ATM フォーラムでは、ATM テクノロジーの使用を促進するマルチベンダー推奨事項を公開しています。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
トラフィック管理仕様バージョン 4.0 は、ユーザによってネットワークに伝送されるトラフィックと、そのトラフィックに対してネットワークが提供する必要がある Quality of Service(QoS)について記述された、5 種類の ATM サービス カテゴリを定義しています。 このサービス カテゴリは、次の 5 つです。
Variable Bit Rate non-real-time(VBR-nrt; 可変ビット レート、非リアルタイム)
Unspecified Bit Rate(UBR); 未指定ビット レート)および UBR+
この文書は VBR-nrt に焦点を合わせています。
通常、ネイティブの ATM トラフィック シェーピングを実装する場合は、Virtual Circuit(VC; 仮想回線)を VBR-nrt サービス カテゴリに割り当てます。Cisco ルータの ATM インターフェイスは、ハードウェアに固有の方法で VBR-nrt トラフィック シェーピングを実装します。
VBR-nrt トラフィック シェーピングに関連する用語は紛らわしく、意味を把握しにくい傾向があります。この文書では、VBR-nrt VC の設定時に指定する Peak Cell Rate(PCR; ピーク セルレート)、Sustained Cell Rate(SCR; 平均セルレート)、および Maximum Burst Size(MBS; 最大バースト サイズ)の各パラメータをできるだけ明確に説明します。また、Cisco ATM ルータ インターフェイスにおけるトラフィック シェーピングの実装方法について、単独のリファレンスを示します。
トラフィックシェーピングは、送信レートを制限し、設定されたレートを超えるトラフィックをキューに格納することで、送信レートを平滑化します。
つまり、ATM Virtual Circuit(VC; 仮想回線)を通じて伝送されるパケットがインターフェイスに到達すると、次のことが起こります。
キューが空の場合、到達したパケットはキューに配置されます。時間間隔ごとにトラフィック シェーパがパケットをスケジュールし、送信します。
キューがいっぱいの場合、パケットは廃棄(ドロップ)されます。デフォルトの First In First Out(FIFO)キューイング メカニズムが使用されている場合は、これをテール ドロップと呼びます。
なぜ ATM VC のレートを制御または制限する必要があるのでしょうか。考えられるいくつかの理由を次に示します。
T1、T3、および OC-3(光キャリア)リンクをより小さいチャネルに分割するため。
ある VC からのトラフィックによってインターフェイスの帯域幅全体が使用され、その結果データ損失が生じて他の VC に悪影響が及ぶことを回避するため。
任意の VC の平均レートが一定のレートを超えてはならないとポリシーが規定されている場合に、帯域幅へのアクセスを制御するため。
ローカル インターフェイスの伝送レートをリモートのターゲット インターフェイスの速度に合わせるため。たとえば、リンクの一方の端の伝送レートが 256 kbps、もう一方の端の伝送レートが 128 kbps であるとします。伝送レートの均一なエンドツーエンドのパイプがなければ、中継スイッチは低速側で一部のパケットを廃棄する場合があり、これによってリンクを使用するアプリケーションの処理が中断するおそれがあります。
トラフィック シェーピングを使用すれば、超過データがルータ内部に保持され、Weighted Random Early Detection(WRED; 重み付けランダム早期検出)や Class-Based Weighted Fair Queueing(CBWFQ)などの高度な Quality of Service(QoS)メカニズムを適用できます。 これらの QoS メカニズムによって、VC 単位のキュー内のパケットをどんな順序で処理し、キューが一定のしきい値を超えたときにどのパケットを廃棄するかが決まります。
注:ATM インターフェイスで bandwidth コマンドを使用しても、そのインターフェイスでトラフィック シェーピングは行われません。その代わりに、複合メトリックを計算してルートへの最適パスを決定するための、IGRP や EIGRP などのルーティング プロトコル アルゴリズムに使用されます。
ATM スイッチ ネットワークのプロバイダーは、トラフィック ポリシング メカニズムを実装することによってトラフィック コントラクトを施行します。Usage Parameter Control(UPC; 使用パラメータ管理)を数式に適用し、ルータによって VC 上に送信されるトラフィックが契約に準拠しているかどうかを判断します。プロバイダーは通常、User-Network Interface(UNI; ユーザネットワーク インターフェイス)と呼ばれるポイントにある、ネットワーク内の最初のスイッチにポリシングを実装します。 ATM スイッチは OSI 参照モデルのレイヤ 2 で動作するため、IP ヘッダー内のフィールドを読み取って、輻輳の発生時にどのパケットを優先するかを決定できません。ポリシングは単にセル到達時間に基づいています。
Catalyst 8500 シリーズおよび Lightstream1010 ATM スイッチ ルータでトラフィック ポリシングを設定する場合は、atm pvc コマンドに UPC パラメータの値を指定します。
atm pvc vpi vci [cast-type type] [upc upc] [pd pd] [rx-cttr index] [tx-cttr index] [wrr-weight weight]
VC 単位の UPC ポリシーは、ATM スイッチによって非準拠と判断されたセルに対して、次の 3 つのアクションのいずれかを指定します。
セルを廃棄する。
ATM ヘッダー内に Cell Loss Priority(CLP; セル廃棄優先)ビットを設定して、セルにタグ付けする。
セルを通過させる。
デフォルトでは、UPC は非準拠セルをすべて通過させます。
次に、VBR-nrt VC の UPC ポリシーによって施行される一連のルールの典型的な例を示します。
SCR 以下のレートで受信されたセルは、変更されずにネットワーク内を伝送されます。
レートが SCR を超えていても PCR を超えていないセル バーストは、バースト サイズが MBS よりも小さければ変更されずに伝送されます。
PCR を超えるレートで受信されたセルは非準拠と見なされ、タグ設定や廃棄など、設定されている UPC アクションが実行されます。
セルの MBS 数を超えるセル バーストは非準拠と見なされ、タグ設定や廃棄など、設定されている UPC アクションが実行されます。
Cisco ATM スイッチで show atm vc interface atm コマンドを使用すれば、Rx および Tx の UPC 違反の数と、その結果廃棄された数が表示されます。
switch#show atm vc interface atm 1/0/1 0 100 Interface: ATM1/0/1, Type: e1suni VPI = 0 VCI = 100 Status: UP Time-since-last-status-change: 00:09:51 Connection-type: PVC Cast-type: point-to-point Packet-discard-option: disabled Usage-Parameter-Control (UPC): drop Wrr weight: 2 Number of OAM-configured connections: 0 OAM-configuration: disabled OAM-states: Not-applicable Cross-connect-interface: ATM4/0/0, Type: oc3suni Cross-connect-VPI = 0 Cross-connect-VCI = 100 Cross-connect-UPC: drop Cross-connect OAM-configuration: disabled Cross-connect OAM-state: Not-applicable Threshold Group: 3, Cells queued: 0 Rx cells: 5317, Tx cells: 5025 Tx Clp0:5025, Tx Clp1: 0 Rx Clp0:5317, Rx Clp1: 0 Rx Upc Violations:45, Rx cell drops:45 Rx Clp0 q full drops:0, Rx Clp1 qthresh drops:0 Rx connection-traffic-table-index: 70 Rx service-category: VBR-nrt (Non-Realtime Variable Bit Rate) Rx pcr-clp01: 720 Rx scr-clp01: 320 Rx mcr-clp01: none Rx cdvt: 300 Rx mbs: 64 Tx connection-traffic-table-index: 70 Tx service-category: VBR-nrt (Non-Realtime Variable Bit Rate) Tx pcr-clp01: 720 Tx scr-clp01: 320 Tx mcr-clp01: none Tx cdvt: 300 Tx mbs: 64
従来は、ATM スイッチのみがトラフィック ポリシングを実装していました。最近、シスコの堅牢な Quality of Service(QoS)機能セットの一部として、Cisco ATM ルータ インターフェイスに CLP ビットを設定できるようになりました。これは、トラフィック ポリシングを実装するために設計されたサービス ポリシーの一環です。ルータにおけるトラフィック シェーピングとトラフィック ポリシングの違いは、前者が超過したトラフィックをキューに格納するのに対し、後者は超過したトラフィックを廃棄するか、またはパケット ヘッダーを書き換える点です。
ポリシング アクションとしてルータで CLP ビットを設定するには、set-clp-transmit コマンドを使用します。そのためには、ポリシー マップを作成してから、アクションとして set-CLP-transmit を指定した police コマンドを設定します。
7500(config)# policy-map police 7500(config-pmap)# class group2 7500(config-pmap-c)# police bps burst-normal burst-max conform-action action exceed-action action violate-action action
set-clp-transmit コマンドは、RSP プラットフォームでは Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.1(5)T から、その他のプラットフォームでは 12.2(1)T からサポートされています。
すべてのルータ インターフェイスにはポート速度があります。ポート速度は、物理インターフェイスを通じて送信および受信できる、秒当たりの最大ビット数を定義します。ポート速度は「ライン レート」とも呼ばれます。 たとえば、PA-A3-T3はレイヤ2でATMのシングルポートを、レイヤ1でDS-3を提供します。DS-3の物理ポート速度は45 mbpsに丸められます。
インターフェイスのライン レートは 53 バイトの ATM セルの数に換算されます。この数は、次の数式によって算出されます。
ライン レート / 424 ビット/セル = セル数/秒またはセル タイムスロット数/秒
たとえば、DS-1 は 1.536 Mbps で伝送されます(フレーミング オーバーヘッドがない場合)。DS-1 のライン レートである 1.536 Mbps を 424 ビット/セルで割ると、3622 セル/秒になります。次の表は、各種ライン レートのライン タイプ、Mbps、および秒当たりのセルレートを示しています。
ライン タイプ | Mbps | セルレート/秒 |
---|---|---|
STS-1 | 51.84 | 114,113.21 |
STS-3c | 155.2 | 353,207.55 |
STS-12c | 622.8 | 1,412,830.19 |
DS-1 | 1.544 | 3622.64 |
DS-3 | 44.76 | 96,000.00 |
E-1 | 2.048 | 4528.30 |
E-3 | 34.38 | 80,000.00 |
注:多くのATMスイッチは、セル/秒で帯域幅を測定しますが、Ciscoルータはビット/秒(kbpsまたはmbps)を使用します。 セル/秒とビット/秒の換算率は次のとおりです。
1 セル = 53 バイト = (53 バイト) * (8 ビット/バイト) = 424 ビット
ピーク レートと平均レートを kbps で算出するには、次の数式を使用します。
ピーク レート = Peak Cell Rate(PCR)[セル/秒] x 424 [ビット/セル]
平均レート = Sustained Cell Rate(SCR)[セル/秒] x [ビット/セル]
ATM セル時間の概念を理解しておくと役に立ちます。1 つの ATM セルがインターフェイス内の任意のポイントを通過するまでにかかる時間の長さをセル時間と呼びます。この値は次のように計算できます。
ATM セル時間 = 1 セル / ATM セルレート(セル/秒)
DS-1 リンクでの計算例を次に示します。
1セル/ 3622セル/秒= ATMセルあたり。0002760417秒
注:ミリ秒は1秒の0.001(1000)で、マイクロ秒は1秒の0.000001(100万分の1)です。ミリ秒での。0002760417の表現は。276で、マイクロ秒での表現は276.04です。このドキュメントでは、セル時間をマイクロ秒で表現します。
Cisco ATM ルータ インターフェイスはすべて、なんらかの形式のトラフィック シェーピングをサポートします。ほとんどのインターフェイスは、vbr-nrt コマンドによるネイティブの ATM トラフィック シェーピングをサポートします。
PCR 値および SCR 値を選択する際は、次の表を参考にしてください。この表は、各インターフェイス ハードウェア タイプの公式のサポート値を示しています。Cisco ATMルータインターフェイスは、ゼロからラインレートまでの範囲のkbps値をサポートしません。代わりに、数式またはインクリメントされた値のセットに従う値のセットをサポートします。また、kbps で設定される値には、ユーザ データだけでなくすべての ATM オーバーヘッドにより消費される帯域幅が含まれ、これらには 5 バイトのセル ヘッダー、セル パディング、AAL5 オーバーヘッドがあります。
PCR と SCR を同じ値に設定すると、事実上すべてのバースト用機能が削除されるため、Cisco IOS ソフトウェア リリースに、CSCdr50565 および CSCds86153 で加えられた変更が含まれている場合は、この設定で MBS にゼロ以外の値を設定することはできなくなります。
インターフェイス ハードウェア | サポートされるトラフィック シェーピング パラメータ |
---|---|
AIP |
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PA-A1 |
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PA-A3-OC3/PA-A6-OC3 |
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PA-A3-T3/E3/PA-A6-T3/E3 |
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PA-A3-OC12 |
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NP-1A-DS3 NP-1A-E3 |
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NP-1A-MM NP-1A-SM NP-1A-SM-LR |
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NM-1A-OC3 |
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NM-1A-T3 |
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NM-4T1-IMA NM-8T1-IMA |
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NM-1ATM-25 |
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AIM-ATM AIM-ATM-VOICE-30 |
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Multiflex Trunk Module(MFT; マルチフレックス トランク モジュール) |
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826、827 用 ADSL インターフェイス | VBR-nrt、UBR、および CBR、VC 単位のキューイング。詳細については、「Cisco 827 ルータでのキューイングと ATM トラフィック シェーピング」を参照してください。 |
IAD 2400 用 ADSL インターフェイス | IAD シェーパは、peak-inter-cell-delay の値は整数(1、2、3 など)のみをサポートしています。ラインレートが1536の場合、使用可能なPCRは1536、768、512、384です。これは任意の値を設定できるわけではなく、実際の値が上記と同じであることを意味します。トラフィックフローを適切に調整する。すべてのサービス カテゴリが設定可能です。 |
WIC-1ADSL |
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WIC-1SHDSL |
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OSM-2OC12-ATM-MM OSM-2OC12-ATM-SI |
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7300-2OC3ATM-MM 7300-2OC3ATM-SMI 7300-2OC3ATM-SML |
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ESR 用 4xOC3 |
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ESR 用 1xOC12 |
|
1 2600 および 3600 シリーズの ATM ネットワーク モジュールは RS8234 SAR を使用します。これは、VBR-nrt の PCR として 256 個の事前定義された値をサポートします。
2例:PCRが320に設定されている場合、シェーパーはPCR=298にフォールバックします。つまり、4つの同時音声コールをサポートするようにSCRが設定されているにもかかわらず、4番目のコールの品質が低くなります。この場合はPCRををIAD設定を448(=896/2)に変更します。
VBR-nrt サービス カテゴリは、トラフィック シェーピングの実装時に次の 3 つのパラメータを使用します。
シェーピング パラメータ | 定義 |
---|---|
SCR | データ、音声、およびビデオを伝送する平均レートを定義します。SCR は長期的な平均トラフィック レートではなく、VC の事実上の帯域幅と考えてください。 |
PCR | データ、音声、およびビデオを伝送する最大レートを定義します。PCR と MBS は帯域幅を増やす手段ではなく、遅延を減少させる手段と考えてください。 |
MBS | ルータが PCR で送信できる時間の長さを定義します。この時間(秒)は次の数式を使用して算出します。T = (バーストセルx 424ビット/セル) / (PCR - SCR)MBSは、トラフィックパターンの一時的なバーストまたは短いスパイクに対応します。たとえば、MBS が 100 セルの場合は、3 MTU サイズのイーサネット フレームまたは 1 MTU サイズの FDDI フレームのバーストが許容されます。SCR を決定する際に、より長い時間のバーストを考慮することが重要です。 |
注:NM-1A-T3、NM-1A-E3、およびNM-1A-OC3モジュールの最大MBSは200セルです。このバグCSCeb42179を参照してください。PA-A3-OC3およびPA-A3-T3/E3モジュールの最大MBSは23376セルです。このバグCSCdk37079を参照してください。
12.3(5)以降では、PCRがSCRと等しいPVCに対して、MBS値の動作が変更されました。MBSがバーストの持続時間を維持することを考慮すると、PCRがSCRと等しい場合、SCRよりも大きいPCRを設定しておらず、MBS値は使用されません。ユーザがMBSを設定できるようにするのではなく、デフォルトで1に設定されます。以前の動作では、値が無視されていても、MBSを設定できます。次の例は、PCRがSCRと同じになるように設定されているルータからの出力を示しています。
PCRがSCRと等しい場合のMBS値の例を次に示します。
Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt ? <1-6093> Peak Cell Rate(PCR) in Kbps Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1000 ? <1-1000> Sustainable Cell Rate(SCR) in Kbps Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1000 1000 ? <1-1> Maximum Burst Size(MBS) in Cells <cr>
VBR-nrt 実装は漏出バケットまたはトークン バケット アルゴリズムに従います。ATM VC はセルを伝送するために、バケット内にトークンを保持する必要があります。バケットには、アルゴリズムに基づいて SCR のレートでトークンが補充されます。発信元がアイドル状態で、一定時間伝送を行わない場合は、トークンがバケット内に蓄積されます。ATM VC では、蓄積されたトークンを使用して、バケットが空になるまで PCR のレートでバースト送信できます。バケットが空になると、再び SCR のレートでトークンが補充されます。
PCR は一時的なバーストであることを理解する必要があります。PCR で送信できる時間の長さは、「ワイヤ上の時間」に換算された MBS から算出されます。 たとえば、DS-1 リンクでのセル時間を計算する前述の数式を思い出してください。
1 セル / 3622 セル/秒 = 276.04 マイクロ秒/ATM セル
DS-1 リンクでは、MBS 値 100 は 2.8 秒の PCR 時間に相当します。VBR-nrt VC をプロビジョニングする際は、特別に時間を割いて MBS 値から PCR 時間への換算方法を理解することをお勧めします。
PCR バーストは一時的であるため、トラフィックにバースト性があり、PCR での短いバーストがそのトラフィックにとって有効な場合は、VC を VBR-nrt として設定します。そうではなく、トラフィック パターンがバルク データ転送の場合、実質的に PCR による利点はありません。これは、PCR でバーストするためには、ATM VC の伝送レートがかなり長い間 SCR よりも低くなる必要があるためです。次にいくつか例を示します。
合計12 kbpsの1500バイトのパケットを1秒ごとに1つ送信する必要があると仮定します。(この例では、ATMオーバーヘッドは無視します)。 次の仕様に基づいて VBR-nrt を設定します。
PCR = 800 kbps
SCR = 64 kbps
MBS = 32 セル
800 kbps の PCR とは、最初のパケットが 15 マイクロ秒(12 kbps パケット / 800 kbps PCR)で送信されることを意味します。 続いて、トークン バケットへの補充に 187.5 マイクロ秒(12 kbps パケット / 64 kbps SCR)かかります。次のパケットは 15 マイクロ秒で送信されます。このサンプルは、PCR バーストによって遅延がどう減少するかを具体的に示しています。PCR がなく、64 kbps の SCR のみが設定された VC では、最初のパケットと 2 番目のパケットの送信に 187.5 マイクロ秒かかります。
次に、大容量ファイルを送信する必要があると仮定します。(おそらく)最初のパケットのみが PCR で送信されます。トークンが蓄積できないため、平均転送レートは SCR でピークに達します。そのため、大容量ファイルの転送にとって VBR-nrt バースティングはほとんど利点がありません。
これらの例では、1 つの 1500 バイト パケットのサイズと正確に一致する MBS 値を使用しました。ある種のビデオ デバイスを使用する場合など、使用方法によっては最大 64 kB の大きな IP パケットが送信されることがあります。これらのパケットはリンクの MTU を簡単に超えるため、パケット全体をバーストとして送信するのが有効です。したがって、64 kb パケット / 48 ペイロード バイト/セルの数式から算出された 1334 セルを MBS として選択します。
バーストについては、公式の定義はありません。バーストは、MTU サイズのフレーム、またはトラフィック パターンによって与えられる任意のサイズのフレームに置き換えて考えることができます。このフレームは、いくつかの数のセルに分割されます。推奨事項に準拠しながら、どういうときに MBS を使用するかを改めて理解することが最良の方法です。
PCR と SCR を同じ値に設定すると、バースト計算は無視され、バースト サイズとは無関係にクレジットが 1 に設定されます。要約すると、VBR-nrt VC のトラフィック シェーピング パラメータを選択する際は、次のことが推奨されます。
SCR:このレートは、トラフィックがある一定のビットレート回線に制約され、かつユーザが遅延を関知しない場合に選択するレートにする必要があります。これを VC の実際の帯域幅と考えてください。
MBS:このセル数は、「バースト性」トラフィックに対して想定される、標準的なバースト サイズに対応できる値にします。
PCR:このレートは、「バースト性」トラフィックに関する目的の遅延を実現するため、MBS と組み合わせて求める必要があります。これは、VC の帯域幅を増やす手段ではなく、VC の遅延を短縮する手段と考えてください。
Cisco Technical Assistance Center(TAC)への最も一般的なレポートの1つは、設定されたPCRでのATMインターフェイスのバーストの確認に失敗することです。ATMインターフェイスはバーストを行いますが、これはATM VCがSCRより低い期間だけ送信された場合にのみ行われることを理解することが重要です。ATM VC が常に SCR で伝送されている場合、バースト クレジットは累積されません。
バーストを「確認」するには、ATM セル テスターを使用できる状況で、次のテスト手順に従うことを推奨します。
PCR を SCR の kbps レートの 2 倍に設定します。
セル テスターを起動します。
トラフィック ジェネレータを起動し、PCR を超えるレートで伝送を行います。
セルテスターで測定したセル間ギャップを調べます。セル テスターはセル間ギャップが小さくなったことを報告し、これはバーストが発生したことを示します。
セル テスターを停止し、トラフィック ジェネレータ上で PCR での送信を続けます。
セルテスターを再起動します。重要なのは、バーストが表示されないことです。これは、トラフィック ジェネレータによって常に PCR と SCR を超える(または SCR のみを超える)トラフィックが送信されているためです。 ATM VC の伝送レートが SCR よりも低くなっていないため、再び SCR を超えるレートで伝送が行われるほど十分なクレジットが累積されていません。
VBR-nrt VCのトラフィックシェーピング値を設定する場合は、SCRに持続的なバーストを考慮します。上記のテスト手順に示すとおり、MBS は、SCR を超える伝送が維持されている場合には役立ちません。
標準的なハブアンドスポーク ワイドエリア ネットワーク トポロジでは、トラフィック フローの量は非対称であり、リモート サイトから到達するトラフィック フローよりもリモート サイトへ向かうトラフィック フローが多くなります。このような設定では、nrt-VBR PVC の両端のルータで異なる PCR および SCR トラフィック シェーピング値を使用する、非対称の Permanent Virtual Circuit(PVC; 相手先固定接続)としてプロビジョニングするとよい場合があります。
参照ATM PVCの両方のルータエンドで同じトラフィックシェーピング値を使用する必要がありますか非対称 PVC を設定する際の指針については
ATM ルータ インターフェイスで Switched Virtual Circuit(SVC; 相手先選択接続)を設定する場合、vbr-nrt コマンドは input-pcr、input-scr、および input-mbs パラメータを受け入れます。次の例では、5 MB の出力 PCR および SCR と、2.5 MB の入力 PCR および SCR を指定します。
Router(config-subif)#svc nsap 47.00918100000000E04FACB401.00E04FACB401.00 Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1536 768 94 ? <1-1536> Input Peak Cell Rate(PCR) in Kbps <cr> Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1536 768 94 1536 768 ? <1-65535> Input Maximum Burst Size(MBS) in Cells <cr>
PVC のトラフィック パラメータを指定する際は、同じ vbr-nrt 設定文を使用しても、これらの値の設定オプションは提供されない点に注意してください。これは、PVC がシグナリングを実行しないためです。
Router(config)#int atm6/6.1 Router(config-subif)#pvc 100/100 Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1536 1536 ? <1-1> Maximum Burst Size(MBS) in Cells <cr> Router(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 1536 1536 1 ? <cr>
ルータ上でトラフィック シェーピングが正しく設定されていることを必ず確認してください。トラフィックシェーピングを使用しない場合、ルータによって送信されるセルは、ATMネットワークとのトラフィックコントラクトに準拠しません。ATM スイッチでトラフィック ポリシングが設定されていると、この非準拠状況が原因で違反や過剰なセル損失が発生します。
トラフィック シェーピング パラメータが正しく設定されていない場合、次のような症状が現れます。
遠端ロケーションへのサイズの小さい ping は成功しますが、パケット サイズが大きい ping は失敗します。
Telnet など、ある種のアプリケーションは正常に動作するように見えますが、File Transfer Protocol(FTP; ファイル転送プロトコル)など、その他のアプリケーションは動作しません。
これらの症状が発生する場合は、ATMネットワークプロバイダーに連絡して、スイッチがポリシングされているかどうか、およびVCでセル損失が発生しているかどうかを調査することをお勧めします。続いて、ルータの設定変更が必要かどうかを判断します。
トラフィックシェーピングはVCの出力を制限するため、ATMインターフェイスまたは1つ以上のVCで出力廃棄が発生する場合があります。この問題を解決する際の指針については、「トラブルシューティング:ATM ルータ インターフェイスでの出力廃棄」を参照してください。
Cisco TACへよく寄せられる質問は、show interface atmの出力に示すように、VCが設定されたSCRに到達していないにもかかわらず、出力ドロップが発生している理由です。つまり、インターフェイスのkbpsレートが設定されたSCR(PCRがSCRと等しい場合はPCR)に達しないのはなぜですか。インターフェイス レートが SCR よりも低くなる状況については、いくつかの原因が考えられます。
シェーピング エンジンが、show interface atm コマンドで表示される kbps レート中の AAL5 トレーラと ATM セル ヘッダーをカウントしていない。
シェーピング エンジンが、実際のデータ バイトとパディング(充てんされたペイロード)を区別していない。ATM セルはペイロード フィールド内に 48 バイト含まれている必要があります。ATM インターフェイスは 2 個のセルを使用して、64 バイトの IP パケットを伝送します。2 番目のセル内にある、パディング形式によって「浪費された」ペイロードは、ATM スイッチではカウントされますが、ルータでは無視されます。したがって、未使用のセル ペイロードのために、実際のビット レートが SCR に到達しない場合があります。
平均ビットレートは、デフォルトのロード間隔(5分)に基づいています。(load-interval interfaceコマンドを使用して、インターバルを30秒の最小値に調整します)。 トラフィックのバーストがSCRとPCRを短期間で超える場合があり、長期間のレートがSCRを下回っている場合でも出力がドロップされる可能性があります。
このような理由から、トラフィック シェーピングの精度を測定する際には、show interface atm 出力中のビット/秒の単位を使用することは避けてください。代わりに、SCRをパケット/秒に変換することを推奨します。パケットサイズを大きくすると、設定されたSCRに近いビットレートが生成されます。また、トラフィック シェーピングの精度を測定する際には、できるだけ ATM トラフィック アナライザを使用することをお勧めします。
非常に低いSCR値を使用するATM VCで、pingタイムアウトが発生する可能性があります。たとえば、1500バイトのパケットは、オーバーヘッドのない12,000ビット、または10 %のセルタックスがある13,200ビットと同等です。8 kbpsのSCRを設定すると、デフォルトのpingタイムアウトに一致する2秒間の送信時間が得られます。したがって、この問題を解決するには、タイムアウトを大きい値に設定する必要があります。
ATM VC で高い SCR 値を設定しているにもかかわらず、ping が失敗する場合は、さまざまなサイズで ping テストを実行し、画面に表示されるラウンドトリップ時間をモニタします。round-trip min/avg/max 値に注目してください。
1500 Byte Ping Results: Sending 5, 1500-byte ICMP Echos to 2.2.2.2, timeout is 2 seconds: !!!!! Success rate is 100 percent (5/5), round-trip min/avg/max = 420/1345/1732 ms
ATM インターフェイスが均一なペース、および均一なセル間ギャップで ATM VC のセルをスケジュールすることが望まれます。たとえば、DS-1 物理インターフェイス上で ATM VC の SCR を 500 kbps に設定した場合、VC は 3 タイムスロット(1500 kbps ライン レート / 500 kbps SCR = 3)ごとに割り当てられることが望まれます。
場合によっては、ATM ルータ インターフェイスのスケジューラは、期待されるセル間ギャップをとらずに、連続した隣接セルを伝送します。この状態は、セルクランピングと呼ばれます。この状態が発生すると、ATM スイッチは、その瞬間にルータによって伝送されている kbps レートが VC の許容されているレートを事実上超えていることを合理的に判断できます。
ATMスイッチは、セル遅延変動許容値(CDVT)と呼ばれる設定可能な値をサポートします。この値は、セルのクランピングに対して「許容係数」を実装します。つまり、少数のセルがバックツーバックで送信され、UPCペナルティの実装が遅延した場合、ルータとATM VCは許可されません。CDVT は秒で測定され、トラフィック コントラクトの明らかな違反を調整するように設計されています。