以下に、エンジニアリングとネットワーク配置のガイドラインを示します。このガイドラインでは、Cisco CMTS 製品ライン、特に、ブロードバンド ルータ uBR72xx ファミリを展開するときに、すべてのブロードバンド サービス プロバイダーに対して考慮すべき特定のパフォーマンス要因の概要を示します。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
この文書では、次の 3 つのモデルの Cisco ブロードバンド CMTS ルータについて説明します。
uBR7223
uBR7246
uBR7246-VXR
3 つのモデルはすべて、PCI バス アーキテクチャに基づいています。
最初の 2 つのモデルは、速度 1 Gbps の単一の PCI バックプレーンに基づいていますが、通常は PCI 調停のオーバーヘッドがあるために、600 ~ 800 Mbps で動作します。
VXR は 2 つの PCI バックプレーンを使用しており、それぞれ 600 Mbps で 1.2 Gbps のスループットを達成します。これは控えめな概算であり、実際のパフォーマンスはこの数字を越える可能性があります。
uBR および uBR-VXR のモデルは Data over Cable System Interface Specification(DOCSIS)1.0/1.1 プロトコルをサポートしており、ケーブル モデム ベースの DOCSIS と相互運用性があります。DOCSIS 1.1 機能を有効にするために Cisco CMTS に必要なのは、ソフトウェア アップグレードだけです。ハードウェアは完全に DOCSIS 1.1 に準拠します。
DOCSIS 1.0 Radio Frequency Interface(RFI; 無線周波数)仕様の SP-RFI-I05-991105 では、ダウンストリーム CMTS 送信機ごとに 8191 個の Service IDentifiers(SID)がサポートされるように規定されていますが、この 16 個は将来の使用のために確保されます。これにより、uBR CMTS の各ダウンストリームに、使用可能な SID が 8,175 個できます。4 スロット 7246 の場合に関しては、SID 32,700 個までという理論上の制限があります。各ケーブル モデムには少なくとも 1 個の SID が必要ですが、複数の SID を保持して、Data や Voice などのさまざまなタイプの伝送に割り当てることも可能です。
Cisco uBR7200 MAC コードには、これ以上各ラインカードの CM の数を制限するような、実装上の制限はありません。DOCSIS プロトコルの制限である 8,175 個(最大ユニキャスト SID 制限)という数は、実際の HFC ネットワークでは、HFC/RF 工場品質(リターン パス品質)、統合プランにおける HHP の数、および DHCP/ToD/TFTP パフォーマンス機能によって制限されます。
プロバイダーには、各アップストリーム ポートの CM の数を適度に保つことを強く推奨します。これに関しても、シスコによる実装上の制限ではありません。DOCSIS のアップストリーム チャネルは、マルチアクセスで時間調整されたコンテンションベースの通信チャネルです。衝突の数が過度に多いために起こるレーザー クリッピングなどの悪影響を防ぐため、1 つのアップストリームのコンテンション レベルを高くしすぎないようにします。また、過剰な衝突によって発生する現象に、ケーブル モデムのリカバリ時間の遅延があります。これは、多数のケーブル モデムがすでにデータを送信しているときに、少ないレンジングの機会がモデム間で争われることによって発生します。Cisco CMTS はダイナミックなレンジングを使用して、モデムが常に登録する機会を得られるようにします。ただし、その機会の回数は、ユーザのデータ リクエストを許可するために、アップストリームで検出されるロードが増加するにつれて減少します。
アップストリームがあまりに多くのモデムで過度にロードされると、モデムがオンライン状態に戻るまでにさらに長い時間がかかるので、お客様の満足度に影響するおそれがあります。
注:各アップストリーム(US)チャネル/ラインカードで同時にアクティブなサブスクライバの数をトラフィックエンジニアに伝えることも非常に重要です。これにより、ピークの混雑時にもサービスの一貫性が維持され、適切に機能します。
シスコは上記の点を考慮に入れて、2 通りのCM数を推奨します。。
推奨される各ラインカードの最大 CM数 = 各回線に約 1000 ~ 1200 のモデム(主に、アクティビティのピーク時にお客様がその加入者に許容してもらいたいと考える、最悪の場合のダウンロード速度によって決定されます)。
推奨される各 US 受信機の最大 CM 数 = 各アップストリーム ポートで 200 以下(主にリターンパスのノイズ、SNR、衝突レベル制御によって決定されます。)
計算を行うにあたり、次のような状況を想定します(シスコのトラフィック エンジニアリングに関するホワイト ペーパー『Multimedia Traffic Engineering for HFC Networks』(1.27 MB の PDF ファイル)を参照)。
既定の加入者プールのうち、40 % は混雑時にログオンしています。
混雑時にログオンしている加入者 40 % のうち、25 % だけが同時にデータをダウンロードしており、ピーク時のアクティビティの一因となっています。
したがって、混雑時のデータ需要のピークは、加入者ベースの 10%(.4 *.25)になります。
サービス プロバイダーが、ピークの混雑時における最悪の場合の、各ユーザのデータ スループットを 256 Kbps 以上に制限したいと仮定します。これはすなわち、単一の 27 Mbps 使用可能な 64QAM ダウンストリーム チャネル帯域幅を備えた既定のラインカード 1 枚について、同時にアクティブとなる加入者数の合計は 27000000/256000 ~= 100 に制限する必要があることを意味します。
同時にアクティブな加入者が総加入者ベースの 10 % であると想定すると、ライン カードあたりの加入者数は 約 1000 になります。シスコでは、ライン カードあたりの加入者数が 1,500 を越えないようにすることを強く推奨しています。そうしないと、混雑時にサービスが著しく低下します。サービスの低下は、接続の切断やオフライン状態を引き起こしたり、ケーブル モデムのお客様の観点からはパフォーマンスの極度な低下にもつながったします。また、再登録を試行するモデムの平均レンジング時間が長くなったり、その他のシステムやパフォーマンスの異常にもつながる可能性があります。
加入者は、全部で 6 つのアップストリーム間でかなり均一に分布していることから、MC16c カードが使用されると仮定した場合、お客様は各 US ポートに合計約 200 ~ 250 の加入者を保持することになります。
別の見方をすると、これはピークの混雑時に各 US ポートで競合するユーザの数を制限しようとしていることになります。シスコでは、USごとに同時にアクティブ/コンテンディングするCMの平均数を10 ~ 20程度に保つことを推奨しています。これらの推奨事項は、各USレシーバで衝突するモデムの多面的要因がHFCネットワークでどのように飽和およびクリッピングするかにも基基基します。各 US ポートで争う最大 CM 数の制限を設けた後は、この数を大まかに 10 で乗算することで(ピーク時に必要な値を 10% と仮定)、各 US ポートの最大 CM 数の合計が得られます。 シスコは、世界各地に何千という DOCSIS CMTS のユニットを運用しています。シスコは実社会におけるサービスの実務経験にエンジニアリング データを適用することにより、DOCSIS プロトコルとその動作方法に基づいて、次のことを証明しました。すなわち、展開を最大限に成功させるには、各 US の加入者が 250 を超えないことが条件です。
もちろん、すべてのサービスやオファリングはお客様によって異なるので、お客様はこの文書で紹介する技術やその他のトラフィック エンジニアリングに関する資料を基に、お客様の状況に適当なモデム数を決定する必要があります。シスコが行えることは、多数の要因に基づく非常に主観的なデータに基づき、アップストリームまたはラインカードごとの最大または適当なケーブル モデム数の決定を行い、それを推奨するに留まります。
DOCSIS 標準に基づき、ケーブルネットワーク上でデータを展開したいと希望するお客様が成功するには、多くの要因を考慮に入れる必要があることをシスコは認識しています。確実に成功させるための基本的なポイントは、お客様を適当な範囲内でドメインに戻ってくるようにすることです。各アップストリーム ポートの Homes Passed(HHP)を適当なレベルに留めることで、展開の成功率や維持費が大幅に改善するほか、顧客満足度を向上できることがわかっています。シスコでは、各 US ポートの 2,000 の Home Passed が通過率 10 % 未満であることを確認しました。各 US ポートで最大の HHP に、しきい値として 2,000 のホームを使用する方法は、費用有効な設計ガイドラインです。オペレータはこのガイドラインを使用することにより、迅速な展開が可能になると同時に、保守エリアを適切に保つことができます。オペレータは、大規模なエリア(たとえば 4,000 ~ 10,000 の Home Passed)を統合することで、ノイズを誘発するリターン パス ネットワークのどのセクションもある US レシーバに集中するため、すべての加入者へのサービスに影響することに注意する必要があります。Voice の展開を検討する場合、上記の情報をさらに綿密に調査する必要があります。Voice の実行を試みるネットワークが成功する確率は、展開するしきい値をこの文書で推奨する値以下に保つことによってはるかに高くなります。
上記の情報より、シスコは各 US レシーバ ポートの Home Passed を最大 2,000 、通過率を約10パーセントとすることを強く推奨します。アップストリーム ポートを追加するコストは、リターン パスの過剰使用による通常の障害、または突発的で不規則なネットワーク動作によって生じるコストよりもはるかに安く済みます。この推奨事項はこの先さらに縮小されるので、プロバイダーは前述した HFC 設計の White Paper を使用して、各自のネットワークで予測または観測される具体的なネットワーク パラメータに基づいてリターン パス HHP を設計することが奨励されます。