このドキュメントでは、Cisco® ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータのクラッシュをトラブルシューティングする方法について説明します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
1002、1004、1006 を含むすべての Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータ。
Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータをサポートするすべての Cisco IOS XE ソフトウェア バージョン。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータには、ソフトウェア アーキテクチャとして Cisco IOS XE ソフトウェアが導入されています。Cisco IOS XE ソフトウェアは、Cisco IOS ソフトウェアに基づいて、ルート プロセッサ(RP)、Embedded Services Processor(ESP)、または SPA インターフェイス プロセッサ(SIP)の Linux カーネル上に構築されたモジュラ オペレーティング システムです。 IOS デーモン(IOSD)および他の IOS XE プロセスは Linux カーネルで実行されるため、Cisco ASR 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータには表 1 に示すさまざまなタイプのクラッシュがあります。
表 1 - クラッシュのタイプ
クラッシュのタイプ | モジュール | 説明 |
---|---|---|
IOSD のクラッシュ | RP | Cisco IOS ソフトウェアは、RP 上の Linux カーネルで IOSD として動作します。 |
SPA ドライバのクラッシュ | SIP | 限られた Cisco IOS ソフトウェアが、SIP 上で SPA を制御するために稼働します。 |
Cisco IOS XE プロセスのクラッシュ | RP ESP SIP | いくつかの Cisco IOS XE プロセスは Linux カーネルで動作します。たとえば、シャーシ マネージャ、フォワーディング マネージャ、インターフェイス マネージャなどが RP で実行されます。 |
Cisco Quantum Flow Processor(QFP)のマイクロコードのクラッシュ | ESP | マイクロコードは QFP で実行されます。QFP は ESP 上のパケット転送 ASIC です。 |
Linux カーネルのクラッシュ | RP ESP SIP | Linux カーネルは、RP、ESP、SIP で動作します。 |
モジュールの予期しないリロードが発生した場合、コンソール出力、crashinfo ファイルのディレクトリ、およびコア ダンプ ファイルディレクトリをトラブルシューティングに使用できることを確認する必要があります。原因を特定するための最初のステップは、その問題について可能な限り多くの情報を収集することです。問題の原因を特定するには、次のような情報が必要です。
コンソール ログ(詳細は、『コンソール接続用ターミナル エミュレータの正しい設定』を参照してください)。
syslog 情報:syslog サーバにログを送信するようにルータが設定されている場合は、発生している事象に関する情報を入手できます。詳細は、「Syslog に関するシスコ デバイスの設定方法」を参照してください。
show platform:show platform コマンドは、RP、ESP、SPA および電源の状態を表示します。
show tech-support:show tech-supportコマンドは、show versionおよびshow running-configを含む複数のコマンドを1つにまとめたものです。通常、ルータで問題が発生したときには、ハードウェアの問題をトラブルシューティングするために、Cisco Technical Assistance Center(TAC)のエンジニアにこの情報を提供するように求められます。リロードまたは電源のオン/オフを行うと、問題に関する情報が失われることがあるため、事前に show tech-support の情報を収集する必要があります。
注:show tech-supportコマンドには、show platformコマンドやshow loggingコマンドは含まれていません。
ブート シーケンス情報:ルータでブート エラーが発生しているかどうかを示す完全なブートアップ シーケンスです。
crashinfo ファイル(存在する場合):「crashinfo ファイル」セクションを参照してください。
コア ダンプ ファイル(存在する場合):「コア ダンプ ファイル」セクションを参照してください。
Tracelogファイル(入手可能な場合):Cisco ASR 1000シリーズアグリゲーションサービスルータでは、Cisco IOS XEプロセスのトレースログがharddisk:tracelogs(ASR 1006またはASR 1004)またはbootflash:tracelogs(ASR 1002)。Cisco IOS XE がクラッシュを処理すると、Cisco TAC エンジニアは通常は問題をトラブルシュートするために、この情報を収集するように要求します。
IOSD または SPA ドライバがクラッシュすると、表 2 に示されている場所に crashinfo ファイルが生成されます。
表 2 - crashinfo ファイルの場所
モデル | クラッシュのタイプ | crashinfo ファイルの場所 |
---|---|---|
ASR 1002 | IOSD のクラッシュ、SPA ドライバのクラッシュ | bootflash:RP 上 |
ASR 1004、ASR 1006 | IOSD のクラッシュ | bootflash:RP 上 |
SPA ドライバのクラッシュ | harddisk:RP 上 |
表 3 - crashinfo ファイル名
クラッシュのタイプ | crashinfo ファイル名 | 例 |
---|---|---|
IOSD のクラッシュ | crashinfo_RP_SlotNumber_00_Date-Time-Zone | crashinfo_RP_00_00_20080807-063430-UTC |
SPA ドライバのクラッシュ | crashinfo_SIP_SlotNumber_00_Date-Time-Zone | crashinfo_SIP_00_00_20080828-084907-UTC |
プロセスがクラッシュすると、表4に示す場所にコアダンプファイルが見つかります。コアダンプは、プロセスのメモリイメージの完全なコピーです。トラブルシューティングが完了するまでコア ダンプ ファイルを保存しておくことをお勧めします。これは、コア ダンプにはクラッシュの問題に関する情報が crashinfo ファイルよりも多く含まれており、詳しく調査するために必要であるためです。Cisco ASR 1002 ルータの場合は、harddisk: デバイスがないため、デバイスでは、bootflash:core/の下にコアダンプファイルが生成されます。
表 4 - コア ダンプ ファイルの場所
モデル | コア ダンプ ファイルの場所 |
---|---|
ASR 1002 | bootflash:core/on RP |
ASR 1004、ASR 1006 | harddisk:core/on RP |
RP のコア ダンプだけでなく ESP または SIP プロセスのコア ダンプも同じ場所で生成されます。Cisco ASR 1006 ルータの場合は、問題が発生したときに動作中 であった RP であるため、スタンバイ RP の同じ場所を確認する必要があります。
表 5 - コア ダンプのファイル名
クラッシュのタイプ | コア ダンプのファイル名 | 例 |
---|---|---|
IOSD のクラッシュ | hostname_RP_SlotNumber_ppc_linux_iosd-_ProcessID.core.gz | Router_RP_0_ppc_linux_iosd-_17407.core.gz |
SPA ドライバのクラッシュ | hostname_SIP_SlotNumber_mcpcc-lc-ms_ProcessID.core.gz | Router_SIP_1_mcpcc-lc-ms_6098.core.gz |
IOS XE プロセスのクラッシュ | hostname_FRU_SlotNumber_ProcessName_ProcessID.core.gz | Router_RP_0_fman_rp_28778.core.gz Router_ESP_1_cpp_cp_svr_4497.core.gz |
Cisco QFP のクラッシュ | hostname_ESP_SlotNumber_cpp-mcplo-ucode_ID.core.gz | Router_ESP_0_cpp-mcplo-ucode_042308082102.core.gz |
Linux カーネルのクラッシュ | hostname_FRU_SlotNumber_kernel.core | Router_ESP_0_kernel.core |
IOS デーモン(IOSD)は、RP 上の独自の Linux プロセス(ppc_linux_iosd-)として機能します。デュアル IOS モード(Cisco ASR 1002 ルータおよび Cisco ASR 1004 ルータ)では、2 台の IOSD は RP で実行されます。
IOSD のクラッシュを識別するには、コンソールで以下の例外の出力を見つけます。デュアル IOS モードではない、Cisco ASR 1002 ルータまたは Cisco ASR 1004 ルータのクラッシュの場合は、ボックスがリロードされます。デュアル IOS モードの Cisco ASR 1002 ルータまたは Cisco ASR 1004 ルータのクラッシュの場合は、RP で IOSD がスイッチ オーバーされます。Cisco ASR 1006 ルータのクラッシュの場合は、RP がスイッチ オーバーされ、新しいスタンバイ RP がリロードされます。
Exception to IOS Thread: Frame pointer 2C111978, PC = 1029ED60 ASR1000-EXT-SIGNAL: U_SIGSEGV(11), Process = Exec -Traceback= 1#106b90f504fce8544ce4979667ec2d5d :10000000+29ED60 :10000000+29ECB4 :10000000+2A1A9C :10000000+2A1DAC :10000000+492438 :10000000+1C22DC0 :10000000+4BBBE0 Fastpath Thread backtrace: -Traceback= 1#106b90f504fce8544ce4979667ec2d5d c:BC16000+C2AF0 c:BC16000+C2AD0 iosd_unix:BD73000+111DC pthread:BA1B000+5DA0 Auxiliary Thread backtrace: -Traceback= 1#106b90f504fce8544ce4979667ec2d5d pthread:BA1B000+95E4 pthread:BA1B000+95C8 c:BC16000+D7294 iosd_unix:BD73000+1A83C pthread:BA1B000+5DA0 PC = 0x1029ED60 LR = 0x1029ECB4 MSR = 0x0002D000 CTR = 0x0BD83C2C XER = 0x20000000 R0 = 0x00000000 R1 = 0x2C111978 R2 = 0x2C057890 R3 = 0x00000034 R4 = 0x000000B4 R5 = 0x0000003C R6 = 0x2C111700 R7 = 0x00000000 R8 = 0x12B04780 R9 = 0x00000000 R10 = 0x2C05048C R11 = 0x00000050 R12 = 0x22442082 R13 = 0x13B189AC R14 = 0x00000000 R15 = 0x00000000 R16 = 0x00000000 R17 = 0x00000001 R18 = 0x00000000 R19 = 0x00000000 R20 = 0x00000000 R21 = 0x00000000 R22 = 0x00000000 R23 = 0x00000001 R24 = 0x00000001 R25 = 0x34409AD4 R26 = 0x00000000 R27 = 0x2CE88448 R28 = 0x00000001 R29 = 0x00000000 R30 = 0x3467A0FC R31 = 0x2C1119B8 Writing crashinfo to bootflash:crashinfo_RP_00_00_20080904-092940-UTC Buffered messages: (last 4096 bytes only) ...
IOSD がクラッシュした場合、crashinfo ファイルおよびコア ダンプ ファイルは RP に生成されます。
Router#dir bootflash: Directory of bootflash: bootflash:crashinfo_RP_00_00_20080904-092940-UTC Router#dir harddisk:core Directory of harddisk:core/ 3620877 -rw- 10632280 Sep 4 2008 09:31:00 +00:00 Router_RP_0_ppc_linux_iosd-_17407.core.gz
SPA ドライバは SPA を制御するため IOS 機能が限られており、mcpcc-lc-ms プロセスおよびいずれかの Cisco IOS XE プロセスのために SIP で実行されます。mcpcc-lc-ms プロセスがダウンしていることで SPA ドライバのクラッシュを判別できます。SPA ドライバがクラッシュした後、SPA がリロードされます。
Aug 28 08:52:12.418: %PMAN-3-PROCHOLDDOWN: SIP0: pman.sh: The process mcpcc-lc-ms has been helddown (rc 142) Aug 28 08:52:12.425: %ASR1000_OIR-6-REMSPA: SPA removed from subslot 0/0, interfaces disabled Aug 28 08:52:12.427: %SPA_OIR-6-OFFLINECARD: SPA (SPA-1X10GE-L-V2) offline in subslot 0/0 Aug 28 08:52:13.131: %ASR1000_OIR-6-INSSPA: SPA inserted in subslot 0/0 Aug 28 08:52:19.060: %LINK-3-UPDOWN: SIP0/0: Interface EOBC0/1, changed state to up Aug 28 08:52:20.064: %SPA_OIR-6-ONLINECARD: SPA (SPA-1X10GE-L-V2) online in subslot 0/0
SPA ドライバがクラッシュした場合、crashinfo ファイルおよびコア ダンプ ファイルは RP に生成されます。
Router#dir harddisk: Directory of harddisk:/ 14 -rw- 224579 Aug 28 2008 08:52:06 +00:00 crashinfo_SIP_00_00_20080828-085206-UTC Router#dir harddisk:core Directory of harddisk:/core/ 4653060 -rw- 1389762 Aug 28 2008 08:52:12 +00:00 Router_SIP_0_mcpcc-lc-ms_6985.core.gz
Cisco IOS XE プロセスは、RP、ESP、SIP の Linux カーネルで動作します。表 6 に、主なプロセスを示します。クラッシュが発生すると、モジュールがリロードされます。
表 6 - 主な Cisco IOS XE プロセス
タイトル | プロセス名 | モジュール |
---|---|---|
Chassis Manager | cmand | RP |
cman_fp | ESP | |
cmcc | SIP | |
環境モニタリング | emd | RP、ESP、SIP |
Forwarding Manager | fman_rp | RP |
fman_fp_image | ESP | |
Host Manager | hman | RP、ESP、SIP |
インターフェイス マネージャ | imand | RP |
imccd | SIP | |
Logging Manager | plogd | RP、ESP、SIP |
Pluggable Service | psd | RP |
QFP Client Control Process | cpp_cr_svr | ESP |
QFP Driver Process | cpp_driver | ESP |
QFP HA Server | cpp_ha_top_level_server | ESP |
QFP Client Service Process | cpp_sp_server | ESP |
Shell Manager | smand | RP |
cpp_cp_svr プロセスが Cisco ASR 1006 ルータの ESP 上でクラッシュした場合、以下のメッセージがコンソール上に表示されます。
Jan 24 23:37:06.644 JST: %PMAN-3-PROCHOLDDOWN: F0: pman.sh: The process cpp_cp_svr has been helddown (rc 134) Jan 24 23:37:06.727 JST: %PMAN-0-PROCFAILCRIT: F0: pvp.sh: A critical processcpp_cp_svr has failed (rc 134) Jan 24 23:37:11.539 JST: %ASR1000_OIR-6-OFFLINECARD: Card (fp) offline in slot F0
コアダンプファイルはharddisk:core/にあります。
Router#dir harddisk:core Directory of harddisk:/core/ 1032194 -rw- 38255956 Jan 24 2009 23:37:06 +09:00 Router_ESP_0_cpp_cp_svr_4714.core.gz
プロセスの tracelog に有用な出力が含まれていることがあります。
Router#dir harddisk:tracelogs/cpp_cp* Directory of harddisk:tracelogs/ 4456753 -rwx 24868 Jan 24 2009 23:37:15 +09:00 cpp_cp_F0-0.log.4714.20090124233714
Cisco Quantum Flow Processor は、ハードウェアとソフトウェアの両方を包括するアーキテクチャとして設計されました。第一世代は、2 個のシリコン チップに分かれています。今後の世代は、ここで説明する同じソフトウェア アーキテクチャに基づく、シングル チップ ソリューションになる可能性があります。「Cisco Quantum Flow Processor」という呼称自体が、ネットワーク プロセッサのハードウェアおよびソフトウェアを包括するアーキテクチャを表しています。
QFP の ucode がクラッシュすると、ESP がリロードされます。QFP の ucode のクラッシュを識別するには、コンソールまたは cpp-mcplo-ucode のコア ダンプ ファイルで次の出力を見つけます。
Dec 17 05:50:26.417 JST: %IOSXE-3-PLATFORM: F0: cpp_cdm: CPP crashed, core file /tmp/corelink/ Router_ESP_0_cpp-mcplo-ucode_121708055026.core.gz Dec 17 05:50:28.206 JST: %ASR1000_OIR-6-OFFLINECARD: Card (fp) offline in slot F0
コア ダンプ ファイルは次の操作で見つけることができます。
Router#dir harddisk:core Directory of harddisk:core/ 3719171 -rw- 1572864 Dec 17 2008 05:50:31 +09:00 Router_ESP_0_cpp-mcplo-ucode_121708055026.core.gz
Cisco ASR 1000 シリーズでは、Linux カーネルは、RP、ESP、および SIP で動作します。Linux カーネルがクラッシュすると、モジュールはクラッシュ出力なしでリロードされます。再起動の後で、Linux カーネルのコア ダンプ ファイルが見つかることによって Linux カーネルのクラッシュを識別できます。カーネル コア ファイルのサイズは 100MByte を超える場合があります。
Router#dir harddisk:core Directory of harddisk:/core/ 393230 ---- 137389415 Dec 19 2008 01:19:40 +09:00 Router_RP_0_kernel_20081218161940.core
上記の手順を実行した後も、依然としてサポートが必要で、Cisco TAC でサービス リクエストをオープンする必要がある場合は、ルータのクラッシュをトラブルシュートするために必ず次の情報を添付してください。 |
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注:問題の根本原因を特定するために必要な重要な情報が失われる可能性があるため、ルータのクラッシュのトラブルシューティングが必要でない限り、この情報を収集する前に手動でルータをリロードまたは電源のオフ/オンを行わないでください。 |
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
17-Mar-2009 |
初版 |