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ユニファイド データセンター ファブリック:コストの削減と柔軟性の向上
概要
ユニファイド データセンター ネットワーク ファブリックによってどのようにコストが削減され、ビジネス要件に合わせたデータセンター資産の配置がどれくらい改善されるかについて説明します。
課題
企業がビジネス戦略を実現するために、さらにはその戦略を変えるために IT に依存する度合いがますます高まる中、企業の IT インフラストラクチャはこれまで以上に強力かつ俊敏であることと、優れたコスト効率が求められます。今日の企業は、システムがいつでも利用できること、どこからでもアクセスできること、そして絶えず変化するビジネス ニーズに迅速かつ円滑に対応できることを必要としています。
これらの目的をエンタープライズ データセンターが果たすには、既存のリソースの利用効率を高め、運用を高速化し、俊敏性を向上させることが必要です。具体的には、データセンターは次のような課題に対処する必要があります。
- 資産の利用効率を向上させ、資本コストを削減したり、支出を先送りする。
- 電力供給と冷却のためのエネルギー消費を削減し、コストを削減するだけでなく、環境への配慮という事業方針を実行する。
- データおよびリソースをリアルタイムで利用できるようにすることで、現在および将来のビジネス ニーズに応じた柔軟な配置を可能にする。
これらの課題に対処するには、進化するビジネス アプリケーションをより効率的にサポートできるように、単一のネットワークベース データセンター インフラストラクチャを構築して従来のサーバ、ストレージ、およびネットワークの運用を統合する必要があります。
現在特に注目を浴びているのは、サーバ環境とネットワークのサーバ アクセス レイヤという 2 つの領域です。サーバ環境は規模が大きく、サーバ数が数百あるいは数千にも及ぶため、小さな変更が非常に大きな影響をもたらすことがあります。マルチコア コンピューティングと仮想化テクノロジーによってデータセンターの世界は急速に変化しており、高帯域幅・低遅延のスイッチングが求められるようになりました。高密度化が進むラックマウント サーバやブレード サーバで複数の仮想環境が実行されるため、データセンター アーキテクチャにおける電力供給と冷却の需要が高まっています。仮想化によって利用効率が向上し、その結果、各サーバおよびブレードへの 10 ギガビット イーサネット、ファイバ チャネル、およびサーバ クラスタリングのネットワーク接続需要が増え続けています。幸いなことに、総所有コスト(TCO)、エネルギー効率、および複雑さの点での改善がさほど大きくなくても、データセンターに対する累積的効果は非常に大きくなることがあります。
サーバ環境において IT 部門が取り組む課題は多数に上ります。たとえば、すべてのサーバおよびブレード サーバ シャーシに、LAN やストレージ エリア ネットワーク(SAN)などの特定のネットワーク用およびバックアップ、管理、および仮想マシン モビリティのネットワーク用のアダプタを冗長化して 2 つずつ装備すると、コストと複雑さが増加してしまいます。
- 直接コスト
- 間接コスト
- インターフェイスを追加した結果、より大きなサーバ フォーム ファクタへの移行が必要になる。
- 追加したインターフェイスによって多数のアップストリーム スイッチ ポートが使用される。
- 追加したインフラストラクチャによって電力供給と冷却の負荷が高まる。
- 複雑さが増した結果、ビジネス継続性と障害回復の戦略が複雑になる。
その一方で、今日のサーバ インフラストラクチャのコストと複雑さに対処するための手段としてサーバ仮想化が台頭してきました。目的を達成する手段としては効果的ですが、サーバ仮想化によってトポロジが複雑になり、全体的な帯域幅使用量が増えるため、ネットワーク インフラストラクチャへの負荷が高くなりがちです。加えて、サーバおよびネットワーク境界の懸念に対処するための戦術的かつプロプライエタリなアプローチの中には、設計、運用、および管理のベスト プラクティスをないがしろにする傾向が見られるものがあります。
Cisco Data Center 3.0 戦略
Cisco® Data Center 3.0 は、現在のデータセンターが抱えるコスト効率やサービス柔軟性の問題に直接対処するための戦略です。現在のデータセンターの多くは、1 種類のアプリケーション、1 種類のサーバを基に偶発的に決定されたアーキテクチャと共に発展してきたものです。
Cisco Data Center 3.0 の中心となっているのは、データセンターの従来のそれぞれ独立したインフラストラクチャを、仮想化されたストレージ、コンピューティング、および I/O のリソースのプールに転換させるという概念です。このような統合は、TCO の直接削減を促進します。また、データセンターのリソースを細分化して動的かつ柔軟に割り当てることが仮想化によって可能になります。Cisco Data Center 3.0 に欠かせない要素は、データセンター全体にわたる調整戦略です。その目的は、この仮想化された環境の複雑さを減らすことと、変化するビジネス ニーズを察知して対応する能力をデータセンターに持たせることです。
Cisco Nexus 5000 シリーズ
Cisco Data Center 3.0 戦略の根幹にあるのは、「ユニファイド データセンター ネットワーク ファブリック」の概念です。このユニファイド ファブリックは、LAN、SAN、および サーバ クラスタリング のトラフィックを並行して処理するための運用特性を持ちます。データセンター内の複数のネットワークをただ 1 つのネットワークに統合することで、資本コストおよび運用コストの大幅な削減が促進されます。また、データセンター内のどのサーバにも常にどこからでも I/O が可能であることも同じく重要であり、データセンターのサービス能力、柔軟性、および復元力を著しく向上させます。
Cisco Nexus 5000 シリーズ スイッチは、ユニファイド ファブリックのための初のシスコ データセンター スイッチ製品であり、Cisco Data Center 3.0 戦略の実現へまた一歩近づいたことを体現しています。この 10 ギガビット イーサネット アクセス レイヤ スイッチの機能は次のとおりです。
- ユニファイド ファブリック:Cisco Nexus 5000 シリーズは、IP、ストレージ、およびサーバ クラスタリングのネットワークをイーサネットを介してユニファイド ファブリック上で統合することができます。サーバ インターフェイスの数が減り、ケーブル管理が単純になるため、コストが低下し、運用効率が向上すると共に、現在のデータセンター リソースへの投資が保護されます。このユニファイド ファブリックは、市場をリードする多数のベンダーとのパートナーシップの下で、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)や Cisco Data Center Ethernet などのプロトコル テクノロジーを使用するオープン標準を通して実現されます。
- 仮想マシン最適化サービス:仮想化されたデータセンターの構築を手がける IT 担当部門にとって最大の課題は、ネットワークのサービスと機能を保持したまま仮想マシンのプロビジョニングとモビリティをオーケストレートすることの難しさです。Cisco Nexus 5000 シリーズは、VM(仮想マシン)に最適化された環境を提供し、VM ごとに QoS(Quality of Service)などのサービスを提供できるようにします。これは、Data Center 3.0 ビジョンを実現するもので、サーバ クラスタ、ストレージ、ネットワーク リソースを統合して共有化し、アプリケーションやインフラストラクチャ サービスに対して必要に応じて共有プールからリソースを割り当てることで素早いプロビジョニングを可能にします。これによって IT 担当部門が直接的にビジネス要求の変化に対応できるようになります。仮想マシンを導入すると、VM モビリティなどの VM インフラストラクチャ サービスを実現するために、LAN トラフィック、SAN トラフィック、サーバ間通信が同時に発生します。Cisco Nexus 5000 では、これらのすべてがユニファイド ファブリックとして 1 つのネットワークに統合されます。またサーバ I/O の仮想化によって、Cisco Nexus 5000 シリーズがネットワークとサーバの接続を制御するので、ネットワークの煩雑さが削減されます。このアプローチにより、ネットワークはよりシンプルなものとなり、高い拡張性、複数のアップリンクをアクティブ/アクティブで使用することによるパフォーマンスの向上、ネットワーク リソースのきめ細かいコントロールが可能になります。
Cisco Nexus 5000 シリーズ スイッチは、戦略的ポイント製品ではありません。短期的なニーズに対処すると共に、ビジネスおよび技術面の長期的な戦略への統合も可能な全体的ソリューションです。このソリューションは、次の要素で構成されます。
- パートナーシップ:Cisco Nexus 5000 シリーズは、標準をベースとするオープンなプラットフォームであり、幅広い分野のパートナーによってサポートされます。パートナーから提供される統合型ネットワーク アダプタ(CNA)によって、LAN と SAN の両方に 1 つのアダプタから既存のオペレーティング システムおよびドライバを使用してアクセスできるようになります。また、低遅延・低コストのケーブルとトランシーバの組み合わせによって、電力消費量が大幅に削減されます。標準ベースのオープンなパートナーシップというアプローチが採用されている Cisco Nexus 5000 シリーズは、データセンター アーキテクチャのエンドツーエンドの整合性保証に役立ち、ビジネスの継続性、セキュリティ、および復元力を向上させます。
- Cisco Nexus 5000 シリーズ スイッチ:高パフォーマンスのユニファイド ファブリックをイーサネットを介して実現するために作られたこのシリーズは、現在のデータセンター資産への投資を保護すると共に、将来のビジネス ニーズの拡大に足並みを揃えるのに必要なパフォーマンス面および運用面での特性を備えています。
- Cisco NX-OS ソフトウェア オペレーティング システム:この Linux ベースのオペレーティング システムは、Cisco MDS 9000 SAN-OS ソフトウェアのロスレス アーキテクチャに、Cisco IOS® ソフトウェアのレイヤ 2 および 3 プロトコルのための豊富な機能を組み合わせたものです。
- Cisco Data Center Network Manager(DCNM):Cisco Nexus ファミリの管理ツールです。ユニファイド ファブリックの設計上の重要な目標である、運用効率の向上を目的としています。
- ライフサイクル サービスのための包括的なポートフォリオ:シスコは、企業における Cisco Data Center 3.0 戦略の設計、導入、および運用を支援するための包括的なサービスを用意しています。具体的には、ユニファイド ファブリックへの移行の利点の評価と、移行の設計、計画、実施、および保守を支援するための専門家によるサービスを提供しています。
- Cisco Data Center Assurance Program(DCAP):Cisco DCAP は、シスコ(およびサードパーティ ベンダー)のデータセンター テクノロジーをシステム レベルでテストして文書化する、ユニークな検証プログラムです。お客様のデータセンター インフラストラクチャの設計および導入を支援することを目的としています。データセンター インフラストラクチャの設計、構成、テスト計画、テスト結果、および推奨されるソフトウェア選択などについての検証済みベースラインをお客様に提供します。
Cisco Nexus 5000 シリーズ:ユニファイド ファブリックを実現することの利点
Cisco Nexus 5000 シリーズによって実現されるユニファイド データセンター ファブリックは、企業のビジネス上の優先事項に合わせて IT 資産を配置するのに役立ち、その効果は次のようなビジネス上の利点として現れます。
- TCO の削減:Cisco Nexus 5000 シリーズは、LAN、SAN、およびサーバ クラスタのトラフィックのためのユニファイド ファブリックをイーサネットを介して実現します。それまでばらばらに利用されていたリソースがこのユニファイド ファブリックによって統合され、利用効率が高まります。必要のないスイッチング インフラストラクチャが排除されるため、サーバ I/O アダプタおよびケーブルの数が最大 50% 削減され、電力供給と冷却のコストが最大 30% 低下します。このようなインフラストラクチャの単純化には、管理および運用関連の経常コスト削減という効果もあります。
- 投資の保護:ユニファイド ファブリックへの転換は、ビジネス面および技術面における必然的要因の登場と共に少しずつ進んでいきます。Cisco Nexus 5000 シリーズによって実現するユニファイド ファブリックは、この転換が進行する間も、企業のイーサネットおよびファイバ チャネルのインフラストラクチャへの既存の投資を保護します。Cisco Nexus 5000 シリーズは、イーサネット ネットワークとファイバ チャネル ネットワークの両方のアーキテクチャ、管理、運用のベスト プラクティスを守りながらユニファイド ファブリックの利点をすぐに活用できるように設計されています。このプラットフォームの利点を活用するために、スタッフ トレーニングに多額の資金を投じることやネットワーク アーキテクチャの計画および運用手順を変更することは必要はなく、アーキテクチャの全面的な変更に伴うリスクとも無縁です。
- ビジネスの俊敏性の向上:Cisco Nexus 5000 シリーズは仮想マシン最適化サービスをサポートしているため、セキュリティ ポリシー、Quality Of Service(QoS)、全体的パフォーマンスなどのプロビジョニング済みのネットワーク サービスはそのままで、アプリケーションをネットワーク内で移動させることができます。その結果、CPU 利用率や熱負荷などの要因に基づくアプリケーションの移動が容易になります。サーバ仮想化と Cisco Nexus 5000 シリーズの仮想マシン対応ネットワーク サービスの組み合わせによって実現する、動的かつ柔軟なアプリケーション インフラストラクチャの迅速なプロビジョニングを通して、IT 部門は変化するビジネス ニーズにすばやく対応できるようになります。
- ビジネスの復元力の強化:すべてのデータセンター クラス インフラストラクチャに期待されることですが、Cisco Nexus 5000 シリーズは、特定のハードウェアおよびオペレーティング システムを使用してコンポーネント レベルおよびシステム レベルの運用継続性を実現するように設計されています。コンポーネント レベルの保護に加えて、企業のビジネス継続能力に対しても、Cisco Nexus 5000 シリーズは非常に大きなプラスの効果をもたらします。仮想マシン最適化サービスは、ハードウェア障害が発生したときやアプリケーション需要が予想以上に増えたときに、アプリケーションをすばやく透過的に新しいインフラストラクチャへ移動するのに役立ちます。同様に、障害からの回復時は、インフラストラクチャが単純化され常時 I/O が可能であることから、サービスの回復が容易になります。つまり、「性能は高いけれど、ファイバ チャネルのホスト バス アダプタを備えていないために使えないサーバ」はなくなります。
まとめ
企業がビジネスの優位性を得るために IT に依存する度合いが高まると、この新しいビジネス システムをサポートするサーバ インフラストラクチャの規模も必然的に拡大します。Cisco Nexus 5000 シリーズによるサーバ アクセス ネットワーキング ソリューションは、この拡大に伴う最大の課題、つまり、無秩序に増加していく非効率的で柔軟性のないインフラストラクチャと、そのことが原因の TCO 上昇に対処します。Cisco Nexus 5000 シリーズは、これらの問題に直接対処すると同時に、サーバ仮想化などの関連戦略の実現可能性と適用可能性を高めます。
Cisco Nexus 5000 シリーズは、両方の分野で最高の結果をもたらします。このプラットフォームによるオープンな標準ベースのソリューションは、今日のデータセンターにおける最も差し迫った問題のいくつかに対処します。同時に、大規模なデータセンター改編のための基盤作りにも役立ちます。
関連情報
http://www.cisco.com/jp/go/nexus5000/
http://www.cisco.com/jp/go/dce/
http://www.cisco.com/jp/go/datacenter/