このドキュメントでは、音声アプリケーション用に Frame Relay Traffic Shaping(FRTS; フレームリレー トラフィック シェーピング)を設定するためのガイドラインについて説明します。
音声トラフィック用の FRTS とデータ専用のトラフィック シェーピングでは(一定の音声品質を確保する必要がある場合は特に)、設定が異なります。音声品質を確保するように FRTS を設定する場合は、データ トラフィックに関してある程度の妥協が必要になります。たとえば、トラフィック シェーピングの帯域幅制限によるスループットの低下などを考慮しておく必要があります。最終的には、ユーザがデータ スループットと音声品質のどちらを優先するかを決定する必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
FRTS は、フレームリレー ネットワークのネットワーク トラフィック輻輳を管理するための便利なパラメータを提供します。FRTS は、中央サイトへの高速接続とブランチ サイトへの低速接続を使用したフレームリレー ネットワーク内のボトルネックを解消します。レート強制値を設定すると、中央サイトの Virtual Circuit(VC; 仮想回線)から送信されるデータの転送速度を制限できます。
ここでは、FRTS に関連する重要な用語について説明します。
ターム | 定義 |
---|---|
認定情報レート(CIR) | フレームリレー プロバイダーが保証するデータ転送レート(ビット/秒)。CIR 値はフレームリレー サービス プロバイダーによって設定され、ユーザがルータ上で設定します。 注:ポート/インターフェイスのアクセスレートはCIRよりも高い可能性があります。レートはTc期間の平均です。 |
Committed Burst(Bc; 認定バースト) | フレームリレー ネットワークが Committed Rate Measurement Interval(Tc; 認定レート測定間隔)の間に転送する最大の認定ビット数。 Tc = Bc / CIR。 |
Excess Burst(Be; 超過バースト) | フレームリレー スイッチが認定レート測定間隔(Tc)の間に CIR を超えて転送を試みる最大の非認定ビット数。 |
Committed Rate Measurement Interval(Tc; 認定レート測定間隔) | Bc または(Bc+ Be)ビットが転送される時間間隔。Tcは、Tc = Bc / CIRとして計算されます。Tc値は、Ciscoルータでは直接設定されません。この値は、Bc 値と CIR 値を設定すると自動的に計算されます。Tc が 125 ミリ秒を超えることはありません。 |
Backwards Explicit Congestion Notification(BECN; 逆方向明示的輻輳通知) | ネットワークの輻輳を示す、フレームリレー ヘッダー内のビット。フレームリレー スイッチは輻輳の発生を認識すると、発信元ルータ宛てのフレームに BECN ビットを設定し、発信元ルータに伝送レートを低くするよう指示します。 |
このドキュメントのシナリオ例では、次のダイアグラムで示すネットワーク トポロジを使用しています。
想定シナリオ:128 Kbps のフレームリレー回線と、CIR が 64 Kbps の PVC を使用します。ユーザは、バースト転送の最大値をポート速度(128 Kbps)に設定し、BECN を受信した場合はデータ損失を防ぐために転送速度を CIR レート(64 kbps)まで下げたいと考えています。
これはデータ PVC 用の一般的な FRTS の設定例です。
!--- Output suppressed. interface Serial1 no ip address no ip directed-broadcast encapsulation frame-relay no fair-queue frame-relay traffic-shaping ! interface Serial1.100 point-to-point ip address 1.1.1.1 255.255.255.0 no ip directed-broadcast frame-relay interface-dlci 100 class my_net ! !--- Output suppressed. ! map-class frame-relay my_net frame-relay adaptive-shaping becn frame-relay cir 128000 frame-relay bc 8000 frame-relay be 8000 frame-relay mincir 64000
frame-relay traffic-shaping:このコマンドは、インターフェイスのFRTSをイネーブルにします。DLCI にトラフィック シェーピングが適用されます。ユーザ定義パラメータは次の 2 つの方法で指定できます。
frame-relay interface-dlci 設定の下で class class_name コマンドを使用する。
シリアル インターフェイスの下で frame-relay class コマンドを使用する。
上記の例では、DLCI 設定の下で class my_net を使用しています。
class class_name:このコマンドを使用して、特定のDLCIのFRTSパラメータを設定します。my_net」というクラスが定義されています。 クラス パラメータは map-class frame-relay class_name コマンドの下で設定されています。
map-class frame-relay class_name:このコマンドを使用して、指定したクラスのFRTSパラメータを設定します。が存在していても問題ありません。DLCI ごとに異なるクラスを持つことも、複数の DLCI で 1 つのマップ クラスを共有することも可能です。
frame-relay adaptive-shaping becn:このコマンドは、BECNビットが設定されたフレームリレーフレームに応答するようにルータを設定します。PVC で受信すると、ルータはその PVC のトラフィック速度を MINCIR 値まで下げます。CIR はポート速度と同じ値に設定されているか、PVC の実際の CIR よりも高く設定されています。MINCIR 値は PVC の実際の CIR と同じ値に設定されています。
frame-relay cir bps:フレームリレー仮想回線の着信または発信認定情報レート(CIR)を指定します。
frame-relay bc bits:フレームリレー仮想回線の着信または発信Committed Burst Size(Bc;認定バーストサイズ)を指定します。
frame-relay be bits:フレームリレー仮想回線の着信または発信超過バーストサイズ(Be)を指定します。
frame-relay mincir bps:フレームリレー仮想回線の最小許容着信または発信認定情報レート(CIR)を指定します。アダプティブ シェーピングを使用する場合、トラフィック速度はこのレートまで下げられます。
音声用に FRTS を設定する場合は、音声品質が確保される代わりにデータ パフォーマンスが低下する可能性があります。ここでは、音声用に FRTS を設定する際の音声品質を高めるためのガイドラインについて説明します。
PVC の CIR を超えないようにする
ほとんどの場合、この推奨事項に従うことは困難です。これに従うと、ルータがポート速度でバースト転送を行えなくなるからです。音声品質を確保する上では大幅な遅延は許されないため、フレームリレー クラウド内のキューで待機する音声パケットの数をできる限り少なくする必要があります。プロバイダーのサービスやフレームリレー ネットワークの混み具合によっては、CIR(ルータで設定した CIR ではなく PVC の CIR)を超えるとフレームリレー ネットワーク内のキューにパケットが溜まり始めます。フレームリレー スイッチのキューに一定量のパケットが溜まって BECN が生成されたときには、すでに音声品質が低下しています。フレームリレー プロバイダーのサービスやサイト間の回線の込み具合はさまざまに異なるため、設定の効果を予測することは困難ですが、音声を転送する PVC の CIR 以下に値を維持すると、安定的に運用できることが実証されています。
一部のプロバイダーでは CIR が 0 に設定されたフレームリレー サービスを提供しています。この場合、CIR を超えなければフレーム リンク経由で音声を送信できないことは明らかです。CIR が 0 のサービスを音声用に使用することは可能ですが、その場合は CIR が 0 の PVC を経由する特定の帯域幅の遅延とジッタを最小限に抑えることを保証した Service Level Agreement(SLA; サービス レベル契約)をプロバイダーと結ぶ必要があります。
フレームリレー アダプティブ シェーピングを使用しない
フレームリレー マップ クラス内で設定した CIR が、PVC の実際の CIR と同じである場合は、BECN のためにトラフィック速度を下げる必要がありません。CIR を超えない限り、BECN は生成されません。
Tc(シェーピング間隔)が小さくなるように Bc を低く設定する(Tc = Bc/CIR)
最小の Tc 値は 10 ミリ秒です。これは音声転送に最適な値です。Tc 値が小さくなると、大きなパケットがすべてのシェーピング クレジットを使ってしまう可能性がなくなります。トラフィック シェイパは Tc 期間が完全に過ぎるまで次のフレームを送信するための新しいクレジットを作成しないため、Tc 値が大きくなるとパケットの送信間隔が長くなります。通常、Bc 値を 1000 ビットにすれば、ルータは最小の Tc 値(10 ミリ秒)を使用するようになります。この設定であればデータのスループットに影響はありません。
Be を 0 に設定する
CIR 値を超えないようにするために、Be を 0 に設定して、最初のシェーピング間隔で超過バーストが発生しないようにします。
注: 一部のお客様は、データ用と音声用に別々の PVC を使用するという適切なソリューションを採用しています。このソリューションを採用すると、データ専用 PVC ではポート速度での転送が可能になり、音声用 PVC では負荷を CIR 以下に維持することができます。フレーム プロバイダーも存在します。データPVC より音声 PVC を優先するようにフレームリレー プロバイダーに依頼してください。
想定シナリオ:128 Kbps のフレームリレー回線と、CIR が 64 Kbps の PVC を使用します。フレームリレー PVC は音声トラフィックとデータ トラフィックの転送に使用されます。
これは VoIP over Frame Relay 用のトラフィック シェーピングの一般的な設定です。
!--- Output suppressed. ! interface Serial1 no ip address no ip directed-broadcast encapsulation frame-relay frame-relay traffic-shaping ! ip address 1.1.1.1 255.255.255.0 no ip directed-broadcast frame-relay interface-dlci 100 class voice ! !--- Output suppressed. ! map-class frame-relay voice frame-relay fragment 160 no frame-relay adaptive-shaping frame-relay cir 64000 frame-relay bc 1000 frame-relay be 0 frame-relay fair-queue !
これは VoFR 用のトラフィック シェーピングの一般的な設定です。
!--- Output suppressed. ! interface Serial1 no ip address no ip directed-broadcast encapsulation frame-relay frame-relay traffic-shaping ! interface Serial1.100 point-to-point ip address 1.1.1.1 255.255.255.0 no ip directed-broadcast frame-relay interface-dlci 100 class voice vofr cisco ! !--- Output suppressed. ! map-class frame-relay voice frame-relay voice bandwidth 32000 frame-relay fragment 160 no frame-relay adaptive-shaping frame-relay cir 64000 frame-relay bc 1000 frame-relay be 0 frame-relay fair-queue !
このセクションでは、関連する FRTS コマンド(「データ専用のフレームリレー トラフィック シェーピング」のセクションで説明したもの以外)について説明します。
vofr cisco:(VoFRにのみ適用可能)このコマンドは、PVCのVoFRを有効にします。
frame-relay voice bandwidth bps :VoFRにのみ適用されます。このコマンドを使用して、特定のData Link Connection Identifier(DLCI;データリンク接続識別子)の音声トラフィックに予約される帯域幅を指定します。 このコマンドは音声トラフィックに使用する帯域幅の上限を定めます。
frame-relay fragment bytes:フレームリレーマップクラスのフレームリレーフレームのフラグメンテーションを有効にするには、このコマンドを使用します。詳細については、次のドキュメントを参照してください。音声のためのフレーム リレー フラグメンテーション.ルータ間の最低リンク速度によっては、音声用 PVC とインターフェイスを共有するすべての PVC でフラグメンテーションが必要になります(データ専用 PVC を含む)。音声用 PVC は他の PVC と物理インターフェイスを共有する場合があるため、他の PVC で大きなデータグラムが送出されると、音声用 PVC の同じ物理インターフェイスを使って送出される音声パケットに遅延が生じる場合があります。
no frame-relay adaptive-shaping:このコマンドはアダプティブシェーピングを無効にします。
frame-relay cir 64000:このコマンドを使用すると、ルータはPVC CIRと同じレートで送信されます(上記の例では、ポート速度が128Kbpsであっても64kbps)。
frame-relay bc 1000:このコマンドを使用して、小さなTcまたはシェーピング間隔を使用するようにルータを設定します。
frame-relay be 0:PVC CIRを超えないため、beを0に設定し、最初のシェーピング間隔で超過バーストが発生しないようにします。
このセクションでは、FRTS の確認とトラブルシューティングのためのガイドラインについて説明します。
show traffic-shape コマンドを使用して、現在設定されている FRTS パラメータを表示します。次の出力例は、上記の音声用 FRTS の設定に対するコマンド出力です。
ms3810-3c#sh traffic-shape Access Target Byte Sustain Excess Interval Increment Adat I/F List Rate Limit bits/int bits/int (ms) (bytes) ActeSe1.100 64000 1125 1000 8000 15 125 -
注:上の例では、[Tc Interval]は15msに設定されています。最小値は10ミリ秒です。Bc 値を低く設定しても Bc 値は 10 ミリ秒未満には設定されないので心配はありません。PVC の CIR と同じ値(64000 bps)に設定されています。
次の表で、show traffic-shape コマンド出力の値の意味について説明します。
Target Rate | フレームリレー CIR |
Byte Limit | フレームリレー Bc + フレームリレー Be(バイト単位の値) |
Sustain bits/int | フレームリレー Bc(ビット単位の設定値) |
Excess bits/int | フレームリレー Be(ビット単位の設定値) |
interval (ms) | Tc=Bc/CIR で定義される Tc と同等 |
Increment(bytes) | フレームリレー Bc(バイト単位) |
設定の確認には show frame-relay pvc コマンドも使用できます。このコマンドの出力例を示します。
ms3810-3c#sh frame pvc 100 PVC Statistics for interface Serial1 (Frame Relay DTE) DLCI = 100, DLCI USAGE = LOCAL, PVC STATUS = DELETED, INTERFACE = Serial1.100 input pkts 0 output pkts 0 in bytes 0 out bytes 0 dropped pkts 0 in FECN pkts 0 in BECN pkts 0 out FECN pkts 0 out BECN pkts 0 in DE pkts 0 out DE pkts 0 out bcast pkts 0 out bcast bytes 0 pvc create time 05:29:55, last time pvc status changed 05:29:05 Service type VoFR-cisco configured voice bandwidth 32000, used voice bandwidth 0 fragment type VoFR-cisco fragment size 160 cir 64000 bc 1000 be 8000 limit 1125 interval 15 mincir 64000 byte increment 125 BECN response no fragments 0 bytes 0 fragments delayed 0 bytes delayed shaping inactive traffic shaping drops 0 Voice Queueing Stats: 0/100/0 (size/max/dropped) Current fair queue configuration: Discard Dynamic Reserved threshold queue count queue count 64 16 2 Output queue size 0/max total 600/drops 0 ms3810-3c#
注:トラフィックシェーピングは、ユーザがインターフェイスの一部のPVCに音声トラフィックを追加するまで設定されないことがよくあります。FRTS パラメータが設定されていない PVC では、デフォルト パラメータが使用されます。次の出力には、デフォルトの FRTS パラメータが表示されています。
ms3810-3c#show traffic-shape Access Target Byte Sustain Excess Interval Increment Adat I/F List Rate Limit bits/int bits/int (ms) (bytes) Acte Se1 56000 875 56000 0 125 875 -
注:CIRのデフォルト値は56 Kbpsです。FRTS 属性を使用する PVC のスループットは 56 Kbps になります。これは、音声用 PVC とデータ用 PVC で同じインターフェイスを共有する場合に重要になります。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
02-Feb-2006 |
初版 |