この文書では、Point-to-Point Protocol over Ethernet(PPPoE)および digital subscriber line(DSL; デジタル加入者回線)環境向けの quality of service(QOS)オプションについて説明します。このドキュメントを読むと、PPPoE インターフェイスでサポートされる QoS 機能、および必要な Cisco IOS® ソフトウェア リリースを理解できます。
このドキュメントの読者は次のトピックについての専門知識を有している必要があります。
モジュラ QoS コマンドライン インターフェイス(CLI)(MQC):詳細については、『モジュラ QoS コマンドライン インターフェイス』を参照してください。
PPPoE:PPPoE の詳細については、『Cisco UAC 6400 向けの PPPoE ベースライン アーキテクチャ』を参照してください。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ユーザが asymmetric DSL(ADSL; 非対称 DSL)を導入する際には、従来のブリッジング方式による customer premises equipment(CPE; 顧客宅内装置)の大規模な設置基盤上で、PPP 形式の認証と許可をサポートする必要があります。PPPoE を使用すると、シンプルなブリッジング アクセス デバイスを介して、ホストのネットワークをリモート アクセス コンセントレータやアグリゲーション コンセントレータ(加入者集約コンセントレータ)に接続できます。このモデルでは、各ホストがそれぞれの PPP スタックを使用します。これにより、ユーザにわかりやすいユーザ インターフェイスが提供されます。このため、アクセス制御、課金、およびサービス タイプを、サイト単位ではなく、ユーザ単位で実施できます。
PPPoE では、最初に PPP セッションを構築します。これらのセッションは、PC 上の Routerware などの PPPoE クライアント ソフトウェアによって、または、Cisco IOS ルータのクライアント機能によって開始されます。たとえば、Cisco IOSソフトウェアリリース12.1(3)XGでは、Cisco SOHO77用のPPPoEクライアント機能が導入されています。この場合、Cisco SOHO77の背後に複数のPCをインストールし、トラフィックをPPPoEセッションににに送信するしますネットワークアドレス変換(NAT)を実行できます。詳細については、『NAT による Cisco SOHO77 ルータの PPPoE クライアントとしての設定』を参照してください。
PPP セッションを確立した後、ホストまたはクライアントと、終端のアクセス コンセントレータの両方で PPP 仮想アクセス インターフェイス用にリソースが割り当てられます。
PPPoE 環境で、クラスベース均等化キューイング(CBWFQ)または低遅延キューイング(LLQ)などの高度なキューイングに適用される QoS サービス ポリシーを設定する場合は、次の制約事項に注意してください。
ルータで PPPoE クライアントまたはサーバ用のソフトウェアを実行する場合、バーチャル テンプレート インターフェイスと仮想アクセス インターフェイスでは、セッション単位のキューイングを実装するサービス ポリシーがサポートされません。ただし、キューイング以外の QoS 機能を適用するサービス ポリシーは、インターフェイス バーチャル テンプレートやインターフェイス ダイヤラに適用でき、MQC 機能はセッション単位で機能します。
ルータにRFC 1483 -routed virtual circuit(VC;仮想回線)用のDSLインターフェイスが設定されて、PCによって開始された複数のPPPoEセッションを単一のVCが伝送する場合、Cisco IOSソフトウェアリリース1 2.2(4)Tおよび12.2(4)以降。これらのリリースでは、PPP カプセル化を使用して、仮想アクセス インターフェイスでの高度なキューイング メカニズムとパケット分類メカニズムをサポートしています。
DSL ネットワークに接続している出力インターフェイスが DSL モデムに接続されているイーサネット ポートである場合は、DSL モデムでのアップストリーム側のスピードに一致するレートを親レベルでシェープする階層ポリシーを実装して、子ポリシーレベルでキューイングを行えます。これを行うには、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(4)T および 12.2(4) 以降を使用する必要があります。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(4)T では、Cisco 2600 シリーズでの PPPoE クライアントのサポートが導入されています。しかし、パケットの超過を信号で知らせるために必要な「バックプレッシャ アルゴリズム」を実装していないために高度なキューイングを行うサービス ポリシーをサポートしない DSL インターフェイスでは、レイヤ 3(L3)キューイング システムによってキューイングを行う必要があります。しかし、通常のイーサネット ポートを使用して DSL モデムを接続する場合は、親レイヤでシェーピングを行う階層ポリシーを設定するときにキューイングを実装し、キューイングとオプションで LLQ の実装を行う子ポリシーを適用できます。DSL アップリンクは、イーサネット インターフェイスに比べて非常に遅いため、イーサネットは DSL のレートに合わせる必要があります。実際には輻輳が発生し、超過したバッファにキューイング メカニズムを適用することになります。
ATM インターフェイスで PPPoE を実行する場合は、DSL 環境での音声に対する QoS を実現するために、次のオプションのいずれかを考慮してください。これらのオプションは、輻輳に対して信号を発生するバックプレッシャ メカニズムが VC ごとに適用されていることを前提としています。音声に対する QoS の実現は、相手先固定 VC(PVC)の輻輳状態をレイヤ 3 キューイングに正しく伝搬するというルータの機能を前提としています。
サービス ポリシーで LLQ を採用する場合は、VC で送信リングを調整して RFC 1483 によってルーティングされる PVC を設定します。
音声用の variable bit rate non-real-time(VBR-nrt; 可変ビット レート非リアルタイム)VC およびデータ用の unspecified bit rate(UBR; 未指定ビット レート)VC など、個別の VC を設定します。
PVC バンドルを設定します。これは同一の 2 台のルータ間の別個かつ平行な複数の VC です。各 VC は、IP 優先順位値の一意のセットを搬送し、(通常は)VBR-nrt などの一意の ATM サービス カテゴリに割り当てられます。詳細については、「ATM バンドルでの IP to ATM CoS の設定タスクのリスト」を参照してください。
フレーム リレーおよび ATM バーチャル サーキットに関するリンクのフラグメンテーションとインターリービングの設定を行います。この設定では、大きなパケットは MLPPP のフラグメンテーション メカニズムを使用して、セグメント化およびインターリーブされます。さらに、LLQ を設定して、送信リングの調整を行います。Cisco IOS では、パブリックおよびプライベート インターフェイス プールに加えて、リングと呼ばれる特別なバッファ制御構造が作成されます。VoIP パケットを搬送する場合には、ファーストイン ファーストアウト(FIFO)キューイングだけをサポートする送信リングを小さくし、高度なキューイング メカニズムとサービス ポリシーを適用するレイヤ 3 ホールド キューにすべてのキューをプッシュすることが重要になります。詳細については、「tx-ring-limit 値の理解と調整方法」を参照してください。
この設定例では、PPPoE 環境で CBWFQ または LLQ を設定するために必要なコマンドを示しています。
この環境における一般的な設計を次に示します。この例では、DSL ネットワークで Voice over IP(VoIP)が転送されます。
PPPoE がイネーブルになっているイーサネット インターフェイスに、階層ポリシーマップ(PPPoE の設定を参照)を割り当てることができます。シェーピングに対して適切なスピードを設定します。たとえば、DSL 環境では、アップストリームの制限が 128 kbps の場合は 128 kbps にシェーピングする必要があります。
親ポリシーの目的は帯域幅の制限を受けるストリームを作成することであり、トラフィックをクラスに分類することではないため、通常の階層ポリシーでは親ポリシーでクラスのデフォルトだけを使用します。子ポリシーでは、複数のトラフィック クラスと、それぞれ LLQ と CBWFQ を実装するための priority コマンドまたは bandwidth コマンドのいずれかまたは両方を指定します。
PPPoE |
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policymap parent_shaping class class-default shape average {speed} service-policy child_queueing policymap child_queueing class c1 priority Y class c2 bandwidth X interface ethernet 1/0 pppoe enable service-policy output parent_shaping |
PPPoE が設定されている ATM PVC に、CBWFQ および LLQ を使用するポリシーマップを適用できます(PPPoE over ATM VC の設定を参照)。
PPPoE over ATM VC |
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policymap P2 class c1 priority Y class c2 bandwidth X interface ATM0/0/0.132 point-to-point pvc 1/32 vbr-nrt 2000 2000 encapsulation aal5snap protocol pppoe service-policy output P2 |
ブロードバンドのフィーチャ セットを備える Cisco 7200 シリーズでは、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(4)B1 によって、PPPoE 環境において仮想アクセス インターフェイスに適用される RADIUS ユーザ プロファイルに対するレート制限のサポートが導入されました。設定例を次に示します。
shashi@pepsi.com Password = "cisco" Service-Type = Framed, Framed-Protocol = PPP, Framed-MTU = 1400, Framed-Routing = 1 Cisco-Avpair = "lcp:interface-config=rate-limit output access-group 101 64000 16000 32000 conform-action transmit exceed-action drop", interface Virtual-Access2 mtu 1492 ip unnumbered Loopback1 rate-limit output access-group 101 64000 16000 32000 conform-action transmit exceed-action drop
また、クラスベースのポリシングを使用して、この設定を行い、バーチャルテンプレートに QOS サービス ポリシーを適用することもできます。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
15-Feb-2008 |
初版 |