このドキュメントでは、Web セキュリティ アプライアンス(WSA)と Identity Services Engine(ISE)を統合する方法について説明します。ISE バージョン 1.3 では、pxGrid と呼ばれる新しい API がサポートされています。認証、暗号化、および特権(グループ)をサポートするこの新しく柔軟なプロトコルにより、他のセキュリティ ソリューションとの統合が容易になります。
WSA バージョン 8.7 では pxGrid プロトコルがサポートされており、ISE からコンテキスト識別情報を取得できます。その結果、WSA では ISE から取得される TrustSec Security Group Tag(SGT)グループに基づいてポリシーを作成できます。
Cisco ISE 構成の経験と、次のトピックに関する基本的な知識があることが推奨されます。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、クリアな(デフォルト)設定で作業を開始しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
TrustSec SGT タグは、社内ネットワークにアクセスするすべてのタイプのユーザに対し、認証サーバとして使用されている ISE により割り当てられます。これには、802.1x または ISE ゲスト ポータルで認証される有線/ワイヤレス ユーザが含まれます。また、認証に ISE を使用するリモート VPN ユーザも含まれます。
WSA では、ユーザがどのようにネットワークにアクセスしているかは重要ではありません。
この例では、ASA-VPN でセッションを終了するリモート VPN ユーザを使用します。これらのユーザには、特定の SGT タグが割り当てられています。インターネットへの HTTP トラフィックはすべて ASA-FW(ファイアウォール)によりインターセプトされ、検査のため WSA にリダイレクトされます。WSA は識別プロファイルを使用します。これにより、SGT タグに基づいてユーザを分類し、この分類に基づきアクセス ポリシーまたは復号ポリシーを作成できます。
詳細なフローは次のとおりです。
これは、TrustSec に対応して設定されている VPN ゲートウェイです。詳細な設定についてはこのドキュメントでは説明しません。次の例を参照してください。
ASA ファイアウォールは、WSA への WCCP リダイレクションを処理します。このデバイスは TrustSec を認識しません。
interface GigabitEthernet0/0
nameif outside
security-level 100
ip address 172.16.33.110 255.255.255.0
interface GigabitEthernet0/1
nameif inside
security-level 100
ip address 172.16.32.110 255.255.255.0
access-list wccp-routers extended permit ip host 172.16.32.204 any
access-list wccp-redirect extended deny tcp any host 172.16.32.204
access-list wccp-redirect extended permit tcp any any eq www
access-list wccp-redirect extended permit tcp any any eq https
wccp 90 redirect-list wccp-redirect group-list wccp-routers
wccp interface inside 90 redirect in
ISE は TrustSec 導入環境の中心となります。ネットワークにアクセスして認証するすべてのユーザに対して SGT タグが割り当てられます。ここでは基本設定に必要な手順を説明します。
[Policy] > [Results] > [Security Group Access] > [Security Groups] を選択して、SGT を作成します。
[Policy] > [Authorization] を選択し、リモート VPN アクセスのルールを作成します。ASA-VPN を介して確立されたすべての VPN 接続にはフル アクセス(PermitAccess)が付与され、SGT タグ 2(IT)が割り当てられます。
TrustSec ドメインに ASA-VPN を追加するには、プロキシ自動設定(PAC)ファイルを手動で生成する必要があります。このファイルは ASA にインポートされます。
これは [Administration] > [Network Devices] から設定できます。ASA の追加後に、TrustSec 設定まで下にスクロールし、PAC ファイルを生成します。この詳細については、別の(参照)ドキュメントで説明します。
[Administration] > [Deployment] を選択し、pxGrid ロールを有効にします。
pxGrid プロトコルは、クライアントとサーバの両方に対して証明書認証を使用します。ISE と WSA の両方に正しい証明書を設定することが非常に重要です。両方の証明書では、[Subject] に完全修飾ドメイン名(FQDN)が含まれており、クライアント認証とサーバ認証のための x509 拡張が含まれている必要があります。また、ISE と WSA の両方に対して正しい DNS A レコードが作成され、このレコードが対応する FQDN と一致することを確認してください。
両方の証明書が異なる認証局(CA)により署名される場合は、これらの CA を信頼できるストアに格納することが重要です。
証明書を設定するには、[Administration] > [Certificates] を選択します。
ISE は、各ロールの証明書署名要求(CSR)を生成できます。pxGrid ロールの場合、CSR をエクスポートし、外部 CA により署名します。
この例では、Microsoft CA が次のテンプレートに使用されています。
最終的な結果は次のようになります。
ise14.example.com と pxgrid.example.com の DNS A レコード(172.16.31.202. をポイントする)を必ず作成してください。
デフォルトの場合、ISE は pxGrid サブスクライバを自動的に登録しません。管理者がこれを手動で承認する必要があります。WSA 統合のためにその設定を変更する必要があります。
[Administration] > [pxGrid Services] を選択し、[Enable Auto-Registration] を設定します。
この例では、WSA で、管理インターフェイス、トランスペアレント モード、および ASA からのリダイレクションだけが設定されています。
WSA は、すべての証明書を署名するため CA を信頼する必要があります。[Network] > [Certificate Management] を選択し、CA 証明書を追加します。
また、WSA が pxGrid の認証に使用する証明書を生成する必要もあります。[Network] > [Identity Services Engine] > [WSA Client certificate] を選択し、CSR を生成し、正しい CA テンプレート(ISE-pxgrid)を使用して CSR に署名し、再びインポートします。
また「ISE Admin Certificate」と「ISE pxGrid Certificate」では、CA 証明書をインポートします(ISE により提示される pxGrid 証明書を信頼するため)。
[Network] > [Identity Services Engine] を選択し、ISE への接続をテストします。
[Web Security Manager] > [Identification profiles] を選択して、ISE の新しいプロファイルを追加します。[Identification and Authentication] には [Transparently identify users with ISE] を使用します。
[Web Security Manager] > [Access Policies] を選択して、新しいポリシーを追加します。メンバーシップには ISE プロファイルが使用されます。
[Selected Groups and Users] で、SGT タグ 2(IT)が追加されます。
このポリシーは、SGT IT に属するユーザに対し、すべてのスポーツ サイトへのアクセスを拒否します。
ここでは、設定が正常に機能しているかどうかを確認します。
VPN ユーザが ASA-VPN への VPN セッションを開始します。
ASA-VPN は認証に ISE を使用します。ISE がセッションを作成し、SGT タグ 2(IT)を割り当てます。
認証に成功すると、ASA-VPN が(cisco-av-pair の Radius Access-Accept で返される)SGT タグ 2 を使用して VPN セッションを作成します。
asa-vpn# show vpn-sessiondb anyconnect
Session Type: AnyConnect
Username : cisco Index : 2
Assigned IP : 172.16.32.50 Public IP : 192.168.10.67
Protocol : AnyConnect-Parent SSL-Tunnel DTLS-Tunnel
License : AnyConnect Essentials
Encryption : AnyConnect-Parent: (1)none SSL-Tunnel: (1)RC4 DTLS-Tunnel: (1)AES128
Hashing : AnyConnect-Parent: (1)none SSL-Tunnel: (1)SHA1 DTLS-Tunnel: (1)SHA1
Bytes Tx : 12979961 Bytes Rx : 1866781
Group Policy : POLICY Tunnel Group : SSLVPN
Login Time : 21:13:26 UTC Tue May 5 2015
Duration : 6h:08m:03s
Inactivity : 0h:00m:00s
VLAN Mapping : N/A VLAN : none
Audt Sess ID : ac1020640000200055493276
Security Grp : 2:IT
ASA-VPN と ASA-FW 間のリンクは TrustSec に対応していないため、ASA-VPN からそのトラフィックのタグなしフレームが送信されます(この場合 CMD/TrustSec フィールドがインジェクトされたイーサネット フレームを GRE によりカプセル化することができません)。
この段階で、WSA は IP アドレス、ユーザ名、および SGT の間のマッピングを(pxGrid プロトコルを使用して)受信しているはずです。
VPN ユーザが sport.pl への接続を開始し、これが ASA-FW によりインターセプトされます。
asa-fw# show wccp
Global WCCP information:
Router information:
Router Identifier: 172.16.33.110
Protocol Version: 2.0
Service Identifier: 90
Number of Cache Engines: 1
Number of routers: 1
Total Packets Redirected: 562
Redirect access-list: wccp-redirect
Total Connections Denied Redirect: 0
Total Packets Unassigned: 0
Group access-list: wccp-routers
Total Messages Denied to Group: 0
Total Authentication failures: 0
Total Bypassed Packets Received: 0
asa-fw# show access-list wccp-redirect
access-list wccp-redirect; 3 elements; name hash: 0x9bab8633
access-list wccp-redirect line 1 extended deny tcp any host 172.16.32.204 (hitcnt=0)
0xfd875b28
access-list wccp-redirect line 2 extended permit tcp any any eq www (hitcnt=562)
0x028ab2b9
access-list wccp-redirect line 3 extended permit tcp any any eq https (hitcnt=0)
0xe202a11e
また、GRE で WSA へトンネリングされます(WCCP ルータ ID が、設定されている最も大きい IP アドレスであることに注意してください)。
asa-fw# show capture
capture CAP type raw-data interface inside [Capturing - 70065 bytes]
match gre any any
asa-fw# show capture CAP
525 packets captured
1: 03:21:45.035657 172.16.33.110 > 172.16.32.204: ip-proto-47, length 60
2: 03:21:45.038709 172.16.33.110 > 172.16.32.204: ip-proto-47, length 48
3: 03:21:45.039960 172.16.33.110 > 172.16.32.204: ip-proto-47, length 640
WSA は TCP ハンドシェイクを続行し、GET 要求を処理します。結果として、PolicyForIT という名前のポリシーに一致し、トラフィックがブロックされます。
これは、WSA Report により確認されます。
ISE がユーザ名を表示していることに注意してください。
ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。
WSA が正しく初期化されていない場合(証明書)、ISE 接続で障害が発生しているかどうかを確認するためのテストを行います。
ISE pxgrid-cm.log レポート
[2015-05-06T16:26:51Z] [INFO ] [cm-1.jabber-172-16-31-202]
[TCPSocketStream::_doSSLHandshake] [] Failure performing SSL handshake: 1
障害の原因は、Wireshark で確認できます。
(pxGrid により使用される)Extensible Messaging and Presence Protocol(XMPP)交換を保護するために使用される SSL セッションで、サーバが提示する不明な証明書チェーンが原因で、クライアントから SSL エラーが報告されます。
正しいシナリオについては、ISE pxgrid-controller.log に次のように記録されています。
2015-05-06 18:40:09,153 INFO [Thread-7][] cisco.pxgrid.controller.sasl.SaslWatcher
-:::::- Handling authentication for user name wsa.example.com-test_client
また、正しい機能を備えたサブスクライバとして WSA が ISE GUI に示されます。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
30-Jul-2015 |
初版 |