not sent. TEI Not Assigned, ces = 2, state = 1(terminal down) spid2 configured, spid2 NOT sent, spid2 NOT valid Layer 3 Status: TWAIT timer active 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 The Free Channel Mask: 0x80000003 Total Allocated ISDN CCBs = 0
この出力は、BRI インターフェイス上の 1 つの SPID だけが間違って設定された例を示しています。このような場合でさえ、どちらの TEI 状態も確立されていないため、BRI 回線は動作中とはみなされません。
maui-soho-02#show isdn status Global ISDN Switchtype = basic-ni ISDN BRI0 interface dsl 0, interface ISDN Switchtype = basic-ni !--- Interface switch type Layer 1 Status: ACTIVE Layer 2 Status: TEI = 73, Ces = 2, SAPI = 0, State = TEI_ASSIGNED TEI = 104, Ces = 1, SAPI = 0, State = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED !--- Indicates the circuit is partially up. This is probably !--- a configuration issue. Spid Status: TEI 104, ces = 1, state = 6(not initialized) !--- TEI is down. spid1 configured, spid1 sent, spid1 NOT valid !--- SPID 1 is NOT configured correctly. TEI 73, ces = 2, state = 1(terminal down) !--- TEI is down. spid2 configured, spid2 sent, spid2 valid !--- SPID 2 is configured correctly. Endpoint ID Info: epsf = 0, usid = 1, tid = 1 Layer 3 Status: 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 The Free Channel Mask: 0x80000003 Total Allocated ISDN CCBs = 0
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
05-Jun-2006 |
初版 |