このドキュメントでは、VoIP と公衆電話交換網(PSTN)間で ISDN と H.323 シグナリングがインターワークするときの、コールプログレス(経過表示)とインバンド信号に関連する問題について説明します。 Cisco VoIP ルータまたはゲートウェイが telco スイッチとシグナリング交換を行うときに難しい問題が発生することがあります。このリストで、一般的な問題のシナリオと現象を説明します。
No DTMF Digits or Audio Passed on VoIP Calls to PSTN/PBX:IP Phoneユーザがコールを発信すると、「アカウント番号を入力してください…」などのアナウンスメッセージが聞こえますが、デュアルトーン多重周波数(DTMF)ディジットはを渡できません。この現象は、VoIP トールバイパス コールおよび IP Phone から、PSTN/PBX へのコールの両方に当てはまります。
VoIP発信コール発信時にビジートーンまたはアナウンスメッセージを受信しない:Cisco IP Phone(CallManagerシナリオ)または一般電話サービス(POTS)電話(VoIPトールバイパスのシナリオ)では、PSTNネットワークからビジートーンまたはアナウンスメッセージが聞されない。この現象は、VoIP トールバイパス コールおよび IP Phone から、PSTN/PBX へのコールの両方に当てはまります。
ISDN - VoIP(H.323)コールプログレスのインバンド関連の問題の詳細は、『ISDN-VoIP(H.323)コールでリングバックトーンが聞こえない場合のトラブルシューティング』を参照してください。
「背景説明」のセクションを読んでから、「解決策」のセクションを読むことを推奨します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
インターワーキングは、2 つの異なるプロトコル スイート間におけるコール シグナリング メッセージのマッピングとして定義されます。このドキュメントでは、ISDNおよびH.323(VoIP)インターワーキングの問題に焦点を当てます。次の図は、ISDN(Q.931)と VoIP(H.225)コール レッグにおけるコール シグナリング メッセージを示しています。
注:H.225は、コールシグナリングとコールセットアップ用にH.323で指定されるプロトコルです。H.225は、Q.931の使用とサポートを規定しています。H.323の詳細については、H.323チュートリアルを参照してください 。
インバンドプログレストーン(リングバック トーンとビジートーン)とアナウンス(「おかけになった電話番号は現在使われておりません」など)は、音声コールを正常に伝えるために必要です。プログレストーンは、発信側デバイス、着信側デバイス、または中間デバイスで生成できます。
インバンド トーンとアナウンスの表示は、ISDN および H.323 ネットワークのプログレス インジケータ(PI)情報要素(IE)で制御されます。PIは、インバンドトーンとアナウンスを使用する必要があるインターワーキング状況を示します。このドキュメントでは、対象のITU Q.931 PI値を次に示します。
PI = 1:コールはエンドツーエンドISDNではありません。さらに詳細なコールプログレス情報をインバンドで入手できます。
PI = 2:宛先アドレスが非ISDNです。
PI = 3:発信元アドレスが非ISDNです。
PI = 8:インバンド情報または適切なパターンが使用可能になりました。
トーンとアナウンスが使用可能であることを示すメッセージは、PI = 1または8を含むAlerting、Call Proceeding、Progress、Connect、Setup AckまたはDisconnectメッセージによって通知されます。
PI = 3のSETUPメッセージが発信側ゲートウェイに到達すると、スイッチはインバンドメッセージが予想されることをゲートウェイに通知します。
注:メッセージにPIが含まれていない場合は、発信側デバイスが発信側に適切なトーン信号を提供していることを前提としています。
注:アナログおよびデジタルチャネル連携信号(CAS)PSTN回線は、通常、インバンド情報として情報を伝送します。
音声パス カットスルーは、ボイス コールのベアラー送信パスを確立することです。ボイス コールでは、カットスルーは 2 つの段階で発生します。
逆方向(Backward Direction;発信方向に対して逆の意)のカットスルーは、着呼側から発呼側への音声パスのみが確立していることを意味します。
両方向のカットスルーは、着呼側と発呼側の間の音声パスが確立していることを意味します。
トーンとアナウンスは、発信元スイッチまたは宛先スイッチで生成できます。トーンとアナウンスが着信側スイッチによって生成される場合、着信側スイッチから発呼者への音声伝送パス(逆方向)は、トーンとメッセージが生成される前にカットスルーされる必要があります。着呼側から発呼側にインバンドでトーンとアナウンスを転送して、音声クリッピングを回避するには、逆方向ベアラ パスの早い段階でのカットスルー(コネクト(接続)メッセージより前)が必要です。
着信側のCiscoルータ/ゲートウェイは、着信側のISDNスイッチが次のメッセージを送信するときに、逆方向の音声パスをカットスルーしてインバンド情報を送信します。
PI = 1 または PI = 8 のアラーティング(呼出)メッセージ
PI = 1 または PI = 8 のプログレス(経過表示)メッセージ
PI = 1またはPI = 8のCall Proceedingメッセージ
PI = 1 または PI = 8 のセットアップ アクノリッジ(呼設定確認)メッセージ
PI = 1 または PI = 8 のディスコネクト(切断)メッセージ
終端側 CAS インターフェイスでは、着信番号ディジットがすべて送信されると、Cisco ルータまたはゲートウェイは逆方向の音声をカットスルーします。
着信側の Cisco ルータ/ゲートウェイは、次の場合に両方向で音声パスをカットスルーします。
ISDN インターフェイスで Connect (接続)メッセージを受信したとき
CAS インターフェイスで応答監視(Answer Supervision)信号(オフフック)を受信したとき
両方向のカットスルーは、Cisco IOSグローバルコンフィギュレーションコマンドvoice rtp send-recvを使用してゲートウェイで設定できます。
Cisco IOS®ソフトウェアリリース12.1(3)XI1および12.1(5)Tでは、POTSインターフェイスとVoIPインターフェイス間のインターワーキングを改善するために、経過表示が変更されています。これは主に、プログレスインディケーショントーンの生成を定義するPI値のイネーブルおよび伝播エンドによって実現されます。
これらのコマンドの使用は、Cisco IOSソフトウェアリリース12.1(3a)XI5または12.2(1)以降を実行していることを前提としています。
詳細については、『H.323 および SIP VoIP のインターワーキング シグナリングの強化』および『Cisco IOS 音声、ビデオ、および Fax に関するコマンド リファレンス、リリース 12.2』を参照してください。
ユーザがコールを発信すると、「アカウント番号を入力してください…」などのアナウンスメッセージが再生されますが、DTMFディジットを渡すことはできません。この現象は、VoIP トールバイパス コールおよび IP Phone から、PSTN/PBX へのコールの両方に当てはまります。
IP Phone(CallManager の場合)または POTS 電話(VoIP トールバイパスの場合)コールが Cisco IOS ゲートウェイを通過し、着信側の IVR システムが ISDN プログレス(経過表示)メッセージを返信しますが、アカウント情報が入力されるまでは接続しません。デフォルトでは、音声パスは逆方向(IP Phone または発信側ゲートウェイ方向)でのカットスルーですが、終端側ゲートウェイがコネクト(接続)メッセージを受信するまで順方向にはなりません。したがって、終端側スイッチ方向に DTMF トーンまたは音声を送信する音声パスがありません。
PSTNからISDN接続メッセージを受信する前に、両方向の音声パスを確立(カットスルー)するには、Cisco IOSグローバルコンフィギュレーションコマンドvoice rtp send-recvを設定します。このコマンドの詳細については、『Cisco IOS 音声、ビデオ、および Fax に関するコマンド リファレンス、リリース 12.2』を参照してください。
IP Phone(CallManager の場合)または POTS 電話(VoIP トールバイパスの場合)において、PSTN ネットワークからのビジートーンまたはアナウンスメッセージがありません。
Cisco IOSソフトウェアのグローバル設定コマンドvoice call convert-discpi-to-progを設定します。これは、Cisco IOSソフトウェアリリース12.2(1)以降で使用されます。このコマンドは、PI を含んだ着信 ISDN ディスコネクト(切断)メッセージを、同じ PI 値を持つ H225 プログレス(経過表示)メッセージに変換します。このコマンドは、PSTN 側でアナウンスが再生されてはいるが、発呼者側でその応答が聞こえていないときに役に立ちます。
VoIPトールバイパスのシナリオでは、ルータ/ゲートウェイを12.1(3a)XI5または12.2(1)以降のCisco IOSソフトウェアリリースにアップグレードすることで、これらの問題のほとんどが解決されます。ただし、H.225/ISDN切断メッセージを受信したときに発信側デバイスまたは発信側ISDNスイッチがコールをアクティブな状態に維持しない場合は、voice call convert-discpi-to-progコマンドを発行します。
これは、インバンドのアナウンスがビジートーンの場合にも発生することがあります。それ以上に、終端側デバイス、発信側デバイス、またはネットワークによりビジー信号が提供されている必要があります。これを制御できる側面もあります。
PSTNからゲートウェイ経由でCisco CallManager IP Phone、Cisco IOSゲートウェイ、またはサードパーティのH.323デバイスへのコールで、発信側ゲートウェイでアプリケーションまたは2段階ダイヤリングを実行してもビジートーンが聞こえない場合があります。
これは、発信側ゲートウェイがデビットカードなどの音声アプリケーションを実行している場合、または2段階ダイヤリングを実行している場合に発生する可能性のある、あまり一般的ではないケースです。後者は、最初にゲートウェイに番号をダイヤルし、ダイヤルトーンを受信してから着信側にダイヤルする発信側を指します。どちらの場合でも、コールが発信側ゲートウェイで終端されると、PSTN ネットワークではコネクト(接続)されます。IP コール レグが、cause user-busy(理由表示:着ユーザビジー)でリリース(解放)しても、接続状態にあるテレフォニー セッション(PSTN)に対してはこれが示されません。
これは、IP コール レグから cause code user-busy(理由表示:着ユーザビジー)でリリース(解放)を受信した場合に、発信側ゲートウェイでビジートーンを生成させることにより解決されます。テレフォニーレッグは、発呼側またはゲートウェイによって数分後にリリースされ、通常のコールクリアの原因コードが表示されます。
この機能は、Cisco IOSソフトウェアリリース12.2(8)/12.2(8)T以降で使用できます。
注:Cisco CallManager Expressに登録されているIP Phoneからフルコンサルト転送を開始するには、IP Phoneで使用可能な回線が複数ある必要があります。ephone-dn [number]デュアルラインコマンドを設定して発行する必要があります。これにより、IP Phoneは、1つの電話番号に関連付けられた2つの回線またはチャネルを持つことができます。二重回線が設定されている通常の動作は、コールが最初のチャネルですでにアクティブで、その内線に別のコールが発信されると、発信者にはビジートーンではなく2番目のチャネルのアラートトーン(呼び出し音)が聞こえます。最初のチャネルで内線が使用中のときに発信者がビジートーンを受信するには、次の例に示すように、ephone-dnでhuntstop channelコマンドを設定し、発行する必要があります。
CMECUE(config)#ephone-dn 1 CMECUE(config-ephone-dn)#huntstop channel !--- Stops hunting on the second channel of a dual-line dn.
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
22-Aug-2006 |
初版 |