このドキュメントでは、show ip ospf neighbor コマンドによって、ネイバーが双方向状態に留まっていると示される理由について説明します。また、設定のヒントも紹介します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
次のトポロジにおいて、すべてのルータはイーサネット ネットワーク上で Open Shortest Path First(OSPF)を実行しています。
次に示すのは、R7 と R8 における show ip ospf neighbor コマンドの出力例です。
R7# show ip ospf neighbor Neighbor ID Pri State Dead Time Address Interface 170.170.3.4 1 2WAY/DROTHER 00:00:34 170.170.3.4 Ethernet0 170.170.3.3 1 2WAY/DROTHER 00:00:34 170.170.3.3 Ethernet0 170.170.3.8 1 FULL/DR 00:00:32 170.170.3.8 Ethernet0 170.170.3.2 1 FULL/BDR 00:00:39 170.170.3.2 Ethernet0 R8# show ip ospf neighbor Neighbor ID Pri State Dead Time Address Interface 170.170.3.4 1 FULL/DROTHER 00:00:37 170.170.3.4 Ethernet0 170.170.3.3 1 FULL/DROTHER 00:00:37 170.170.3.3 Ethernet0 170.170.3.7 1 FULL/DROTHER 00:00:38 170.170.3.7 Ethernet0 170.170.3.2 1 FULL/BDR 00:00:32 170.170.3.2 Ethernet0
R7 が完全な隣接関係を確立するのは Designated Router(DR; 代表ルータ)と Backup Designated Router(BDR; バックアップ代表ルータ)だけであることに注目してください。 他のすべてのルータには双方向隣接関係が確立しています。これは OSPF の正常の動作です。
ルータは、ネイバーの hello パケット内にそれ自体を発見すると、いつでも双方向通信を確認してネイバー状態を双方向状態に変更します。この時点で、ルータは DR と BDR の選定を行います。DR と BDR が選定されると、その 2 つのルータのうち 1 つが DR または BDR である場合、ルータはネイバーと完全な隣接関係を形成しようとします。OSPF ルータは、正常に完了したデータベース同期プロセスを備えたルータと完全に隣接関係になります。このプロセスによって、OSPF ルータはリンク状態情報を交換して、同一の情報をデータベースに読み込みます。ここでも、このデータベース同期プロセスは、2 つのルータのうち 1 つが DR または BDR である場合にだけ実行されます。
OSPF は、大規模ネットワークの要件に集中するために設計されたものです。すべてのルータが接続している他のすべてのルータと隣接関係を形成したとすると、大量の Link-State Advertisements(LSA; リンク ステート アドバタイズメント)がネットワーク全体に送信されます。あるブロードキャスト ネットワークに接続されたルータの数が n だとすると、n * (n-1) / 2 個のネイバー ペアができることになります。ネイバーのすべてのペアがデータベースと同期しようとすると、LSA の量が膨大になります。そのシナリオでは、あるルータがその隣接ネイバーすべてに LSA をフラッディングし、受け取った側のネイバーがさらにその隣接ネイバーに LSA をフラッティングしていくことになります。次のネイバーの図でもわかるように、各ルータはそれ自体のネイバーとデータベースを同期させる必要がある場合、各ルータは 4 つの隣接関係を確立することが必要になります。
OSPF は、DR と BDR を使うことでネットワーク内のルータがすべてのペアを同期させることを回避します。この方法で、隣接関係は DR と BDR に対してだけ形成され、ネットワークに送信される LSAの数は削減されます。これで、DR と BDR だけが 4 つの隣接関係を持ち、他のすべてのルータは 2 つの隣接関係を持つことになります。このため、Nonbroadcast Multiaccess(NBMA)メディア経由のポイントツーマルチポイント ネットワークのハブにあるルータは、DR/BDR として設定される必要があります。詳細は、『フレーム リレーを介しての NBMA モードでの OSPF の実行に関する問題』を参照してください。
場合によっては、DR や BDR にならないようルータを設定することが望ましい場合もあります。これは、ip ospf priority priority# interface サブコマンドで OSPF 優先度を 0 に設定することで実行できます。2 つの OSPF ネイバーが、どちらもその OSPF インターフェイス優先度を 0 に設定している場合、完全隣接関係ではなく双方向隣接関係を確立します。
次のトポロジで例を示します。フレーム リレー経由で接続されているルータが 3 つあります。フレーム リレー インターフェイスは、ブロードキャストとして定義されますが、メイン ネットワークへの接続を持つルータだけに DR になる資格があります。他の 2 つのルータはインターフェイス優先度が 0 に設定されているので、DR や BDR になる資格がありません。ネイバーになることはできますが、双方向状態になるだけです。
このトポロジのネイバー テーブルは次のようになります。
DRother1# show ip ospf neighbor Neighbor ID Pri State Dead Time Address Interface 170.170.9.5 1 FULL/DR 00:00:30 170.170.9.5 Serial0.5 170.170.10.8 0 2WAY/DROTHER 00:00:38 170.170.9.8 Serial0.5 DRother1#
上記の図で、DRother1 ルータが DRother2 ルータとの間で双方向隣接関係を確立していることに注目してください。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
10-Aug-2005 |
初版 |