このドキュメントでは、ネットワーク クロッキングに関する問題をトラブルシューティングする方法について説明します。クロッキングの問題と解決策については、多くの優れたドキュメントがあります。このドキュメントは、繰り返しの情報を述べることを意図したものではありません。代わりに、それらのドキュメントの知識を強化し、ドキュメントの詳細を示す情報を提供することを目的としています。
時分割多重(TDM)(T1/E1)インターフェイスを実装する場合、次の問題のいくつかが発生する場合があります。
このような問題の調査のために show controller t1 コマンドを使用する場合に、クロック スリップが観察されることがあります。解決法は、T1 をネットワーク クロッキングに参加させることでは必ずしもありません。実際、ネットワーク クロッキングが問題である可能性は大いにあります。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。ネットワークが稼働中の場合、各コマンドを実行する前に、それらの潜在的な影響を理解していることを確認します。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
T1 または E1 インターフェイスで受信したトラフィックは、内部でビット パターンが繰り返されるフレームと呼ばれています。各フレームは固定ビット数です。受信側デバイスは、フレームの開始と終了を決定するためにビット数をカウントしているため、フレームの終了がいつ来るかが正確にわかります。
ただし、送信側デバイスと受信側デバイスの間のタイミングが同じでないと、受信側デバイスがビット ストリームを誤ったタイミングでサンプリングし、それによって正しくない値が返される可能性があります。この状態がクロック スリップと呼ばれます。
定義では、クロック スリップとは、バッファの読み込み速度と書き込み速度の不一致により、同期データ ストリームでビット(またはビット ブロック)が重複したり欠落したりすることを指します。スリップが発生するのは、機器のバッファ ストアやその他のメカニズムが、入出力信号間のフェーズや周波数の差異に対応できないことが原因です。これが発生するのは、出力信号のタイミングが入力信号のタイミングから導出されていない場合です。
このドキュメントでは、T1 ポートを受信側デバイスとして、DSP を送信側デバイスとして考えます。
TDM 対応のシスコ ルータは、バックプレーンと他のインターフェイス上のトラフィックを通過させるために、内部発振器をクロック ソースとして使用します。TDM 対応のシスコ ルータは、第 1 世代サービス統合型ルータ(ISR G1)、第 2 世代 ISR(ISR G2)、および AS5xxx です。
Cisco IOS® ソフトウェアは簡単にクロッキングを制御できますが、これらのルータのデフォルトのクロッキング モードは実際にはフリー ランニングになっています。インターフェイスから受信されたクロック信号はルータの TDM バックプレーンには接続されず、ルータの他の部分と他のインターフェイス間での内部同期には使用されません。
各音声ネットワーク モジュール カード(たとえば NM-HDV2)には独自の PLL 回路があり、以下を提供できます。
シスコ ルータでは、マザーボードには PLL が 1 つあり、ネットワーク クロックと呼ばれます。この PLL はルータ上の TDM バックプレーンに対する内部クロックとして機能し、1 つの外部ソースに固定してクロッキングできます。
注:PLL は、1 つの外部ソースにのみ固定できます。
拡張音声カードとしての NM について考えます。NM には音声カードの電子機器だけでなく、PLL および DSP もあります。つまり、NM には独立したクロッキング ドメインとなるために、基本的に必要なものがすべて備わっています。
ネットワーク クロッキングが必要かどうかを判断するのに役立つガイドラインを、次にいくつか示します。
注:PVDM3 は ISR G2 プラットフォームを備えたマザーボードにインストールされます。したがって、クロックが同期されます。これを NM 上にある PDM2 と比較します。
モジュールおよびポートを参加させてすべての処理に対して 1 つのクロック ソースを使用することで、クロックは同期されます。これには、次のような参加と選択の両方のステップが必要です。
ネットワーク クロッキングを使用するタイミングを説明する複数のシナリオを示します。
次の場合にネットワーク クロッキングが必要です。
2 つの T1 ポートが 2 つの異なるサービス プロバイダーに接続されている 2 ポートの NM について考えてみます。2 つのクロック ソースが Stratum 1 であり、完全に同期している場合は、ネットワーク クロッキングは必要ありません。ですがこれはまれであるため、ネットワーク クロッキングはこのシナリオでは必須です。
音声対応のゲートウェイに独自の DSP を備えた NM に T1/E1 がある場合のシナリオについて考えてみます。マザーボードに DSP がない場合、またはDSP が使用されていない(つまり、DSP ファーミングが使用されているか設定されている)場合、各 NM は独自のクロッキング ドメインで動作します。このシナリオでは、ネットワーク クロッキング、network-clock-participate コマンド、network-clock-configuration コマンドのいずれも必要ありません。
1 つのルータ上の 2 つの異なる NM 上の T1 ポートが 2 つの別々のクロック ソース(2 つの異なるキャリアなど)に接続する状況を考えてください。 この状況を解決するさまざまな設定を、次に示します。
両方のモジュールにオンボード DSP がある場合:
モジュールの少なくとも 1 つにオンボード DSP があるが、オンボード DSP を必要としない場合:
両方のモジュールをネットワーク クロッキングに参加させる場合:
Miami#show running-config
!
!
Unnecessary output deleted
!
network-clock-participate slot 1
network-clock-participate slot 2
network-clock-select 1 T1 1/0
!
!
controller T1 1/0
description PSTN Trunk
framing esf
clock source line
linecode b8zs
ds0-group 1 timeslots 1-24 type e&m-wink-start
!
controller T1 2/0
description Tie Trunk to PBX
framing esf
clock source internal
linecode b8zs
ds0-group 1 timeslots 1-24 type e&m-wink-start
!
end
注:このセクションで使用されるコマンドの詳細については、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
12-Apr-2013 |
初版 |