show isdn status コマンドでは、すべての Integrated Services Digital Network(ISDN; サービス総合デジタルネットワーク)インターフェイス、または特定の ISDN インターフェイスのステータスが表示されます。ISDN Basic Rate Interface(BRI; 基本インターフェイス)のトラブルシューティングを行うときは、まずルータが電話会社の ISDN スイッチと適切に通信できるかどうかを調べる必要があります。通信について確認したら、ダイヤラ インターフェイスや対象トラフィック定義、PPP 障害といった、より上位の問題のトラブルシューティングに進むことができます。
このドキュメントでは、show isdn status コマンドを使用し、問題の原因がレイヤ 1(L1)であると判断した場合を想定しています。
レイヤ 1 の DEACTIVATED ステータスの例を次に示します。
maui-nas-01# show isdn status The current ISDN Switchtype = basic-ni1 ISDN BRI0 interface Layer 1 Status: DEACTIVATED !--- This shows ACTIVE or DEACTIVATED. !--- Output suppressed.
show isdn status コマンドについての詳細は、『show isdn status コマンドを使用した BRI のトラブルシューティング』を参照してください。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このマニュアルの情報は、特定のラボ環境に置かれたデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。実稼動中のネットワークで作業をしている場合、実際にコマンドを使用する前に、その潜在的な影響について理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
show isdn status コマンドにより、レイヤ 1 ステータスが非アクティブであることが示される場合は、ルータでは電話会社の ISDN スイッチへのレイヤ 1 接続が確立されていません。
このセクションのステップを実行し、各ステップの実行後に show isdn status コマンドを発行して、レイヤ 1 がアップ(ACTIVE)かどうかをチェックしてください。 レイヤ 1 がアクティブの場合は、「BRI レイヤ 2 に関するトラブルシューティング」に進みます。
対象の BRI インターフェイスで shutdown コマンドを発行し、続いて no shutdown コマンドを発行します。
これで BRI インターフェイスは administratively down になりません。clear interface bri number コマンドを発行してインターフェイスをリセットすることもできます。
BRI インターフェイスで backup interface コマンドが設定されていないことを確認します。
このコマンドはバックアップが開始されるまで BRI インターフェイスを非アクティブにします。必要であれば、no backup interface interface_type interface_number コマンドを発行して、このコマンドを削除してください。バックアップの適切な設定方法の詳細は、『DDR バックアップの設定とトラブルシューティング』を参照してください。
show isdn status コマンドを発行し、インターフェイスのスイッチ タイプが正しく設定されていることを確認します。スイッチ タイプが設定されていない場合、または設定が正しくない場合は、インターフェイスでスイッチ タイプを設定します。
スイッチ タイプが設定されていない出力例を次に示します。
maui-soho-01# show isdn status **** No Global ISDN Switchtype currently defined **** ISDN BRI0 interface dsl 0, interface ISDN Switchtype = none Layer 1 Status: ACTIVE Layer 2 Status: Layer 2 NOT Activated !-- An invalid switch type can be displayed as a Layer 1 or Layer 2 problem. Layer 3 Status: 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 0 CCBs = 0 The Free Channel Mask: 0x80000003 Total Allocated ISDN CCBs = 0
ヒント:設定を必要とするスイッチ タイプについては、電話会社から明示的な指定があります。特に北米地域では、電話会社がスイッチ タイプを custom や national に指定している場合があります。その場合は、次のガイドラインによりスイッチ タイプの設定を判別してください。
custom:電話会社からスイッチタイプが custom であると通知された場合は、ルータのスイッチタイプを次のいずれかに設定します。
basic-5ess:5ESS スイッチを使用する BRI
primary-5ess:5ESS スイッチを使用する PRI
basic-dms:DMS スイッチを使用する BRI
primary-dms:DMS スイッチを使用する PRI
national:BRI の場合は National ISDN-1(NI-1)規格、PRI の場合は NI-2 規格に準拠するスイッチ タイプ。電話会社から通知されたスイッチ タイプが「National」の場合は、Cisco ルータの設定を basic-ni(BRI の場合)または primary-ni(PRI の場合)にしてください。
注:Cisco IOS®ソフトウェアリリース11.2までの場合、設定されたISDNスイッチタイプはグローバルコマンドです。つまり、Cisco IOSソフトウェアリリース11.2以前の同じCiscoシャーシではBRIカードとPRIカードを使用できません。Cisco IOS ソフトウェア リリース 11.3T 以降では、1 つの Cisco IOS シャーシ内で複数のスイッチ タイプがサポートされています。
使用している装置のスイッチタイプについて電話会社に確認します。その後、isdn switch-type コマンドを発行してルータを設定します。
maui-soho-01# configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. maui-soho-01(config)# isdn switch-type basic-5ess maui-soho-01(config)# exit
場合によっては、ISDN コールが発信または着信された際に Terminal Endpoint Identifier(TEI; ターミナル エンドポイント識別子)ネゴシエーションが行われるように、BRI インターフェイスで isdn tei-negotiation first-call を設定する必要があります。
通常、この設定は、ヨーロッパの ISDN サービスや、TEI ネゴシエーションを開始する設計になっている DMS100 スイッチへの接続に使用されます。ルータには、電源投入時に ISDN スイッチによって TEI が割り当てられます。特にヨーロッパでは、アクティブ コールがないときにスイッチがレイヤ 1 またはレイヤ 2 を非アクティブにする場合があります。
maui-soho-01(config)# interface bri 0 maui-soho-01(config-if)# isdn tei-negotiation first-call
この場合、TEI ネゴシエーションが行われるには、ダイヤルアウトを開始するか、またはコールを着信する必要があることがあります。ダイヤルアウトを行うには、DDR 設定が正しいことを確認します。
show interface bri number コマンドまたは show version コマンドを発行して、ルータの BRI インターフェイスのタイプを判別します。
U インターフェイスを備えたルータの例を次に示します。
maui-soho-01# show interfaces bri 0 BRI0 is up, line protocol is up (spoofing) Hardware is BRI with U interface and external S bus interface !--- Output suppressed. maui-soho-01# show version !--- Output suppressed. cisco 1604 (68360) processor (revision C) with 3072K/1024K bytes of memory. Processor board ID 09895320, with hardware revision 00972006 Bridging software. X.25 software, Version 3.0.0. Basic Rate ISDN software, Version 1.1. 1 Ethernet/IEEE 802.3 interface(s) 1 Serial(sync/async) network interface(s) 1 ISDN Basic Rate interface(s) U interface with external S bus interface for ISDN Basic Rate interface. System/IO memory with parity disabled !--- Output suppressed.
ISDN 実装の差異により、回線に必要な顧客機器は世界中の国や地域で異なります。次の表を参考にして、ルータを電話会社のジャックに正しく接続します。
ルータのインターフェイス タイプ | 北米地域 | それ以外の地域 |
---|---|---|
U インターフェイス | 電話会社のジャックに直接接続します。 | 使用できません。 |
S/T インターフェイス | 外部 Network Termination 1(NT-1; ネットワーク終端 1)に接続し、NT-1 から電話会社のジャックに接続します。 | 電話会社のジャックに直接接続します。 |
北米地域では、ルータの BRI インターフェイスが U インターフェイスの場合、ルータを電話会社のジャックに直接接続できます。それ以外の地域では、NT-1 が電話会社のネットワークに組み込まれており、ルータの S/T インターフェイスを電話会社のジャックに直接接続します。電話会社のドキュメントを参照して、BRI インターフェイス、ケーブル、および付加装置が適切であることを確認します。
北米地域で BRI S/T インターフェイスを使用する場合は、必要な外部 NT-1 のステータス ライトを確認します。
ステータス ライトの意味については、NT-1 のハードウェア ドキュメントを参照してください。
NT-1 ステータス ライトが問題を示していない場合は、NT-1 で終端抵抗(オーム)を設定するスイッチをチェックします。 スイッチがある場合は 100 オームに設定します。ここで、外部 NT-1 の電源をオフ/オンします。ルータが NT-1 の S/T ポートに接続されていることを確認します。NT-1 の U ポートは必ず ISDN ジャックに接続します。
BRI WAN Interface Card(WIC; WAN インターフェイス カード)の場合は、WIC のドキュメントを参照して各種 LED の意味を確認します。
ルータから ISDN ジャックまでのケーブルを交換します。
U インターフェイスでは、ケーブルはストレート型 RJ-45 を使用し、中央に 2 つのピン(ピン 4 および 5)があるものを使用します。 一方のS/Tインターフェイスでは、ピン3、4、5、および6が使用されています。ケーブルがストレートかどうかを確認するには、RJ-45ケーブルの両端を並べて保持し、ピンが同じ順序であることを確認してください。これらの各ピンについて端子間が導通していることを、ケーブル テスターを使用して確認します。また、ケーブル長は 23 フィート(7 m)未満が望まれます。32.8 フィート(10 m)を超えないようにしてください。
U および S/T インターフェイスのピン配置を次の表に示します。
ISDN BRI S/T ポートのピン配置RJ-45 8 ピン 1 | TE1/TA | NT | 極性 |
---|---|---|---|
3 | トランスミット | 受信 | + |
4 | 受信 | トランスミット | + |
5 | 受信 | トランスミット | - |
6 | トランスミット | 受信 | - |
1 ピン 1、2、7、8 は使用しません。
詳細は、『サービス総合デジタルネットワーク』を参照してください。
ISDN BRI U ポートのピン配置RJ-45 8 ピン 1 | 機能 |
---|---|
4 | U インターフェイス ネットワーク接続(Tip) |
5 | U インターフェイス ネットワーク接続(Ring) |
1 ピン 1、2、3、6、7、8 は使用しません。
一般のアナログ電話を用意し、ISDN ジャックに差し込みます。クリッキング ノイズ、ホワイト ノイズ、またはライト スタティックが聞こえるはずです。これらのいずれも聞こえない場合は、アクティブなISDN回線ではありません。回線が取り付けられており、正しいドロップポイントに接続していることを確認します。
ルータをリロードします。
このステータスは、レイヤ 1 がアップで、電話会社に接続されていることを示しています。それでも ISDN に問題がある場合は、『show isdn status コマンドを使用した BRI のトラブルシューティング』に進んでください。
上記以外に発生する可能性のあるレイヤ 1 ステータスを次に示します。
GOINGDOWN
INIT
TESTING
RESET
DELEATED(綴りが間違っていますが、出力にはこのように表示されます)
SHUTDOWN
ACTIVATING
ACTIVE_ErrorInd
これらの状態のほとんどは一時的なものであり、clear interface bri number コマンドまたはルータのリロードによってクリアできます。この状態が長期間続く場合は、電話会社にトラブルシューティングを依頼してください。また、ケーブルやその他のハードウェアについても確認する必要があります。詳細については、「レイヤ1のステータス:DEACTIVATEDセクション。
上級ユーザは、このリファレンスを利用して ISDN レイヤ 1 の問題を切り分けることができます。
注:ISDNレイヤ1はITU-T I.430規格で定義され ます。ISDNレイヤ1の状態と信号の詳細については、I.430を参照してください。
ISDN レイヤ 1 に関する高度なトラブルシューティングを行うには、show controller bri number コマンドを発行します。
たとえば、次のようなレイヤ 1 ステータスについて考えます。
router# show isdn status bri 1/5 The current ISDN Switchtype = basic-net3 ISDN BRI1/5 interface Layer 1 Status: ACTIVE_ErrorInd Layer 2 Status: Layer 2 NOT Activated Layer 3 Status: 0 Active Layer 3 Call(s) Activated dsl 13 CCBs = 0 Total Allocated ISDN CCBs = 7
レイヤ 1 の状態は ACTIVE でも DEACTIVATED でもないため、show controller bri コマンドを発行してさらに詳しく調べる必要があります。show controller bri number では、レイヤ 1 のアクティベーション ステータスなど、BRI コントローラに関する情報が表示されます。
router# show controller bri 1/5 BRI slot 1 interface 5 Layer 1 is PENDING ACTIVATION. (ISDN L1 State F6) Master clock for slot 1 is bri interface 1. Total chip configuration successes: 2522, failures: 0, timeouts: 0 D Channel Information: !--- Output suppressed.
レイヤ1はPENDING ACTIVATIONで、L1の状態はF6であることに注意してください。この表を使用して、L1の状態を解釈してください。
L1 状態の定義L1 状態 | L1 状態の名前 | L1 状態の説明 |
---|---|---|
F1 | Inactive | この非アクティブ(電源オフ)状態では、Terminal Equipment(TE; 端末装置)1 が何も送信しておらず、入力信号の存在を検出できません。 |
F2 | 検知中 | TE の電源がオンになっていて、TE が受信している信号(存在する場合)のタイプを特定できなかった場合、この状態に入ります。この状態では、TE が低電力消費モードに入る可能性があります。 |
F3 | 非アクティブ | 物理プロトコルの非アクティブ状態です。Network Termination(NT; ネットワーク終端)2 も TE も送信を行っていません。この状態では、TE が低電力消費モードに入る可能性があります。 |
F4 | 信号待ち | TE はアクティベーションの開始を求める際に、Activation 信号を NT に送信して応答を待ちます。 |
F5 | 入力識別中 | NT からなんらかの信号を初めて受信すると、TE は Activation 信号の送信をやめ、NT からのアクティベーション信号または同期フレームを待ちます。 |
F6 | 同期 | TE は NT からのアクティベーション信号を受信すると同期フレームで応答し、NT からの同期フレームを待ちます。 |
F7 | アクティブ | プロトコルが双方向でアクティブになっている通常のアクティブ状態です。NT と TE の両方が通常のフレームを送信しています。状態 F7 は、B チャネルおよび D チャネルに運用データが含まれているただ 1 つの状態です。 |
F8 | フレーム同期喪失 | TE がフレーム同期を失い、再同期を待っているときの状態です。 |
1 端末装置は、TE1、TA、および NT-2 の機能グループのレイヤ 1 部分を終端することを意味します。
2 ネットワーク終端は、NT-1 および NT-2 の機能グループのレイヤ 1 部分をネットワーク終端することを意味します。
詳細は、『サービス総合デジタルネットワーク』を参照してください。
ほとんどのL1状態は一時的なものであり、clear interface bri numberコマンドまたはルータのリロードを使用してクリアすることができます。この状態が長期間続く場合は、電話会社にトラブルシューティングを依頼してください。また、ケーブルやその他のハードウェアについても確認する必要があります。詳細については、「レイヤ1のステータス:DEACTIVATEDセクション。
注:このセクションで説明されているレイヤ1の状態の詳細については、ITU-T I.430仕様のセクション6.2を参照してくださ 。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
29-Jan-2008 |
初版 |