このドキュメントでは、ワイヤレス LAN(WLAN)の要素間で無線リンクを確立するときに発生するいくつかの重大な問題への対処方法について説明します。 Cisco Aironet WLAN コンポーネント間の無線周波(RF)通信に関する問題の根本的な原因として、次の 4 つが考えられます。
ファームウェアおよびドライバに関する問題
ソフトウェア設定上の問題
アンテナおよびケーブルの問題を含む RF 障害
クライアントの問題
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
無線信号の問題は、通信デバイスのファームウェアに起因する場合があります。
WLAN に無線通信の問題が発生した場合は、各コンポーネントで最新バージョンのファームウェアまたはドライバが稼働していることを確認してください。WLAN 製品では最新バージョンのドライバまたはファームウェアを使用してください。最新のドライバおよびファームウェアは、シスコ ダウンロード サイト(登録ユーザ専用)から入手できます。
ファームウェアのアップグレード手順については、次のドキュメントを参照してください。
無線通信の問題が発生した場合は、WLAN デバイスの設定が無線障害の原因になっている可能性があります。デバイスが正常に通信を行うには、特定のパラメータを正しく設定する必要があります。パラメータの設定ミスによって発生する問題が、無線に関する問題として現れます。これらのパラメータには、サービス セット識別子、周波数、データ レート、距離などがあります。
Cisco Aironet WLAN デバイスには、ワイヤレス インフラストラクチャ上の他のすべての Cisco Aironet デバイスと同じサービス セット識別子(SSID)を設定する必要があります。SSID が異なる装置同士は直接通信できません。
無線デバイスは正しい周波数を自動的に検出するように設定されています。デバイスは周波数スペクトルをスキャンして、未使用の周波数またはそのデバイスと同じ SSID を持つ送信フレームをリッスンします。周波数を Automatic に設定していない場合は、WLAN インフラストラクチャ内のすべてのデバイスに同じ周波数が設定されていることを確認してください。
データ レートは AP のカバレッジ エリアに影響を与えます。データ レートが低い(1 Mbps など)場合は、データ レートが高い場合に比べて AP のカバレッジ エリアがより遠くまで拡張される可能性があります。WLAN デバイスに異なるデータ レート(メガビット/秒単位)が設定されている場合、そのデバイスは通信できません。次に、一般的なシナリオをいくつか示します。
2 つの建物間の通信にブリッジが使用されています。一方のブリッジのデータ レートを 11 Mbps に設定し、もう一方のデータ レートを 1 Mbps に設定すると、通信は失敗します。
一組のデバイスが同じデータ レートを使用するように設定されている場合は、他の原因によってそのレートに到達できないことがあります。その結果、通信は失敗します。
一組のブリッジのうち、一方のデータ レートを 11 Mbps に設定し、もう一方を任意のデータ レートを使用するように設定すると、これらの装置は 11 Mbps で通信します。ただし、何らかの通信障害が発生してこれらの装置が低いデータ レートにフォール バックする必要がある場合、11 Mbps に設定した装置はフォール バックできず、通信は失敗します。
複数のデータ レートで通信するように WLAN デバイスを設定することをお勧めします。
ブリッジ間の無線リンクは非常に長くなることがあります。そのため、無線信号が無線間を移動するのにかかる時間を無視できなくなる可能性があります。距離パラメータは、無線プロトコルで使用されるさまざまなタイマーを調整して遅延に対処します。このパラメータはルート ブリッジでのみ入力します。リピータにはルート ブリッジから通知されます。一連のブリッジ間で最も長い無線リンクの距離をマイルではなく km で入力します。
無線信号の正常な伝送や受信を妨げる原因はさまざまです。最も一般的な問題は、無線干渉、電磁波干渉、ケーブルの問題、およびアンテナの問題です。
Cisco Aironet WLAN 機器が稼働する 2.4 GHz 帯域では、ライセンスがなくても無線機器を操作できます。そのため、他のトランスミッタが WLAN と同じ周波数を使用してブロードキャストを行う可能性があります。
スペクトル アナライザは、周波数上にアクティビティがあるかどうかを判定するのに最適なツールです。Cisco Aironet ブリッジの [Test] メニューには [Carrier Busy] テストがあり、このツールの代わりに使用できます。このテストでは、さまざまな周波数上のアクティビティの要約が表示されます。WLAN の伝送や受信に対する無線干渉の疑いがある場合は、問題となっている周波数で稼働している装置を停止し、テストを実行します。テストを実行すると、使用している周波数上のアクティビティと、装置が稼働できるその他の周波数上のアクティビティが表示されます。これによって、周波数を変更するかどうかを判断できます。
注:クライアント、アクセスポイント、またはブリッジの無線インターフェイスのエラーカウンタが高い場合は、RF干渉の影響を示します。また、アクセス ポイント(AP)またはブリッジのログに含まれるシステム メッセージによって RF 干渉を特定することもできます。出力は次のようになります。
May 13 18:57:38.208 Information Interface Dot11Radio0, Deauthenticating Station 000e.3550.fa78 Reason: Previous authentication no longer valid
May 13 18:57:38.208 Warning Packet to client 000e.3550.fa78 reached max retries, removing the client
RF 干渉が原因で CRC エラーや PLCP エラーが発生する場合があります。セル内の無線(AP、ブリッジ、またはクライアント)の数が多ければ多いほど、これらのエラーが発生する可能性は高くなります。CRC エラーおよび PLCP エラーがパフォーマンスに及ぼす影響についての説明は、『ワイヤレス ブリッジで接続が断続する問題』の「CRC および PLCP エラー」の項を参照してください。
Cisco Aironet WLAN 機器の近くで無線以外の機器が稼働していると、電磁波干渉(EMI)が発生する場合があります。 この干渉は、理論的には信号の受信や伝送に直接影響する可能性があります。しかし、EMI の影響を受ける可能性が高いのは、伝送よりもトランスミッタのコンポーネントの方です。
EMI による影響を最小限に抑えるには、EMI の発生源と考えられるものから無線機器を隔離します。機器をこのような発生源からできるだけ離れた場所に設置してください。また、WLAN 機器に調整電力を供給すると、電源回線で発生する EMI の影響が緩和されます。
Cisco Aironet WLAN デバイスにアンテナを接続するケーブルが、無線通信障害の原因になる可能性があります。
長距離通信を行うためにブリッジをセットアップする場合は、アンテナ ケーブルを必要以上に長くしないでください。ケーブルが長くなるほど伝送される信号の減衰が大きくなり、信号強度が低下し、到達範囲が狭まります。使用しているアンテナとケーブルの組み合わせに基づいて 2 つのブリッジが通信できる最長距離を計算できるツールがあります。このツールは、アンテナ計算スプレッドシート(Microsoft Excel 形式)からダウンロードできます。
他のネットワーク ケーブルと同様に、アンテナ ケーブルも正しく設置して、伝送される信号がクリアで干渉を受けないようにする必要があります。ケーブルから仕様どおりの性能を得るため、次のことは避けてください。
緩んだ接続:ケーブル両端のいずれかでコネクタが緩んでいると、電気的な接触不良が生じ、信号品質が劣化します。
損傷のあるケーブル:明らかに物理的な損傷があるアンテナ ケーブルからは、仕様どおりの性能を得られません。たとえば、ケーブル内で信号の反射が誘発される場合があります。
電源ケーブルと共有のケーブル ラン:電源ケーブルから発生する EMI が、アンテナ ケーブルの信号に影響する可能性があります。
アンテナ計算スプレッドシート(Microsoft Excel 形式)を使用して、使用しているアンテナとケーブルの組み合わせに基づいて 2 つのブリッジが通信できる最長距離を計算します。
多くの場合、特に短距離で通信する WLAN デバイスでは、ライン オブ サイト(LOS)は問題と見なされていません。無線波の伝搬特性により、全方向性のアンテナを搭載したデバイスでは、部屋から部屋へ正常に通信が行われる場合がほとんどです。建物の建築部材の密度によって、RF 信号が妥当なカバレッジを維持しながら通過できる壁の枚数が決まります。信号透過に対する部材の影響を次に示します。
紙とビニール壁は信号の透過にほとんど影響しない。
空洞のないプレキャスト コンクリート壁の場合、カバレッジの低下なしに信号が透過できる壁の枚数は 1 ~ 2 枚に限られます。
コンクリートおよびコンクリート ブロック壁の場合、信号が透過できる壁の枚数は 3 ~ 4 枚に限られます。
木製または乾式壁の場合、適切な信号透過ができる壁の枚数は 5 ~ 6 枚です。
厚い金属壁は信号を反射する。このため、信号の透過率が低くなる。
1 〜 1 1/2 インチ間隔のワイヤ メッシュのチェーン リンク フェンスには、2.4 GHz 信号をブロックする 1/2 インチ波の働きがある。
2 つのポイントをまとめて接続する場合(イーサネット ブリッジなど)は、距離、障害、およびアンテナ配置を考慮する必要があります。アンテナを室内に設置できて距離が短い(数百フィート)場合は、標準ダイポール アンテナ、または 5.2 dBi の全方向性磁気マウント アンテナ、または八木アンテナを使用できます。
1/2 マイル以上の長距離では、指向性高利得アンテナを使用します。このアンテナは、木や建物などの障害物より上のできるだけ高い所に設置する必要があります。指向性アンテナを使用する場合は、主な放射電力ローブが互いに向き合うように配置してください。ライン オブ サイト構成と八木アンテナの場合は、クリアなライン オブ サイトが維持されていれば、パラボラ アンテナを使用することによって 2.4 GHz で 25 マイルの距離まで到達できます。
注:連邦通信委員会(FCC)では、ポイントツーポイントシステムとしてのみ動作し、総電力が+36 dBm実効等方性放射電力(EIRP)を超えるシステムに対して、高利得指向性アンテナを専門的に設置する必要があります。 EIRP はレシーバに向けて伝送される皮相電力です。設置者およびエンド ユーザは、高電力システムを厳密にポイントツーポイント システムとして動作させる必要があります。
ワイヤレス リンク間の LOS がクリアな場合や、リンク間にフレネル ブロックがない場合でも、信号強度が低下することがあります。この問題にはいくつかの理由が考えられます。
考えられる理由の 1 つは、使用しているアンテナの放射パターンです。多くの場合、ゲインが高い全方向性アンテナのパターンはシャンパン グラス状です。ゲインが低い全方向性アンテナは、棒の長軸を中心にしたドーナツ状またはフリスビー状です。
これを確認するには、放射パターン図を確認します。パターン図は(すべてではありませんが)ほとんどのアンテナに付属しています。通常は 2 種類の図があります。1 つは、横から見たパターンを示す図(全方向性アンテナで重要)で、もう 1 つは上から見たパターンを示す図(指向性アンテナ、八木アンテナ、パラボラ アンテナ、および平面アンテナで重要)です。 伝送信号が受信側アンテナの上を通過する可能性は十分にあります。
デバイスが適切に接地されているかどうかを確認してください。安全面だけを考慮しても、接地は非常に重要です。避雷器は雷を止めるものではありません。避雷器は静電気を取り出し、(多くの場合)露出した要素に蓄積する空間電荷を減少させます。
また、AP と有線ネットワークとの間にファイバの切片をはさみ、電気ショックで残りのネットワークが切断されないようにすることを常にお勧めします。
同軸によじれた部分、鋭角に曲がった部分、カバーが破損した部分などがないかを確認してください。ギガを超える周波数では、ケーブルの変形した部分が信号の伝搬に大きな影響を与える可能性があります。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
19-Oct-2009 |
初版 |