概要
デジタル信号レベル 3(DS-3)は、最大 44.736 Mbps の速度をサポートし、WAN バックボーン アプリケーションでは一般的なリンクのタイプです。DS-3 回線は、最大 28 個の DS-1(T1)回線を同時に伝送するように設計されています。American National Standards Institute(ANSI; 米国規格協会)の文書「T1.107-1998」は、DS-3 回線の電気的な仕様を定義しています。
E3 は、最大 34.368 Mbps の速度をサポートし、北米以外の地域の WAN バックボーン アプリケーションでは一般的なリンクのタイプです。
大部分の DS-3 および E3 インターフェイスでは、4 つのフレーミング フォーマットを選択できます。これらのフォーマットでは、オーバーヘッドのバイト数、ペイロードのバイト数、および隣接 ATM セルの認識方式が異なります。
この文書では、4 つのフレーミング フォーマットを解説し、show controllers atm コマンドで表示される、物理レイヤでの回線エラーのトラブルシューティング方法について説明します。
前提条件
要件
このドキュメントに特有の要件はありません。
使用するコンポーネント
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
表記法
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
ADMとPLCPについて
ATMテクノロジーの場合、このドキュメントではG.704勧告で説明されているマルチフレーム形式を使用します。
DS-3 ビット ストリームは、M フレームと呼ばれる、一連のマルチフレームに編成されています。各 M フレームは、それぞれ 680 ビットからなる 7 つの M サブフレームに分割されます。さらに M サブフレームは、それぞれ 85 ビットからなる 8 つのブロックに分割されます。85ビットブロックは、84のユーザ情報ビットと、次のフレーミングオーバーヘッドビットの1つから構成されます。
-
P1、P2:Pビットは、フレームが物理回線を通過する際にビットエラーから保護するためのパリティチェックとして機能します。
-
X1、X2:Xビットは、リモートエンドへの受信エラーマルチフレームを示すために使用されます。
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F1、F2、F3、F4:Fビットは、受信する機器がオーバーヘッドビット位置を識別するために使用するアライメント信号として機能します。値は、F1 = 1、F2 = 0、F3 = 0、F4 = 1です。
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M1、M2、M3:Mビットは、マルチフレーム内の7つのMサブフレームすべてを特定するために使用されるマルチフレームアライメント信号として機能します。値はM1 = 0、M2 = 1、M3 = 0です。
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Cビットは、M23フレーミングのビットスタッフとして、およびCビットフレーミングによるインサービスエンドツーエンドパスパフォーマンスモニタリングとして使用されます。
各 M フレームの合計 4760 ビットの内訳は、ユーザ用が 4704 ビットと、フレーミング オーバーヘッド用が 56 ビットです。
E3
ATMテクノロジーの場合、このドキュメントでは、G.832またはG.751の推奨事項で説明されている基本的なフレーム構造を使用します。
G.832では、基本的なE3フレーム構造は7オクテットのオーバーヘッドと530オクテットのペイロードを持ちます。オーバーヘッドバイトは、フレームのアライメント、エラーモニタリング、およびメンテナンスに使用されます。
G.751では、4つのデジタル信号が8448 kbit/sの速度で多重化されます
マッピング
ATMセルをDS-3またはE3フレーミング構造にマッピングする方法は次の2つあります。
G.832勧告を使用するE3は、ADMマッピングのみを使用できます。
PLCP
技術文書では一般に、サブフレームで構成される PLCP は、セルとオーバーヘッド バイトの行と列から成る 2 次元のグリッドとして表現されます。次の図に示すように、各行は53バイトのATMセルと4バイトのフレーミングオーバーヘッドと管理で構成されます。
この図では、POI はパス オーバーヘッド インジケータを表し、POH はパス オーバーヘッドを表します。A1 と A2 は、フレームの配列を提供し、1 と 0 からなる明確なパターンに従う必要があります。
ADM
当初、PLCP は、物理レイヤから特別な上位レイヤにタイミング情報を渡して、アイソクロナス サービスをサポートするように設計されました。ATMではこれらのサービスを使用しないため、PLCPでは追加のオーバーヘッドが発生し、PLCPの代わりにADMが使用されます。
ADMは、ATMセルをDS-3またはE3フレームに直接マッピングします。ATM 5バイトヘッダーのヘッダーエラーチェック(HEC)フィールドは、フレーム内の初期セルの先頭を識別するために使用されます。受信デバイスは着信ビット ストリームを調べ、8 ビットのセットが、その前に存在する 32 ビットに対する有効な Cyclic Redundancy Check(CRC; 巡回冗長検査)を構成しているかどうかを確認します。
PLCPよりもADMを使用する理由を理解するには、次の2つのプロトコルの違いを調べます。
シスコ インターフェイスでのフレーミングの選択
特定のハードウェアに応じて、Cisco ATMルータおよびCatalystスイッチインターフェイスに次のフレーミング形式を設定できます。特定のハードウェアがさまざまなデフォルトを使用する点に注意してください。たとえば、CS-AIP-DS3のデフォルト(および唯一のオプション)はcbitplcpで、PA-A3-T3およびPA-A6-T3はデフォルト値のcbitadmを使用します。ハードウェアを交換する際には、フレーミング フォーマットのチェックを忘れないようにしてください。実行中の設定では、デフォルトのパラメータは表示されません。
デフォルト以外の値を設定するには、atm framing コマンドを使用します。変更を有効にするには、インターフェイスを shut または no shut にする必要があります。
製品(DS-3) |
m23plcp |
cbitplcp |
m23adm |
cbitadm |
PA-A6-T3 |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
PA-A2-4T1C-T3ATM |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
PA-A3-T3 |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
CX-AIP-DS3 |
No |
Yes |
No |
No |
NP-1A-DS3 (4500/4700) |
Yes |
Yes |
Yes |
可能* |
NM-1A-T3 (2600/3600) |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
Lightstream 1010 または Catalyst 85x0 PAM |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
Catalyst 5000 ATM モジュール |
Yes |
Yes |
Yes |
Yes |
* cbitadmには、Cisco IOS®ソフトウェアリリース12.1(1)T以降が必要です。
製品(E3) |
g832adm |
g751adm |
g751plcp |
PA-A6-E3 |
Yes |
Yes |
Yes |
PA-A2-4T1C-E3ATM |
Yes |
Yes |
Yes |
PA-A3-E3 |
Yes |
Yes |
Yes |
CX-AIP-E3 |
Yes |
No |
Yes |
NP-1A-E3 (4500/4700) |
Yes |
Yes |
Yes |
NM-1A-E3 (2600/3600) |
Yes |
Yes |
Yes |
Lightstream 1010 または Catalyst 85x0 PAM |
Yes |
Yes |
Yes |
設定の確認
現在アクティブなフレーミング フォーマットを表示するには、show atm interface atm コマンドおよび show controllers atm コマンドを使用します。
AIP#show atm interface atm 1/0
ATM interface ATM1/0:
AAL enabled: AAL5 , Maximum VCs: 2048, Current VCCs: 2
Tx buffers 256, Rx buffers 256, Exception Queue: 32, Raw Queue: 32
VP Filter: 0x7B, VCIs per VPI: 1024, Max. Datagram Size:4496
PLIM Type:E3 - 34Mbps, Framing is G.751 PLCP, TX clocking: LINE
31866 input, 27590 output, 0 IN fast, 0 OUT fast
Rate-Queue 0 set to 34000Kbps, reg=0x4C0 DYNAMIC, 2 VCCs
Config. is ACTIVE
PA-A3#show controllers atm 1/0/0
ATM1/0/0: Port adaptor specific information
Hardware is DS3 (45Mbps) port adaptor
Framer is PMC PM7345 S/UNI-PDH, SAR is LSI ATMIZER II
Framing mode: DS3 C-bit ADM
No alarm detected
Facility statistics: current interval elapsed 796 seconds
lcv fbe ezd pe ppe febe hcse
----------------------------------------------------------------------
lcv: Line Code Violation
be: Framing Bit Error
ezd: Summed Excessive Zeros
PE: Parity Error
ppe: Path Parity Error
febe: Far-end Block Error
hcse: Rx Cell HCS Error
ATM Interface Processor(AIP; ATM インターフェイス プロセッサ)以外のインターフェイスでは、show controllers atm コマンドを使用すると、アクティブ アラームと 非 0 エラー カウンタも表示されます。表示された出力を設備に関する統計情報として参照ください。0 以外の値は、ルータ インターフェイスと別のネットワーク デバイス(通常は、ATM ネットワーク プロバイダーのクラウドにあるスイッチ)の間にある物理回線に問題があることを示します。
フレーミングタイプの不一致のトラブルシューティング
ATM リンクの両端のフレーミング タイプが一致しない場合、ATM インターフェイスはダウンしてしまいます。show controller atmコマンドは、次の出力に示すように、フレーム同期外れ(FRMR OOF)不具合とATMセル間直接識別(ADM OOCD)メッセージを報告します。
router#show controller atm 3/0
Interface ATM3/0 is down
Hardware is RS8234 ATM DS3
[output omitted]
Framer Chip Type PM7345
Framer Chip ID 0x20
Framer State RUNNING
Defect FRMR OOF
Defect ADM OOCD
Loopback Mode NONE
Clock Source INTERNAL
DS3 Scrambling ON
Framing DS3 C-bit direct mapping
両端でフレーミング設定を確認して、OOF エラーおよび OOCD エラーのトラブルシューティングを行います。他のフレーミング タイプを設定して試すには、atm framing コマンドを使用します。
Request for Comments(RFC):RFC 1407では、DS-3およびE3のアラームとエラーを定義しています。ガイダンスは、『DS-3およびE3 ATMインターフェイスの回線の問題とエラーのトラブルシューティング』を参照してください。