このドキュメントでは、同期光ネットワーク(SONET)の概要とその仕組みについて説明します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
SONET では、多重化されたデジタル トラフィックに対する光信号と、同期フレームの構造が定義されています。これは、ANSI T1.105、ANSI T1.106、および ANSI T1.117 で規定されている、光ネットワークの速度と形式を定義した標準のセットです。
ヨーロッパでは、国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)による同様の標準の同期デジタル階層(SDH)が使用されています。一般的には、SONET の装置は北米で使用されており、SDH の装置は世界中のその他の場所で使用されています。
SONET と SDH はどちらも、基本的なフレーム形式と速度を有する構造に基づいています。SONET で使用されているフレーム形式は、Synchronous Transport Signal(STS; 同期転送信号)であり、51.84 Mbps でのベースレベル信号として STS-1 を使用します。STS-1 フレームは OC-1 信号で伝送できます。SDH で使用されているフレーム形式は、Synchronous Transport Module(STM; 同期転送モジュール)であり、155.52Mbps でのベースレベル信号として STM-1 を使用します。STM-1 フレームは OC-3 信号で伝送できます。
SONET と SDH の両方にシグナリング速度の階層があります。複数の低レベル信号を多重化して高レベル信号を形成できます。たとえば、3 本の STS-1 信号を多重化して STS-3 信号を形成することも、4 本の STM-1 信号を多重化して STM-4 信号を形成することもできます。
SONET および SDH は、技術的によく似た規格です。SONET という用語は、これらのいずれかを指すためによく使用されます。
次のように、それぞれのレベルの階層によって、SONET ペイロード内の対応するフィールドが仕切られています。
セクションは、ネットワーク要素(回線またはパス)または光再生器で終端可能な単一の光ファイバ ランです。
セクション層の主要な機能は、SONET フレームを正しく形成し、電気的な信号を光信号に変換することです。Section Terminating Equipment(STE; セクション終端装置)により、セクション ヘッダー オーバーヘッドの開始、アクセス、修正、終端ができます。(標準の STS-1 フレームは、90 バイト 9 行で構成されています。各行の最初の 3 バイトには、セクションと回線のヘッダー オーバーヘッドが含まれています。)
回線終端装置(LTE)が回線信号の 1 つ以上のセクションを開始または終端します。LTE では、SONET フレームの情報の同期化と多重化を行います。複数の低レベルの SONET 信号を多重化して高レベルの SONET 信号を形成できます。アド/ドロップ マルチプレクサ(ADM)は LTE の例です。
Path-Terminating Equipment(PTE; パス終端装置)は、SONET 以外の装置と SONET ネットワークとのインターフェイスになります。この層では、ペイロードが SONET フレームに対してマッピングされたり、マッピング解除されたりします。たとえば、STS PTE は、25 本の 1.544 Mbps DS1 信号を束ねて、パス オーバーヘッドを挿入し、STS-1 信号を形成できます。
この層は、エンドツーエンドのデータ送信と関連しています。
光インターフェイス層は階層関係でできています。それぞれの層は、1 つ下の層から提供されるサービスに基づいて構築されます。層ごとに、同じ層内のピア機器と通信して、情報を処理し、それを上か下の層に渡します。たとえば、次の図に示すように、DS1 信号を交換するための 2 つのネットワーク ノードを考えてみます。
送信元ノードでは、パス層(PTE)が 28 本の DS1 信号とパス オーバーヘッドをマッピングして STS-1 同期ペイロード エンベロープ(SPE)を形成し、それを回線層に渡します。
回線層(LTE)では、STS-1 SPE 信号を多重化し、回線オーバーヘッドを付加します。この結合された信号は、次にセクション層に渡されます。
セクション層(STE)では、フレーム作成とスクランブリングを実行し、セクション オーバーヘッドを付加して、STS-n 信号を形成します。
最後に、電気 STS 信号が光通信層用の光信号に変換され、光ファイバ経由で遠端ノードに送信されます。
信号は、SONET ネットワークを介して、光再生器(STE レベル デバイス)で再生され、ADM(LTE レベル デバイス)を通過して、最終的に、ノード(PTE レベル)で終端されます。
遠端ノードでは、プロセスが光通信層から DS1 信号が終端されるパス層へ逆方向に進みます。
標準の STS-1 フレームは 90 バイトごとの 9 行で構成されます。各行の最初の 3 バイトは、セクションと回線のオーバーヘッドを表します。これらのオーバーヘッド ビットには、フレーミング ビットと、SONET フレームの他の部分を指し示すポインタが含まれます。
STS パスのオーバーヘッドを表すペイロードには、バイトのカラムが 1 つあります。このカラムは、フレーム全体を頻繁に「移動」します。フレーム内の位置は、セクションと回線のオーバーヘッド内のポインタによって決められます。
セクションと回線のオーバーヘッドの組み合わせには、転送オーバーヘッドが含まれ、残りは SPE になります。
STS-1 では、1 つの SONET フレームが 125 マイクロ秒、つまり、8000 フレーム/秒(fps)で送信されます。8000 fps × 810 B/フレーム = 51.84 Mbs であり、このうちペイロードはおよそ 49.5 Mbs であるため、28 個の DS-1、1 個の完全な DS-3、または 21 個の CEPT-1 をカプセル化するには十分です。
STS-3 は STS 3c に非常によく似ています。このフレームは、270 バイト 9 行で構成されています。最初の 9 カラムには、転送オーバーヘッドのセクションが含まれ、残りは SPE になります。STS-3 と STS-3c の両方で、転送オーバーヘッド(回線とセクション)が同じです。
STS-3 フレームでは、SPE に 3 種類のペイロードと 3 種類のパス オーバーヘッド フィールドが含まれています。つまり、3 種類の STS-1 がまとめてパックされた SPE です。
STS 3c では、SPE 全体でパス オーバーヘッド フィールドが 1 つしかありません。STS-3c の SPE は、1 つの STS-1 SPE を大きくしたものです。
STM-1 は、SONET(北米)STS-3 フレーム(正確には STS-3c)と同等の SDH(北米以外)のフレームにあたります。 STM-1 でも、1 つの SDH フレームが 125 マイクロ秒で送信されますが、フレームは行ヘッダーが 9 バイトで、9 行分長い 270 バイト、つまり、155.52 Mbs です。この 9 バイトのヘッダーには、マルチプレクサおよびリジェネレータのオーバーヘッドが含まれます。これは、STS-3c の回線とセクションのオーバーヘッドとほぼ同じです。実際には、SDH 標準と SONET 標準にはこの部分に違いがあります。
SDH と SONET は、直接的な互換性はありませんが、オーバーヘッドの数バイトのみが異なります。シスコが両方をサポートしていないフレーマを使用することはほとんどありません。
SONET は、電話会社に幅広く導入され、リング構成に頻繁に使用されています。ADM などのデバイスはリング上に設置され、LTE 層デバイスとして動作します。このようなデバイスは、個別のチャネルを外して、それらを PTE 層に渡します。
現在のシスコ ライン カードとポート アダプタ(PA)はすべて PTE 層デバイスとして機能します。これらのデバイスがフル SONET セッションと L2 カプセル化を終端します。これらは Packet Over SONET(POS)カードであり、SONET フレームでのデータのシリアル転送を示唆しています。次の 2 つの RFC に POS プロセスが記載されています。RFC 1619、PPP over SONET/SDH 、およびRFC 1662、HDLCに類似したフレーミングのPPP 。
これらのシスコ製品は、SONET または SDH リング上に直接設置することはできません。これらのいずれかが ADM などの LTE 層デバイスに接続している必要があります。Integrated SONET Router(ISR)などの機器は、PTE 機能と LTE 機能の両方を備えているため、データを終端させることも、通過させることもできます。
次のパラメータは、SONET デバイスの設定に影響を与えます。
[Clocking]:クロッキングのデフォルト値は line で、クロッキングがネットワークから抽出される場合に使用されます。clock source internal コマンドは、通常、Cisco 12000 シリーズ インターネット ルータがバックツーバックで接続されている場合か、クロッキングが提供されないダーク ファイバ経由で接続されている場合に使用します。いずれの場合も、各デバイスのクロック ソースを internal に設定する必要があります。詳細については、『POS ルータ インターフェイス上でのクロック設定の構成』を参照してください。
[Loopback]:ループバックの値は line と internal(DTE)です。コントローラで行われる場合、SONET セクション ループバックになります。個別のインターフェイス上で実行された場合は、個別のパス ループバックになります。
[Framing]:ほとんどのシスコのフレーマが SONET と SDH の両方をサポートしています。
[Payload scrambling]:この値は通常 On に設定されます。
S1S0 flag:この値は0 ~ 3の範囲である必要があります。デフォルト値は0です。SONETの場合、s1soを0に設定し、SDHの場合は2に設定する必要があります。値3は、受信したアラーム表示信号(AIS)に対応します。
J0 flag - 0-255:この設定はセクショントレース識別子です。セクション トレースの場合にのみ必要です。
C2 flag - 0-255:この設定は、STSパス信号ラベルを指定します(5 ~ 7はpos flagコマンドで設定されます)。
[Alarm reporting]:これを使用すれば、報告されるアラームを指定できます。許容値は、b1-tca、b2-tca、sf-ber、sd-ber、los、lof、ais-l、および rdi-l です(この値は、pos report コマンドで設定します)。
[Alarm thresholds]:アラームしきい値設定は、アラームを伝達するビット エラー レート(BER)のしきい値を指定します(この値は、pos threshold コマンドで設定します。)
ここでは、SONET コントローラのステータスを表示する show controller pos x/y コマンドの画面キャプチャを示します。
リンクが down/down の場合は、アクティブ アラームと不具合をチェックします。この場合のトラブルシューティングは、シリアルのトラブルシューティングの場合と本質的に同じです。SONET コントローラ(画面例を参照)を確認すれば、さまざまな L1 情報と SONET 情報が得られます。SONET 内の不具合とアラームは、T1/E1 と T3/E3(LOS、LOF、AIS(ブルー アラーム)など)の問題をトラブルシューティングおよび診断したときのアラームに似ています。
Active defects フィールドと Active alarms フィールドは、POS コントローラの現在のステータスを示しており、問題を指摘します。
セクション、回線、およびパスのエラー回数は累積値であり、その状態が発生した回数を表しています。これらの数値は、現在エラーが発生しているかどうかを示しているわけではありません。
ビット インターリーブ パリティ(BIP)エラーは、特定の SONET 層に対応するパリティ エラーです。BIP(B1) は回線層パリティ エラーに、BIP(B2) はセクション層パリティ エラーに、BIP(B3) はパス層パリティ エラーに対応します。
show controller pos x/y コマンドの出力を確認するときに、どの SONET 層(SONET 回線、セクション、またはパス)でエラーが蓄積されているかに注目してください。SONET に関する問題またはエラーをトラブルシューティングする場合に最初に行うことは、問題のあるセクションを割り出すことです。