はじめに
このドキュメントでは、着信ダイヤルピアと発信ダイヤルピア、およびコールレッグの違いについて説明します。また、デフォルト以外のサービス、アプリケーション、または能力を使用してボイスコールを確立および終端する際に照合される着信ダイヤル ピアの重要性についても強調しています。
前提条件
要件
このドキュメントの読者は、『Cisco IOS® プラットフォーム上のダイヤル ピアとコール レッグについて』を理解している必要があります。
使用するコンポーネント
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、クリアな(デフォルト)設定で作業を開始しています。本稼働中のネットワークでは、各コマンドによって起こる可能性がある影響を十分確認してください。このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
表記法
表記法の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
着信ダイヤルピアと発信ダイヤルピア、および着信コールレグと発信コールレグ
ダイヤル ピアは、着信コール レッグと発信コール レッグの両方に使用されます。これらの用語は、ルータ/ゲートウェイの視点から定義されています。着信コール レッグは、ルータ/ゲートウェイにコールが着信したときに生成されます。発信コール レッグは、ルータ/ゲートウェイからコールが発信またはブリッジされたときに生成されます。
図 1.発信側ルータ/ゲートウェイから見たコールレッグ
単純な旧式の電話サービス(POTS)インターフェイスからパケット ネットワークに送出される着信コールでは、発信側のルータ/ゲートウェイによって、最初に着信 POTS ダイヤル ピアが照合され、着信コール レッグが生成されます。次に、発信側のルータ/ゲートウェイが、発信コール レッグ用の Voice over IP(VoIP)や Voice over Frame relay(VoFR)などの発信音声/ネットワーク ダイヤル ピアを作成します。その後で、ルータ/ゲートウェイが 2 つのコール レッグをブリッジします。
図 2:着信側ルータ/ゲートウェイから見たコールレッグ
音声ネットワーク インターフェイスから POTS インターフェイスに送出される着信コールでは、着信側のルータ/ゲートウェイにより、着信音声ネットワーク ダイヤル ピアが照合され、着信コール レッグを生成します。次に、発信コール レッグ用の発信 POTS ダイヤル ピアが作成されます。
着信ダイヤルピアの重要性
音声ダイヤル ピアに対するよくある誤解は、それらが発信機能専用に設定される、つまり、ダイヤル文字列をリモート ネットワーク デバイスに(Cisco IOS コマンドの destination-pattern と session target を使用して)または POTS 音声ポートに(Cisco IOS コマンドの destination-pattern と port を使用して)マッピングするためだけに設定されると考えられている点です。ただし、デフォルト以外のサービス、アプリケーション、または機能が提供されるシナリオを処理する場合は、ダイヤル ピアを着信機能用に設定する必要があります。
発信側のルータ/ゲートウェイで受信される着信 POTS コール レッグでは、着信コールのデフォルト以外のサービスとアプリケーションに次のものが含まれます。
このようなサービスまたはアプリケーションを使用する場合は、該当するサービスまたはアプリケーションを使って設定された正しい着信 POTS ダイヤル ピアが一致していることが重要です。詳細については、『IOS プラットフォーム上での着信および発信ダイヤル ピアの照合について』を参照してください。
発信側のルータ/ゲートウェイからデフォルト以外の音声ネットワーク機能または TCL アプリケーションが要求された場合は、着信側のルータ/ゲートウェイが着信音声ネットワーク ダイヤル ピアを使って設定されたそれらの機能とアプリケーションを照合する必要があります。Cisco IOS ソフトウェアがデフォルト以外の設定された着信ダイヤル ピアを照合できない場合は、内部的に定義されたデフォルトのダイヤル ピアを使用して着信音声コールが照合されます。着信コール レッグがデフォルト以外の機能、サービス、またはアプリケーションを備えており、デフォルトのダイヤル ピアに照合された場合は、コール セットアップが失敗する可能性があります。
デフォルトのボイスネットワーク能力の一例は次のとおりです。
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codec g729r8(ペイロード 20 バイト)
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vad enable
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dtmf-relay disable
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fax-relay disable
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fax rate voice
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req-qos best-effort
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acc-qos best-effort
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huntstop disabled
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preference 0
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playout-delay 40 ms
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register E.164 number with GK
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digit-strip enabled
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session protocol cisco(H.323 用)
注:デフォルトの機能は、ルータ/ゲートウェイのIOS設定出力には表示されません。POTS および音声ネットワーク ダイヤル ピアに設定された機能、サービス、およびアプリケーションを表示するには、コマンド show dial-peer voice number を発行します。
注:音声のデフォルトのDSCPはefコードポイント101110(RFC 2598)、シグナリングのデフォルトのDSCPはaf31コードポイント011010(RFC 2597)です。デフォルト ダイヤル ピア PID 0 はパケットを DSCP 0 にマークしません。ルータ上のすべての音声パケットがデフォルトで AF31 を使用したシグナリングと EF を使用したメディアにマークされます(ダイヤル ピアでオーバーライドできます)。デフォルト ダイヤル ピア 0 を照合するコールもこれと同じ動作をするはずです。
詳細と実施例については、『IOS プラットフォーム上での着信および発信ダイヤル ピアの照合について』のケース スタディを参照してください。