データ シートマルチフレックス トランク専用エコー キャンセル モジュールマルチフレックス トランク専用エコー キャンセル モジュール(MFT ECAN)は、シスコの ITU-T G.168 ECAN 拡張機能専用のリソースを提供することにより、要件の厳しいネットワーク環境での安定したエコー キャンセレーション パフォーマンスを実現します。このモジュールは、シスコの第 2 世代マルチフレックス トランク音声/WAN インターフェイス カード(MFT VWIC2)に取り付けるドーター カードであり、32 チャネル構成(1 ポート T1/E1 MFT VWIC2 で使用)と 64 チャネル構成(2 ポート T1/E1 MFT VWIC2 で使用)があります。図 1 に 64 チャネル MFT ECAN モジュールを、図 2 に 2 ポート T1/E1 MFT VWIC2 に取り付けられたモジュールを示します。 図 1 64 チャネル MFT ECAN モジュール 図 2 64 チャネル MFT ECAN モジュールを取り付けた 2 ポート T1/E1 MFT VWIC2 シスコの ITU-T G.168 ECAN 拡張機能は、MFT ECAN モジュールのほか、プラットフォーム、ネットワーク モジュール、または Advanced Integration Module(AIM)に搭載する一般的な音声リソース上で実行できます。たとえば、Cisco ISR(Integrated Services Router)2800 および 3800 シリーズは、シャーシに内蔵された Packet Voice DSP Module(PVDM2)やネットワーク モジュール上の Digital Signal Processor(DSP; デジタル信号プロセッサ)のリソースを使って G.168 ECAN 機能を実行できます。G.168 ECAN 機能を一般的な音声リソースを使用して実行した場合、処理およびメモリ上の制約により、エコー テール カバレッジは最大 64 ms に制限されます。このカバレッジによってほとんどのネットワーク条件に適合できますが、より長いエコー テール カバレッジが必要な場合もあります。MFT ECAN モジュールを適切な MFT VWIC2 に取り付けることにより、そのような状況に対応できるようになります。MTF ECAN モジュールの処理およびメモリ リソースによって、エコー キャンセラの事前定義と、128 ms の拡張エコー テール バッファが可能になるため、要件の厳しいネットワーク環境で安定したエコー キャンセレーション パフォーマンスを実現できます。 利点MTF ECAN モジュールまたは一般的な音声リソースによって実行される ITU-T G.168 ECAN 拡張機能の利点を次に示します。
MTF ECAN モジュールを使用した場合の ITU-T G.168 ECAN 拡張機能のその他の利点は、次のとおりです。
アプリケーションパケット音声ソリューション:要件の厳しいネットワークにおけるエコー キャンセレーション音声コールで、自分の声が送信パスから自分の受信(戻り)パスに漏出して聞こえる現象が「エコー」です。漏出は、アナログ回線でのみ発生し、デジタル音声トラフィックでは発生しません。アナログ信号は、ある配線から別の配線に電気的に漏出(コール クロストーク)したり、スピーカーからマイクへ空気を通じて音響的に漏出します。通常アナログ信号は、4 線アナログと 2 線アナログの変換を行うハイブリッド変圧器を通じて送信パスから受信パスへ漏出します。 エコーの 2 つの特性は、音の大きさと遅延です。エコーが大きくなったり、往復の遅延が長くなったりすると、ユーザに不快なものになります。Cisco MFT ECAN モジュールは、ネットワークのセクションでの長い遅延が原因のエコーを軽減するように設計されています。 エコー キャンセラは、ゲートウェイの PSTN(公衆交換電話網)側に接している音声ゲートウェイのコンポーネントであり、送信(Tx)パスから受信(Rx)パスに漏出したエコーのレベルを軽減します。ゲートウェイの PSTN 側に接続されたネットワーク部分(すべてのスイッチ、マルチプレクサ、PBX [構内交換機]、その他の IP ネットワーク、アナログ電話機、IP フォンなど)は、テール回線と呼ばれます。テール回線のアナログ コンポーネントは、アナログ テール回線と呼ばれ、ネットワークのこちら側のすべてのエコーの潜在的な発生元です。エコー キャンセラは、テール回線から送信されて WAN に向かう信号のエコー部分を除去します。Voice over IP(VoIP)ネットワークの多くには、2 つの PSTN または POTS(一般電話サービス)コンポーネントがあります。この場合、ネットワークの反対側のテール回線に接している別のゲートウェイが、そのテール回線で発生するエコーを除去しなければなりません。 エコー キャンセラは、送信(Tx)パスに送られた音声信号をバッファ内に保存し、受信(Rx)パスからエコー信号を除去します。エコー キャンセラ カバレッジ(テール カバレッジまたはテール長とも呼ばれます)とは、エコー キャンセラが、エコー(音声信号)の近似値をエコー キャンセレーション バッファ(メモリ)内で保持する期間です。エコー キャンセラ カバレッジは、ネットワークの片側のテール回線コンポーネントの遅延に対応できる長さにする必要があります。ほとんどの場合、64 ms のエコー キャンセラ カバレッジで十分であり、一般的な音声 DSP で実行される ITU-T G.168 ECAN 拡張機能で対応できます。多数の PSTN ホップ、複数のデジタル/アナログ変換、または複数の PBX が存在するネットワークや、エコー キャンセレーション機能が不十分あるいは無効になっている IP ネットワークでは、テール回線の遅延の合計が 64 ms を超える場合があります。このような場合には、Cisco MFT ECAN モジュールを導入して ITU-T G.168 ECAN 拡張機能を実行することにより、エコー キャンセレーション ソリューションに最大 128 ms のエコー キャンセラ カバレッジを提供できます。 エコー キャンセラは、テール回線側に対して機能し、ネットワークの反対側の発信者に聞こえることになる、自身のテール回線内のエコーを除去します。エコー キャンセラでは、ネットワークの残りの部分は認識されないため、テール回線の遅延は、WAN またはエンドツーエンドの往復遅延合計とは関係ありません。たとえば、ネットワーク内のエンドツーエンドの往復遅延合計が 200 ms だが、ネットワークの反対側のテール回線遅延は 50 ms にすぎない場合があります。この場合、エコー キャンセラ カバレッジは 64 ms で十分です。 テール回線内の遅延は、特にネットワークのサービス プロバイダーの場合、呼び出される電話番号によって変化します。コールが携帯電話や衛星などの IP ネットワークを経由して送信されると、テール回線では長い遅延が発生します。このような場合、エコー キャンセラのエコー キャンセラ カバレッジを最大に設定することを推奨します。MFT ECAN モジュールは、最大限のカバレッジを確保するために、エコー キャンセラ カバレッジを常に 128 ms に設定する必要があります。 すべてのコールについてエコーを消去するのは不経済です。アナログ ネットワークが存在するかぎり、エコー テール回線が 128 ms を超える可能性があります(たとえばパリから南極の調査基地への長距離電話のように、その他の IP ネットワーク、複数のデジタル/アナログ変換、衛星リンク、および PBX を経由する場合)。このような場合、リモート側のネットワーク(パリ)でエコー キャンセレーションを実行するのは不経済です。衛星リンク、リモート IP ネットワーク、またはリモート PBX(南極)のアナログ コンポーネントなど、ローカル サイトでエコーを処理する方が効率的です。この方法により、衛星を利用するすべてのお客様やリモート ユーザが、高品質なコールを利用できるようになります。 仕様表 1 および 2 に、シスコの ECAN 専用モジュールと MFT VWIC2 の製品番号を示します。 表 1 Cisco MFT ECAN モジュールの製品番号
注: Cisco 1751 または 1760 に搭載された MFT VWIC2 では、専用エコー キャンセル モジュールはサポートされません。 表 2 MFT ECAN モジュール用スロットを装備したシスコの第 2 世代 MFT VWIC2
注:
Cisco IOS ソフトウェア リリースとフィーチャ セット ライセンスの要件ITU-T G.168 ECAN 拡張機能を実行する MFT ECAN モジュールは、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(14)T でサポートが開始され、12.4(1) メインライン リリースにてサポートされています。データ アプリケーションには少なくとも IP Base フィーチャ セット ライセンスが、音声アプリケーションには少なくとも IP Voice フィーチャ セット ライセンスが必要です。 ITU-T G.168 ECAN 拡張機能は、Cisco 2600 シリーズおよび 3600 シリーズ マルチサービス アクセス ルータなどのプラットフォームの Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(13)T で導入されました。その後、機能拡張とともに、その他のプラットフォーム、ネットワーク モジュール、および AIM にもサポートが拡張されました。 寸法と重量(高さ×幅×奥行)1.1 × 6.0 × 4.1 cm(0.44 インチ× 2.37 インチ× 1.62 インチ) 重量
環境仕様
規制および T1/E1 適合規格MFT ECAN モジュールは、第 2 世代の MFT VWIC2 を通じてすべての規制と T1 および T2 の適合規格を準拠しています。 |
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