このドキュメントでは Distributed Traffic Shaping(DTS)を説明しており、現在利用可能な情報が多数統合されています。
トラフィック シェーピング(TS)により、特定のインターフェイスでトラフィック フローを制御するメカニズムが提供されます。「分散」TS は、Cisco 7500 や 12000 シリーズ インターネット ルータのようなハイエンド プラットフォーム固有の機能です。これらのプラットフォームには、メイン プロセッサ(Route Switch Processor(RSP)または Gigabit Route Processor(GRP))から、個々のインターフェイス プロセッサ(Versatile Interface Processor(VIP)またはラインカード(LC))にトラフィック シェーピングをオフロードさせる機能があります。 分散型シスコ エクスプレス フォワーディング(dCEF)がスイッチングの推奨モードになっているネットワークでは、DTS やラインカードでの VIP がトラフィック シェーピングの論理的選択になります。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントをお読みの方には、トラフィックをシェーピングする理由がすでに存在することでしょう。分散されたパズルのピースに例えると、きわめて明確なはずです。メイン プロセッサが行う作業を個々のカード プロセッサに分散しています。シェーピングに関しては、多数のお客様は単にプロバイダーとの契約に基づく回線の保証速度を超えないようにされています。これによりクラウドでのドロップが防止され、その結果、プロバイダーがパケットを廃棄した際の TCP/IP による再送信が削減されます。トラフィックのシェーピングが必要となる一般的なシナリオを次に示します。この例では、ブランチ オフィスに 128K 回線だけがある場合、セントラル サイトでは T1 レートでトラフィックを転送する必要はありません。
DTS を使用する理由は、他にもたくさんあります。利点には、関連の Quality of Service(QoS)機能の分類、多様なタイプのトラフィックに渡って帯域幅をできるだけ効率的に使用するためのドライブが含まれます。DTS でのトラフィック シェーピングの設定は、インターフェイス レベル、サブインターフェイス レベル、または ATM やフレーム リレー相手先固定接続(PVC)の論理インターフェイス レベルで行われます。
シェーピングにより一連のネットワーク ゴールを達成し、次の基準をキーとすることが可能です。
物理または論理インターフェイスでのトラフィックすべて
簡単および拡張 IP アクセス コントロール リスト(ACL)(IP アドレス、TCP/UDP ポート、IP プレシデンス)によって分類されるトラフィック
QoS グループ(専用アクセス レート(CAR)によって内部パケット ラベルが適用されたアップストリーム、または QoS Policy Propagation(QPPB)で分類されるトラフィック)
DTS は、平均パケット サイズが 250 バイト以上で 8M のスタティック RAM(SRAM)装備の VIP2-50 以上が使用されている場合、OC-3 レートまでをサポートしながら、VIP あたり最大で 200 のシェープ キューをサポートします。 通常のトラフィック シェーピング(GTS)とは異なり、DTS では重み付け均等化キューイング(WFQ)をイネーブルにする必要はありません。その代わり、DTS はシェーピングされたキューに均等化キューイングまたは分散ファーストイン ファーストアウト(FIFO)を使用します。
次の表は、プラットフォームによって異なる TS の設定方法を示します。主に、この機能がハイエンド プラットフォームで重要であることが示されています。
12000 シリーズ | 7500 シリーズ | 7200、3600、2600、およびその他の非 VIP プラットフォーム | |
---|---|---|---|
サポートされるシェーピング メカニズム | DTS | DTS | GTS またはフレーム リレー TS |
コンフィギュレーション コマンド | ポリシーマップでの shape コマンド | ポリシーマップでの shape コマンド | メイン インターフェイスでの traffic-rate または frame-relay traffic-shaping、および FRTS - map-class コンフィギュレーション コマンドでシェーピング パラメータを指定 |
分散型シスコ エクスプレス フォワーディング(dCEF)の必要の有無 | デフォルト値は CEF です | 必要(show cef linecard コマンドにより確認) | No |
Cisco 7500 シリーズでは、フレーム リレー トラフィック シェーピング(FRTS)が非分散モードの RSP で実行されるため、現在、frame-relay traffic-shaping コマンドを使用して FRTS を設定する機能はブロックされています。dCEF と FRTS を使用すると、CEF「パント」隣接関係によりすべてのパケットが RSP で高速スイッチされますが、これは転送のパフォーマンスを最大化するのに最適とはいえません。
Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.1(5)T 以降の場合、QoS ポリシーは VIP 上で分散モードによって実行する必要があります。Route/Switch Processor(RSP)ベースの QoS はサポートされなくなりました。したがって、Cisco 7500 シリーズで VIP インターフェイスに DTS を実装するには、shape コマンドとモジュラ QoS コマンドライン インターフェイス(MQC)の他のコマンドを使用する必要があります。
Cisco 7500 シリーズ以外のプラットフォームで Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1(2)T が低遅延キューイング(LLQ)のサポートを導入する一方で、VIP での分散 LLQ(dLLQ)は 12.1(5)T で導入されました。分散型のバージョンでは、この機能のパフォーマンスが向上しました。データ リンク接続識別子(DLCI)ごとに一意のサービス ポリシーを設定できます。 マップクラスを使用しなくても、サブインターフェイスまたは DLCI に直接 service-policy コマンドを適用できます。ただし、Cisco では、マップクラス内に dLLQ を設定することを推奨します。
フレーム リレー インターフェイスに分散 FRF.12(フラグメンテーション)を適用する場合には、マップクラスを定義して、マップクラスの下でサービスポリシーを適用する必要があります。FRF.12 は Cisco IOS ソフトウェア バージョン 12.0(4)T で導入され、Cisco IOS ソフトウェア バージョン 12 1(2)T からは Cisco 805、1600、1700、2500、4500、および 4700 ルータ プラットフォームに拡大されています。詳細については、『追加プラットフォームでの FRF.12 のサポート』を参照してください。
12000 シリーズでは、高速スイッチングとプロセス スイッチングはオプションではありません。宛先プレフィックスを、着信ラインカード(LC)テーブル内の転送エントリに解決できない場合、パケットはドロップされます。隣接関係にマッチするパケットだけが、Gigabit Routing Processor(GRP;ギガビット ルート プロセッサ)にパントされます。 さらに 12000 では、LC CPU は機能用に GRP へのパケットのパントは行わず、LC から Internet Control Message Protocol(ICMP)到達不能メッセージが送信されます(no ip unreachables コマンドが設定されていない場合に限る)。 12000 では、GRP にパントされるトラフィックは、ルータのインターフェイスを宛先とするパケットまたはルータを送信元とするパケットだけです。詳細については、『12000 シリーズ インターネット ルータでは、どのような Quality of Service(QoS)機能を利用できますか』を参照してください。
VIP ベースのフレーム リレー インターフェイスに DTS を設定するには、最初の 2 つのステップを使用します(7500 シリーズ)。
dCEF を有効にするには、次のコマンドを使用します。
router(config)#ip cef distributed
分散スイッチングでフレーム リレー インターフェイスがイネーブルにされていることを確認します。
router(config-if)#interface serial 2/0/0 router(config-if)#ip route-cache distributed router#show ip interface serial 2/0/0 Serial8/0/0 is up, line protocol is up Internet address is 64.0.0.2/24 Broadcast address is 255.255.255.255 ICMP redirects are always sent ICMP unreachables are always sent ICMP mask replies are never sent IP fast switching is enabled IP fast switching on the same interface is disabled IP Flow switching is disabled IP CEF switching is enabled IP Distributed switching is enabled IP Fast switching turbo vector IP CEF switching with tag imposition turbo vector IP multicast fast switching is enabled IP multicast distributed fast switching is disabled IP route-cache flags are Fast, Distributed, CEF Router Discovery is disabled IP output packet accounting is disabled
トラフィック クラスを作成します。(必須)
トラフィックポリシーを接続し、DTSを有効にします(必須)
DTSを監視および保守します(オプション)
注:このドキュメントで使用されるコマンドの詳細については、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
Modular QoS CLI を使用して機能を有効にする最初のステップは、トラフィック クラスの作成です。
Router(config)#class-map [match-any | match-all] class-name:名前と、一致を構成する基準の一部またはすべてを指定します。
Modular QoS CLI に関する情報、およびトラフィック クラスを作成する手順は『モジュラ Quality of Service コマンドライン インターフェイス(CLI)の概要』を参照してください。
DTS をイネーブルにするには、トラフィック ポリシーを設定する必要があります。ルータに定義されたクラスの数だけ、最大で 256 までトラフィック ポリシーを設定できます。
トラフィック ポリシーを設定するには、policy-map コマンドを使用して、まずグローバル コンフィギュレーション モードでトラフィック ポリシー名を指定します。次に、class および shape コンフィギュレーション コマンドを使用して、トラフィック クラス名とトラフィック シェーピングを設定します。
Router(config)#policy-map policy-name:作成するトラフィック ポリシーの名前を指定します。
Router(config-pmap)#class class-name:トラフィック ポリシーに含まれる事前定義済みのトラフィック クラスの名前を指定します。このプロセスの前のステップで、このクラスが定義されています。
Router(config-pmap-c)#shape {average | peak} cir [bc] [be]:平均またはピークレートトラフィックシェーピングを指定します。
トラフィック ポリシーでポリシーが定義された他のどのクラスとも一致基準が合わない場合、トラフィックはトラフィック ポリシーのデフォルト クラスに誘導されます。
インターフェイス、サブインターフェイス、またはマップクラスにトラフィック ポリシーを付加して、インターフェイスで DTS をイネーブルにするには、インターフェイス(またはマップクラス)コンフィギュレーション モードで次のコマンドを使用します。
Router(config-if)#service-policy output policy-name:DTS をイネーブルにして、インターフェイスまたはマップクラスに指定のトラフィック ポリシーを付加します。
注:フレームリレーマップクラスにサービスポリシーを適用するには、dLLQおよびFRF.12のアプリケーションを強く推奨します。
フラグメンテーションに関する情報については、『Cisco 7500 シリーズでの分散型 QoS を使用したフレーム リレー トラフィック シェーピング』を参照してください。
DTS 機能をモニタおよび保守するには、EXEC モードで以下のコマンドを使用します。
Router# show interface [interface-name] shape:トラフィック シェーピングの状態を表示します。
Router# show policy policy-name:指定されたトラフィックのポリシーを構成するすべてのクラスの設定を表示します。
Router# show policy policy-name class class-name:指定したトラフィックのポリシーの指定したクラスの設定を表示します。
QoS モニタ コマンドの詳細については、『show policy-map interface 出力内のパケット カウンタについて』を参照してください。
メイン インターフェイスの DTS
この例では、インターフェイス pos1/0/0 から出力されるトラフィックが 10 Mbit/秒のレートでシェーピングされます。
router(config)#class-map class-interface-all router(config-cmap)#match any router(config-cmap)#exit router(config)#policy-map DTS-interface-all-action router(config-pmap)#class class-interface-all router(config-pmap-c)#shape average 10000000 router(config-pmap-c)#exit router(config)#interface pos1/0/0 router(config-if)#service-policy output DTS-interface-all-action
メイン インターフェイスのクラスベース DTS
次の例では、2 つのクラスが作成され、アクセス リスト番号に基づいて一致基準が定義されます。インターフェイス fd4/0/0 から送信され、アクセス リスト 10 の基準に一致するトラフィックが 16 Mbps にシェーピングされます。アクセス リスト 20 の基準に一致するトラフィックが 8 Mbps にシェーピングされます。
router(config)#access-list 10 permit 171.69.0.0 router(config)#access-list 20 permit 192.168.0.0 router(config)#class-map class1 router(config-cmap)#match access-group 10 router(config-cmap)#exit router(config)#class-map class2 router(config-cmap)#match access-group 20 router(config-cmap)#exit router(config)#policy-map DTS-interface-class-action router(config-pmap)#class class1 router(config-pmap-c)#shape average 16000000 router(config-pmap-c)#exit router(config-pmap)#class class2 router(config-pmap-c)#shape average 8000000 router(config-pmap-c)#exit router(config-pmap)#interface fd4/0/0 router(config-if)#service-policy output DTS-interface-class-action
注:この設定のIPアドレスは例だけです。
追加の設定例については、「分散型トラフィック シェーピングの設定」を参照してください。
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
フレーム リレー カプセル化が設定されている VIP インターフェイスは、インターフェイスでトラフィックを渡している間にサービス ポリシーを適用するとバス エラーでクラッシュすることがあります。この問題は Cisco IOS ソフトウェアのさまざまなバージョンで解決されています(Cisco Bug ID CSCdt88568)。 この ddts および追加のバグの詳細については、Cisco サポート ツールおよびリソース、または Bug Toolkit(登録ユーザのみ)を参照してください。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
01-Jun-2005 |
初版 |