このドキュメントでは、非同期転送モード(ATM)環境と Packet over SONET(POS)環境で、同期光ネットワーク(SONET)と同期デジタル階層(SDH)で使用されるフレーミングの基本的な違いを確認します。現在、SONET は北米でより広く使用されているのに対して、SDH はヨーロッパでより広く展開されています。
注:SONETとSDHの違いについての詳細な説明は、このドキュメントの範囲外です。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
SONET と SDH との間には、主に用語の使い方に関して、数は比較的少ないものの重要な相違点があります。オーバーヘッド メッセージの定義についても、SDH ではより一般的な意味合いで使われているのに対し、SONET では主に北米内の動作状態を示すように調整されています。
次に、SONET と SDH の主要な相違点をいくつか示します。
SONET および SDH では、それぞれ異なる用語を使用して 3 つのレイヤを示します。SDH ではパス、多重化セクション、およびリジェネレータ セクションという用語を使用しますが、SONET ではセクション、回線、およびパスという用語を使用します。
C2 Path Overhead(POH)バイトの値がわずかに異なります。SONET と SDH では、それぞれ 0x16 と 0xCF を POS に使用します。
特定のオーバーヘッド バイトと、K1/K2 バイトで送信される Automatic Protection Systems(APS; 自動保護システム)メッセージの内容は異なります。次に、SDH でのフレーム同期のオーバーヘッドを図示します。詳細については、『同期デジタル ハイアラーキに関するトラブルシューティング ガイド』を参照してください。
International Telecommunications Union(ITU-T; 国際電気通信連合電気通信標準化部門)では、I361 勧告で未指定セルとアイドル セルの形式を定義しています。これらのセルの目的は、正確なセルのデカップリング、つまりセルの線引きを確実に実現させることです。その結果、受信側の ATM インターフェイスは新しいセル単位の始点を認識できます。ITU-T は、I432 勧告でセルの線引きに関するメカニズムを定義しています。
ATM 環境での SONET と SDH とのフレーム同期モードの主な相違点は、使用可能なユーザ セルやデータ セルがない場合のセル送信のタイプです。ATM フォーラムは、未指定セルが生成されない場合のアイドル セルの使用について示しています。具体的には、Synchronous Transport Module-X(STM-X; 同期転送モジュール-X)モードでは、ATM インターフェイスはセル レート デカップリングのためにアイドル セルを送信します。Synchronous Transport Signal-Xc(STS-Xc; 同期転送信号-Xc)モードの場合は、ATM インターフェイスは、未指定セルをセルレート デカップリングのために送信します。
デフォルトの SONET 設定は、STS-Xc です。Synchronous Transport Module レベル 1(STM-1)用に設定するには、インターフェイス設定モードで次のコマンドを発行します。
Router(config-if)#atm sonet stm-4
詳細については、『ATM コントロール セルの説明:アイドル セル、未指定セル、IMA 充てんセル、無効セル』を参照してください。
POs framing コマンドを使用すると、フレーム同期を SONET Optical Carrier(OC)または SDH STM に設定できます。デフォルトは SONET です。
Router(config-if)#POs framing [sdh|sonet]
SONET と SDH での各フレーム同期のもう 1 つの相異は、s0 および s1 のビットの値です(s はサイズを示す)。この値は、SONET の H1 バイトではビット 5 と 6 になります。SDH では、これらのビットを使って、Administrative Unit(AU)フィールドを形成します。ITU-T の G.709 標準、または G.707、G.708、および G.709 を統合した G.707 では、AU ポインタについて説明されています。次に、2 つの主な AU タイプを示します。
AU-3 は、H1、H2、および H3 ポインタの 3 セットがチャネライズド STS-3 フレームで動作するのと同じように動作します。
AU-4 は、STS-3c のポインタの 1 セットがフレームを連結した場合と同様に動作します。
SONET では、s1s0 のビットまたはフラグを使用しません。SONET フレーム同期を設定した送信側の POS インターフェイスは、ss = 00 を送信しますが、受信側の SONET 装置は、これらのビットを無視します。これらのビットは、他のフィールド経由で通信されるペイロードのマッピング タイプ情報を示すのに使われるのがこの理由です。SDH フレーム同期を設定した POS インターフェイスは、通常、ss = 10 を送ります。
次の表では、ss ビットによく使用される値を説明しています。
2 進数値 | 説明 |
---|---|
00 | SONET |
11 | Reserved |
01 | 旧型の ADM で使用 |
10 | AU3/4:ヨーロッパでは、ほとんどの実装に 3 を使用 |
SDH フレーム同期で ss ビットを使用する場合、もともとは pos flag s1s0 2 コマンドを使用して手作業で再設定する必要がありました。現在、Cisco 12000 シリーズ エンジン 2 POS 回線カードでは、フレーム同期タイプの設定時に、この値が自動的に変わるようになりました(Cisco Bug ID CSCdm62748)。
router(config)#interface p3/0 router(config-if)#pos flag ? c2 Path overhead byte j0 Section trace byte (0x01 for compatibility, 0xCC is default) s1s0 Specify bit S1 and S0 of H1 router(config-if)#pos flag s1s0 ? <0-3> S1 & S0 bits router(config-if)#pos flag s1s0 0 !--- Set to 0 for SONET. router(config-if)#pos flag s1s0 2 !--- Set to 2 for SDH.
Spatial Reuse Protocol(SRP)インターフェイスで srp flag s1s0 コマンドを発行します。
interface SRP1/0/0 interface SRP1/0/0 ip address 139.97.2.19 255.255.255.240 srp clock-source line a srp clock-source line b srp framing sdh a srp framing sdh b srp flag c2 19 a srp flag c2 19 b srp flag s1s0 2 a srp flag s1s0 2 b
show controller pos および show controller srp コマンドを実行すると、リモート エンドから受信した s1s0 の値が表示されます。
router2#show controller pos 5/1 detail POS5/1 SECTION LOF = 0 LOS = 0 BIP(B1) = 0 LINE AIS = 0 RDI = 0 FEBE = 0 BIP(B2) = 0 PATH AIS = 0 RDI = 0 FEBE = 0 BIP(B3) = 675 LOP = 0 NEWPTR = 0 PSE = 0 NSE = 0 Line triggers delayed 100 ms Active Defects: None Active Alarms: None Alarm reporting enabled for: SF SLOS SLOF B1-TCA B2-TCA PLOP B3-TCA Framing: SONET APS COAPS = 0 PSBF = 0 State: PSBF_state = False ais_shut = TRUE Rx(K1/K2): 00/00 S1S0 = 02, C2 = 16
送信された値が不正確だと、ネットワークの ADM が、差を検出して Loss of Pointer(LOP; ポインタ損失)アラームを報告する場合があります。シスコのルータは、この値を無視し、アラームを宣言せずに、ネットワークの報告内容だけを示します。
バックツーバックのラボ設定で、2 つのルータのエンドポイントに異なるフレーム同期タイプが設定されている場合、PING が成功するため、どちらの装置でもアラームは宣言されません。しかし、ルータのエンドポイントが SONET または SDH ネットワークのいずれかに接続されていると、ADM がミスマッチを検知して Path Loss of Pointer(PLOP)アラームを報告する場合があります。show controller pos コマンドの出力結果で、"Facility alarm:PathFarEndRxFailure" が報告されることがあります。 この問題をトラブルシューティングするには、両側のルータに必ず同じフレーム同期タイプを設定します。同じタイプを設定していれば、WAN アナライザを使い、必要に応じてフレームをキャプチャーすることができます。
Cisco IOS®ソフトウェアリリース12.1Eが稼働するCisco 7200または7500シリーズルータのリロード後、POSインターフェイスに設定されているs1s0フラグが自動的に0にリセットされます。この問題は、Cisco Bug ID CSCdw93032(登録ユーザ専用)で解決されています。