このドキュメントでは、Packet over SONET(POS)ルータ インターフェイスが伝送するフレームのビット インターリーブ パリティ(BIP-8)チェックについて説明します。
次の項目に関する知識があることが推奨されます。
SONET(同期光ネットワーク)
GSR(ギガビット スイッチ ルータ)
ESR(エッジ サービス ルータ)
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
BIP エラーの数が設定可能なしきい値を超えると、ルータは次のようなログ メッセージを報告します。
Feb 22 08:47:16.793: %LINEPROTO-5-UPDOWN: Line protocol on Interface POS3/0, changed state to down Feb 22 08:47:16.793: %OSPF-5-ADJCHG: Process 2, Nbr 12.122.0.32 on POS3/0 from FULL to DOWN, Neighbor Down Feb 22 08:48:50.837: %SONET-4-ALARM: POS3/0: SLOS Feb 22 08:48:52.409: %LINK-3-UPDOWN: Interface POS3/0, changed state to down Feb 22 08:50:47.845: %SONET-4-ALARM: POS3/0: B1 BER exceeds threshold, TC alarm declared Feb 22 08:50:47.845: %SONET-4-ALARM: POS3/0: B2 BER exceeds threshold, TC alarm declared Feb 22 08:50:47.845: %SONET-4-ALARM: POS3/0: B3 BER exceeds threshold, TC alarm declared Feb 22 08:50:52.922: %SONET-4-ALARM: POS3/0: SLOS cleared Feb 22 08:50:54.922: %LINK-3-UPDOWN: Interface POS3/0, changed state to up
このドキュメントでは、しきい値超過(TC)ビット エラー レート(BER)アラームのトラブルシューティング方法に関するヒントを示します。
SONET は、セクション、回線、およびパスといったレイヤ アーキテクチャを使用するプロトコルです。各レイヤは、次のように、SONET フレームにいくつかのオーバーヘッド バイトを追加します。
パスのオーバーヘッド | ||||
セクションのオーバーヘッド | A1 Framing | A2 Framing | A3 Framing | J1 Trace |
B1 BIP-8 | E1 Orderwire | E1 User | B3 BIP-8 | |
D1 Data Com | D2 Data Com | D3 Data Com | C2 Signal Label | |
回線のオーバーヘッド | H1 Pointer | H2 Pointer | H3 Pointer Action | G1 Path Status |
B2 BIP-8 | K1 | K2 | F2 User Channel | |
D4 Data Com | D5 Data Com | D5 Data Com | H4 Indicator | |
D7 Data Com | D8 Data Com | D9 Data Com | Z3 Growth | |
D10 Data Com | D11 Data Com | D12 Data Com | Z4 Growth | |
S1/Z1 Sync Status/Growth | M0 または M1/Z2 REI-L Growth | E2 Orderwire | Z5 Tandem Connection |
ここで重要なのは、各レイヤが単一のインターリーブ パリティ バイトを使用し、エンドツーエンドの SONET パスに沿って特定のセグメント間でエラー モニタリングを実行する点です。このパリティ バイトのことを BIP-8(ビット インターリーブ パリティの省略形)と呼びます。BIP-8 は、以前の同期転送信号レベル 1(STS-1)フレームで偶数パリティ チェックを実行します。
パリティ チェック時には、以前スクランブルされた STS-1 フレームの全オクテットの第 1 ビットに含まれる 1 の合計が偶数になるように、BIP-8 フィールドの第 1 ビットが設定されます。BIP-8 フィールドの他のビットも、第 2 ビットは各オクテットの第 2 ビット、第 3 ビットは各オクテットの第 3 ビットというようにチェックするビットが変わる点以外はまったく同様に使用されます。
SONET ネットワークに関する Bellcore GR-253 規格により、特定のパリティ エラーを計算するためのバイトが定義されています次の表に、各 BIP バイトが SONET フレームのどの部分を対象とするのかを示します。
バイト | 対象とするフレーム部分 | 監視するスパン | エラー表示 |
---|---|---|---|
B1 | フレーム全体、スクランブリング後 | リジェネレータなどの 2 台の隣接する STE(セクション終端装置)間のビット エラーを監視します。 | 一致しない場合は、セクションレベルのビット エラーが発生していることを示します。 |
B2 | 回線のオーバーヘッドと同期ペイロード エンベロープ(SPE)(パスのオーバーヘッドとペイロードを含む)、スクランブリング前 | アド/ドロップ マルチプレクサ(ADM)や DCS といった 2 台の隣接する LTE(回線終端装置)間のビット エラーを監視します。 | 一致しない場合は、回線レベルのビット エラーが発生していることを示します。 |
B3 | SPE(パスのオーバーヘッドとペイロードを含む)、スクランブリング前 | 2 つのルータ POS インターフェイスなど 2 台の隣接するパス終端装置(PTE)間のビット エラーを監視します。 | 一致しない場合は、パスレベルのビット エラーが発生していることを示します。 |
ある条件下で、show controllers posd コマンドの出力は 1 レベルの BIP エラーのみを報告することがあります。その理由は、報告される BIP エラーが、コード違反やビット フリップが実際に発生した場所に応じて異なるためです。つまり、パリティ バイトは SONET フレームのさまざまな部分のエラーを監視および検出します。BIP エラーはフレーム内のどこでも発生する可能性があります。
次の図は、一般的な SONET ネットワークを示しています。
2 つのルータ POS インターフェイスを、高密度波長分割多重(DWDM)リンクを通じて、中間 SONET や同期デジタル階層(SDH)機器を介さずにポイント ツー ポイントで接続する場合、3 つすべての BIP メカニズムは同じセグメントを監視し、通常は同じエラーを検出します。ただし、この構成では、B2 が最も正確なビット エラー カウントを示す必要があります。
B3 エラーが増加せずに B1 エラーと B2 エラーが増加することは、統計的には起こりえません。この状況は、エラーが B3 バイトが監視していないフレーム部分に影響する場合にのみ発生します。B3 バイトはパスのオーバーヘッドとペイロード セクションを対象とすることを思い出してください。
B3 エラーの増加は、SPE またはペイロード部分が破損していることを示します。パスのオーバーヘッドは、リモートの PTE が SONET フレームを終端させるまで変わりません。ADM とリジェネレータはパスのオーバーヘッドを終端させないため、B3 エラーを報告しません。そのため、B3 エラーのみが増えている状況は、ローカルまたはリモートのルータ インターフェイスのいずれかでパスのオーバーへッドまたはペイロードが破損していることを示します。
また、B3 チェックが最も長いスパンを対象とする場合、ビット フリップの可能性は高くなります。一般的に、エンドツーエンドのパスは LTE 間のいくつかの監視対象セグメントに及びます。B2 パリティ チェックでは、これらのセグメントを監視する必要があります。
SONET インターフェイスは、信号消失またはフレーム損失アラーム状態でのBIP エラーの増加を報告しません。ただし、インターフェイスがアラームを発するまでの時間に大量の B1 エラーが発生する可能性があります。この大量発生は、最大 10 秒間続くことがあります。この 10 秒は、Cisco 12000 および 7500 ルータ シリーズのライン カードが中央のルート プロセッサに統計情報を報告する間隔です。
また、ここで説明するように、BIP エラーの検出レベルはそれぞれ異なることも理解しておく必要があります。
B1:B1 は 1 フレームあたり最大 8 個のエラーを検出できます。この検出レベルは、OC-192 レートでは許容されません。エラー率の高いリンクでは、偶数個のエラーはパリティ チェックによって検出できない場合があります。
B2:B2 は 1 フレームあたり、非常に多くの数のエラーを検出できます。SONET フレームに含まれる STS-1(または STM-1)の数が増えるにつれて、検出できるエラーの数も増えます。たとえば、OC-192/STM-64 では 192 x 8 = 1536 ビット幅の BIP フィールドが生成されます。つまり、B2 は 1 フレームあたり最大 1536 ビットのエラーをカウントできます。そのため、偶数個のエラーが B2 パリティの計算をくぐり抜ける可能性は非常に低くなります。B2は、B1またはB3と比較して優れた解像度を提供します。したがって、SONETインターフェイスは、特定の監視対象セグメントに対してのみB2エラーを報告できます。
B3:B3 は SPE 全体で最大 8 個のパリティ エラーを検出できます。この数は、チャネライズド インターフェイスで許容される検出レベルです。これは、たとえば、1 つの STS-3 に含まれる各 STS-1 にパスのオーバーヘッドと B3 バイトがあるためです。しかし、連結ペイロードでは、1 セットのパス オーバーヘッドが比較的大きなペイロード フレームをカバーする必要があるため、この数では少なすぎます。
注:IOSのリロードまたはマイクロコードのリロードを開始すると、POSインターフェイスがリセットされ、フレーマも同様になります。このリセットで、インターフェイスのマイクロコードが再度ダウンロードされます。場合によっては、このプロセスによってビット エラーの小規模なバーストが発生することがあります。
BER は、検出された BIP エラーの数をカウントします。この値を計算するには、単位時間あたりのビット エラーの数と送信された総ビット数を比較します。
POS インターフェイスは、BER を使用してリンクが信頼できるかどうかを判断します。BER が設定可能なしきい値を超えると、インターフェイスの状態がダウンに変わります。
3つのSONETレイヤはすべて、デフォルトのBER値である10e-6を使用します。show controllers posコマンドは、現在の値を表示します。
RTR12410-2#show controllers pos 6/0 POS6/0 SECTION LOF = 0 LOS = 2 BIP(B1) = 63 LINE AIS = 0 RDI = 1 FEBE = 1387 BIP(B2) = 2510 PATH AIS = 0 RDI = 1 FEBE = 17 BIP(B3) = 56 LOP = 2 NEWPTR = 0 PSE = 0 NSE = 0 Active Defects: None Active Alarms: None Alarm reporting enabled for: SF SLOS SLOF B1-TCA B2-TCA PLOP B3-TCA Framing: SONET APS COAPS = 8 PSBF = 1 State: PSBF_state = True ais_shut = FALSE Rx(K1/K2): 00/00 S1S0 = 00, C2 = CF Remote aps status working; Reflected local aps status non-aps CLOCK RECOVERY RDOOL = 0 State: RDOOL_state = False PATH TRACE BUFFER : STABLE Remote hostname : 12406-2 Remote interface: POS2/0 Remote IP addr : 48.48.48.6 Remote Rx(K1/K2): 00/00 Tx(K1/K2): 00/00 BER thresholds: SF = 10e-3 SD = 10e-6 TCA thresholds: B1 = 10e-6 B2 = 10e-6 B3 = 10e-6
pos threshold コマンドを使用して、しきい値をデフォルトから変更します。
router(config-if)#pos threshold ? b1-tca B1 BER threshold crossing alarm b2-tca B2 BER threshold crossing alarm b3-tca B3 BER threshold crossing alarm sd-ber set Signal Degrade BER threshold sf-ber set Signal Fail BER threshold
信号障害(SF)BER および信号劣化(SD)BER は、B2 BIP-8 エラー カウントに基づきます(B2-TCA と同じ)。 ただし、SF-BER と SD-BER が自動保護スイッチング(APS)マシンに送り込まれることで、保護スイッチングへと切り替わる場合があります(APS が設定されている場合)。
B1 BER しきい値超過アラート(B1-TCA)、B2-TCA、および B3-TCA は、それぞれの報告が有効かどうかを示すログ メッセージをコンソールに表示するだけです。
pos report {b1-tca | b2-tca | b3-tca}コマンドを使用すると、レポートするSONETアラームを設定できます。ルータは通常、パスレベルまたは回線レベルのアラームを発行したときに TC アラームを報告します。
次の出力例は、Cisco ルータの POS インターフェイスで BER の超過がどのように報告されるかを示しています。
Aug 7 04:32:41 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: B1 BER exceeds threshold, TC alarm declared Aug 7 04:32:41 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: B2 BER exceeds threshold, TC alarm declared Aug 7 04:32:41 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: SD BER exceeds threshold, TC alarm declared Aug 7 04:32:41 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: B3 BER exceeds threshold, TC alarm declared Aug 7 04:32:44 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: SLOF cleared Aug 7 04:32:44 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: PPLM cleared Aug 7 04:32:44 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: LRDI cleared Aug 7 04:32:44 BST: %SONET-4-ALARM: POS4/6: PRDI cleared Aug 7 04:32:46 BST: %LINK-3-UPDOWN: Interface POS4/6, changed state to up Aug 7 04:32:47 BST: %LINEPROTO-5-UPDOWN: Line protocol on Interface POS4/6, changed state to up
Cisco POS インターフェイスは、BIP エラーを検出したときにフレームを廃棄しません。その理由は、現在のフレームに含まれる BIP 値が前のフレームで計算された値であるためです。フレーム全体で BIP 値を計算するには、フレーム全体を作成する必要があります。SONET の速度では、フレームは非常に大きくなり、大量のバッファ リソースを占有します。実際のアプローチでは、パリティ計算までに通常発生するフレーム送信時の遅延が起こらないようにします。このアプローチによって、バッファ要件は最小限に抑えられます。パリティは、実際にフレームが送信された後に計算されます。
たとえば、フレーム 100 のパリティ値はフレーム 101 の BIP フィールドに格納されます。
SONET フレーマがフレーム割り当てを維持できる限り、フレームはレイヤ 2 プロトコルに送信されます。フレーム内のレイヤ 2 データが破損している場合、そのフレームは巡回冗長チェック(CRC)で破棄されます。
このドキュメントで説明する SONET アラームと障害のトラブルシューティングを行うには、次を実行します。
光出力レベルをチェックします。リンクの減衰量が十分であることを確認します。
ビット エラーの原因が光ファイバの不良や汚れでないことを確認します。次のステップを実行します。
物理ファイバとインターフェイスの汚れを落とします。
ケーブルを交換します。
パッチ パネルをすべてチェックします。
クロック設定が適切であることを確認します。
トポロジ図を作成し、両端の間にあるトランスポート デバイスや信号リジェネレータをチェックします。これらのデバイスも確認して、汚れを落とします。
ハードのループバック テストを実行します。1 本の光ファイバをインターフェイスの送信コネクタと受信コネクタにループします。インターフェイスの IP アドレスに ping を発行し、インターフェイスが実際のデータ フローに対応できることを確認します。詳細については、「Cisco ルータのループバック モードの理解」を参照してください。
Cisco Technical Assistance Center(TAC)に連絡する場合は、次の手順を実行します。
show controllers pos details コマンドから出力を収集します。SONET レベルのビット エラーの数を確認します。
数分待ちます。
同じインターフェイスについてもう一度 show controllers pos details コマンドの出力をキャプチャします。
次の表は『Cisco 10000 シリーズ ESR トラブルシューティング ガイド』に掲載されています。この表は、BIP TC アラームのトラブルシューティング手順を示します。
注:ギガビットスイッチルータ(GSR)POSカードの既知の問題は、GSRレート制限パケットがギガビットルートプロセッサ(GRP)にプッシュされるため、ハードループがping損失を引き起こすことです。 詳細については、Cisco bug ID CSCea11267 (登録ユーザ専用)を参照してください。
アラーム タイプと重大度 | アラームの症状 | 推奨事項 |
---|---|---|
TCA_B1 しきい値超過アラーム - B1 マイナー | 次のアラーム タイプについて、
|
どのケースでも、ケーブルと接続の品質をテストします。 |
TCA_B2 しきい値超過アラーム - B2 マイナー | - | TCA_B1 と同じ |
TCA_B3 しきい値超過アラーム - B3 マイナー | - | TCA_B1 と同じ |
BER_SF 信号障害状態マイナー | BER_SF および BER_SD アラームが発生すると、APS の切り替えが起こります。 | どちらのケースでも、ケーブルと接続の品質をテストします。 |
BER_SD 信号劣化状態マイナー | - | これらの BER しきい値はユーザが指定できます。 |
LightStream 1010 や Catalyst 8500 などのキャンパス ATM スイッチは、ATM over SONET インターフェイスで TC アラーム値を設定するコマンドをサポートしていません。
Sep 19 02:21:44: %SONET-4-ALARM: ATM11/0/0: B1 BER below threshold, TC alarm cleared Sep 19 02:21:44: %SONET-4-ALARM: ATM11/0/0: B2 BER below threshold, TC alarm cleared
ATM スイッチでの TC アラームのトラブルシューティングは、POS インターフェイスと同じ手順で実行します。ビット エラーは、パス内の ATM スイッチとその他のデバイス間に物理層の問題があることを示します。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
12-Sep-2005 |
初版 |